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第二十回目 小説は生もの

第二十回目だ。


自分で小説を書こう! なんて思うやつは、たいてい自分の力を過信している過信家である。


かくいう私も、過信している。


俺ならできる。俺なら書ける。そう思っている。


過信を否定するわけじゃない。過信は小説を書く活力になる。そもそも、自分の実力を過信するくらいじゃないと、小説を書こうなんて思わない。


でも、一方で、過信は小説を書くのを先延ばしにしてしまう、怠惰の理由にもなってしまう。


俺の頭の中に、設定やストーリーや細部を描くのに必要な専門知識がちゃんとある。だから、”いつでも”書けると過信してしまう。なんなら、俺の頭の中に小説の世界そのものが存在している。俺はそれをただのぞくだけでいいのだから、”いつでも”小説を書ける。そう思っている。


ハッキリ言おう。その考えは間違えだ。


あなたは、いつでも同じ文章を書けるつもりでいるだろうが、あなたは二度と、同じ文章は書けない。


あなたが今書ける文章は、半年後に書ける文章とは違う。十年後に書ける文章とも違うし、五年前に書けていたはずの文章とも、違うのだ。


小説は生ものだ。


今書くべき小説は、今書かないとダメだ。あなたは、いつでも思い通りの文章が書けると、過信している。それは間違えだ。時の流れは確実に、あなたを変える。あなたは知らないうちに変わっている。だから、残念だけど、二度と同じ小説は書けない。


だから、先延ばしにしてはダメだ。忙しさを理由にしてはダメだ。今書くべき小説は、絶対に、今書け。十年後に書けば、今よりもうまく書けるかもしれない。でも、「うまい」とか「へた」とか、そういう話じゃないんだ。


小説には、書くべき時がある。


それを逃せば、小説は腐ってしまう。あなたは、小説の源流が何か、気づいているだろうか?


それは、あなたの心だ。小説は、あなたの心そのものだ。少なくとも、私が書く小説は私の心そのものだ。だから、見られるのが恥ずかしいと思うこともあるし、自分で読んで誇らしくなることもある。


小説=あなたの心。だとしたら、小説が腐るということは、あなたの心が腐ってしまうということだ。


書くべき時を、間違えてはいけない。今書くべきものは今書くべきだし、明日書くべきものは、今日書いてはいけない。


心が熟していないときに書いても、小説は正しい姿にならない。未熟な小説ができるだけだ。逆に、心が腐ってから書いてしまっても、小説は正しい姿にならない。腐敗臭のする小説ができるだけだ。


小説は、学校のテストとは違う。誰かが百点をつけた作品でも、他の誰かが読めば十点だったりする。それが小説だ。だから、うまいとかへたとか論じるのは、ナンセンス。


小説は、正しい姿であるかどうか。それを基準に書くべきだ。小説の技術が向上してから書こうとするな。へたなままでいい。今書くべきものは、今書け。言い訳するな。忙しさを理由にするな。逆に、焦って書くな。新人賞の締め切りが近いからといって、無理矢理書くな。そういうときは、スッパリあきらめて、次回の新人賞に送ればいいんだ。小説を書くのに必要な『心』が熟していない状況で、小説を書いてはいけない。


いいかい。あなたが書く小説は、あなたの心の中にしかないんだ。外の世界に出してあげられるのは、あなたしかいないんだ。だから、過信して、先延ばしして、腐った状態で外に出してはいけない。急いで書いて、未熟児のまま出してもいけない。


あなたは、作者になるのだから、最高の状態で、外の世界に出してあげなければいけない。


第二十回目まとめ

「小説は生もの」



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