第十五回目 謎
第十五回目だ。
今回は謎について書こうと思う。
これから小説を書こうとしているそこのあなた。ミステリー小説に限らず、『謎』を少なくとも一つ、小説の中に入れてほしい。
面白い小説には、謎が必須だ。
謎のない小説は、読むのが億劫になってしまう。
私が思うに、小説における謎は、読者に小説を読み続けさせるための『馬にんじん』だ。
「え? どういうこと?」と思う謎があるからこそ、読者は次のページをめくるのだ。
文章を読むのは、けっこう大変だし、めんどい。あなたは小説が大好きだから、読むのが苦じゃないかもしれないけれど、普通の人は活字を読むのがめんどくさいのだ。
特に、説明文なんかは、読んでいてつまらなかったりする。
つまらなければ、読者は途中で読むのをやめてしまう。でも、小説は時に、つまらない文章も書かなければいけない。
全てを面白い文章だけで構築するのは、かなり難しい。不可能に近いと思う。
だからこそ、謎が必要なのだ。
読者に、つまらない文章を我慢して読ませるために、『謎』の魔力を使うのだ。
謎の答えを知りたいなら、次のページをめくるがいい! そういう理不尽な交換条件を読者に突きつけるのだ!
『謎』と言っても、壮大な謎でなくていい。ちょっとした謎でいいんだ。
たとえば、『登場人物が嘘をついた。どうして嘘をついたのか?』これも立派な謎だ。
たとえば、『告白された。どうして彼女は僕のことを好きになったのだろう?』これも謎だ。
たとえば、『宇宙の果てには何があるのだろうか?』 これは謎というより、もはや哲学だ。
たとえば、『パンはパンでも食べられないパンは?』 これはなぞなぞだ。
謎がなければ、小説を読み続けることはできない。人間はあなたが思うよりもずっと、ナマケモノなのだ。めんどくさいのだ。億劫なのだ。家から出たくないのだ。引きこもりたいのだ!
「外の世界にはいったい何があるのだろうか?」その好奇心が、引きこもりを家から出すのだ。そして、好奇心の正体は『謎』だ。引きこもりが外に出るための『活力』、その源流には『謎』があるのだ。
読者に『謎』という活力を与えるのも、作者の責任だ。あなたには、その、義務がある。
第十五回目まとめ
「馬にんじん」「理不尽な交換条件」




