第九話 クレメンスにお願いしていた物を受け取る
クリスマスなので特別な話でもと思ったのですが残念ながら思いつきませんでした。
平常運転です。
異世界生活 五日目。
昨日の訓練の所為で全身筋肉痛だ。
昨日の夜もビリー隊長がマッサージをしてくれたので動けないことはないが、動くたびに全身に痛みが走る。
本当に運動不足を痛感している。
ちなみに他のみんなもステータス鑑定は既に習得済みらしい。
近接組は大輔と同じ方法で一昨日の時点で習得しており、昨日の模擬戦中にLv2に上がったそうだ。 あいつらのチートがすごいのかビリー教官の指導がいいのか分からないが、とんでもない速さなのはわかる。
魔法組は魔法を使いながら、いまどれくらいのMPを消費しているか教わり習得したそうだ。
大輔も魔法使い組と同じ方法で覚えたかったのだが、彼女たちがその方法で覚えることが出来たのは圧倒的なMP量を誇っているからだという。
ちなみに大輔のMPは80。
涼子がMP298で絢奈に至ってはMP689らしい。
もうバカらしいのを通り越している。
と言う訳で同じ方法を取っていても大輔が覚えられていた可能性は低い。
まあ、何日かかければ可能だったかもしれないけど……。
本当に才能の差を見せつけられている。
だが、大輔は悲観していない。
大輔の職業は読書家なのだ。
戦闘に必要な能力など必要がない。
そう言う訳で大輔は意気揚々と魔法組の元に向かった。
実は一昨日にクレメンスにあるお願いしていたのだが、その準備が出来たらしい。
朝メイドさんが教えてくれた。
大輔は筋肉痛の身体なのに軽やかな足取りで魔法組の元に向うのだった。
「それでは今日の魔法の訓練をしましょう。魔法には反復練習が一番です。大輔さんもステータス鑑定を覚えたみたいですので魔力枯渇のギリギリまで魔法を使ってみてください」
部屋につくとそんなことを言われて訓練に強制参加させられてしまった。
まあ、大輔としても魔法を使うのは嫌いではないので文句はない。
それに大輔のMPだと魔法を連発するとあっという間に無くなってしまう。
それぐらいなら待てるというものだ。
だけど……
「あいつは何やってるんですか?」
「あれは気にしないでください。あれを普通と思ってもらうと困ります。彼女たちの教師役に抜擢したせいで前途ある魔法使いが一人自信を無くして城から出て行ってしまいました。才能あふれる期待の星だったんですけどね。人選を誤りました」
大輔とクレメンスは溜息を吐きながら絢奈の方を見ている。
彼女は拳大のファイアーボールを10個ほど浮かべて、踊るように変幻自在に飛ばしていた。
本当は大魔法を派手にぶちかましたいそうなのだが、現在、場所の確保が難航している。
いくら特別な魔法防御処理を施してある訓練場でも室内で派手な魔法を使うのは憚られるのだ。
例え設計上は上級魔法に耐えられると言ってもやって良いことと悪いことがある。
あの一部焼け焦げている壁は見ないことにしている大輔だった。
ちなみにファイアーボールは初級魔法でそんなに難しい魔法ではない。
大輔でもすぐに覚えられた魔法だ。
だが、魔法を長時間維持し続けるのはかなり高度な技術で、さらに自在に動かすとなると途轍もない集中力と魔力を消費する。
しかも、それが同時に10個ともなると下手な上級魔法を使うより難しいらしい。
そんな高難易度の魔法を鼻歌交じりで使える絢奈は化け物なのだろう。
三日前まで魔力すら感知できなかった初心者なのに……
はっきり言って止めてあげて欲しい。
才能の差を見せつけられて自信を無くすのも分かるというものだ。
ちなみに城から出て行った魔法使いはは同じことをやろうとして自爆したそうだ。
その時、見るも無残に炭化した腕を涼子が魔法で元通りに治療したのが止めになってしまった。
彼は昨日のうちに宮廷魔導士の職を辞して田舎に帰ったそうだ。
本当にチートとは残酷なものだ。
大輔みたいに諦めの境地に達するのはなかなか難しいのである。
そんな光景を横目に大輔はクレメンスにお願いしていた物について聞いていた。
魔法の練習はどうしたかって?
MPの少ない大輔はファイアーボールを20発も撃てば魔力はゼロになってしまう。
こんなもの5分もかからない。
まあ、ファイアーボールを20連発できる魔法使いは十分一人前と呼べるレベルなのだが、そんなこと大輔は知らなかった。
閑話休題。
「それで例の物はどうなりましたか?」
「あちらに用意してありますよ」
悪巧みするように耳打ちするとクレメンスも小声で返してくれた。
存外このおじさんもノリがいいのである。
そして、そこには
「希望にそうものであればいいのですが」
悪い笑みを浮かべるクレメンス。
「そちも悪よのう」
ニヤリと返す大輔。
そんな二人のやり取りを見て涼子は肩を竦めていた。
冗談はこの辺にして、大輔がクレメンスにお願いしていたのは本だ。
別にこれについてひねりはない。
職業読書家なんだから本を読まないと、と言う訳だ
大輔は喜々としてタイトルを確認していくのだった。
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