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第八話 鑑定スキルは素晴らしいけど大変です

 異世界生活、四日目。


 今日は近接戦闘組の方を見に来ている。

 訓練にはもちろん参加しない。

 はっきり言って準備運動だけで限界だ。

 まあ、準備運動だけは強制参加させられたのだけど……

 ビリー隊長マジで勘弁してください。


「そうは言うがたった二日の訓練でSPはかなり増えているのだぞ。訓練前のSPは30だったのに今では50まで増えている。余程、運動不足だったのか、異世界人の成長が早いからなのかは分からんがな。がははははははは」


 豪快に笑うビリー隊長。

 だが、大輔にはそこに聞き捨てならない言葉が混じっていることに気付いた。


「なんで、ビリー隊長が僕のステータスを知っているんですか?」


 警戒感を露にする大輔に少し戸惑いながら


「オレは鑑定スキルを持っている。まあ、ステータス専用だがな。オレが教官をやっているのはこのスキルのおかげなんだ」


 聞いてみると納得のいく話だった。

 この世界の訓練は危険を伴う。

 魔物を倒すための訓練なので激しいものとなり時には行き過ぎて死ぬことさえある。

 その時、有効なのが鑑定スキルだ。


 鑑定で見ていればHP、MP、SPを見極めて限界まで訓練できる。

 それに同じ訓練をさせても伸び方に差があるのだ。

 鑑定を使えばどの訓練をすれば何が上がるかよくわかる。

 そして、その人の才能に見合った効率的な訓練を施すわけだ。


 ステータス鑑定のスキルってマジで便利なのね。

 とりあえず、大輔はビリー隊長にもう一度鑑定結果を見せて貰った。



 名前 朝倉大輔

 年齢 十六歳

 性別 男


ステータス

 Lv2

  HP :120

  MP :80

  SP :50

  STR:24

  AGI:26

  VIT:20

  INT:305

  DEX:49

  DEF:14

 MDEF:73



「あれ? 職業とスキルが載ってないんですが?」


「ああ、オレの鑑定スキルのレベルだとそこまでは見れない。職業や称号、スキルは最高レベルの鑑定でしか見れないんだ」


「そうなんですか」


 その事実に少しがっかりしながらも大輔は自分のステータスを見て喜びを隠し切れない。


「レベルが上がってる。その所為かステータスも上がってる」


「そうだな。大幅に伸びているのはレベルアップの影響だろうが訓練でもある程度ステータスは伸びるのだぞ。特にSPやMP鍛えれば鍛えただけ伸びる。まあ、上限はあるがね。だから、大輔も訓練しよう。大輔は特にSPが低いからな。体力を上げるにはマラソンが一番だ」


 そう言いながら肩を組んでくるビリー隊長。

 この人スキンシップが過剰なのと距離感が近過ぎる以外はいい人なんだけどなあ、

 とそんなことを考えながらも話題を変える。


「HPも伸びるんですか?」


 HPは生死にかかわることなので上げておきたいのが本音だ。

 だが


「HPを上げるにはダメージをくらうことだな。ケガをして、回復して、を繰り返すとHPが上がっていく。神官騎士団ではわざとケガをさせて高位の神官に回復魔法を掛けさせるという荒行もある。何ならやってみるか?」


 ニヤリと笑うビリー隊長に危険な物を感じる大輔。

 勢いよく首を振って否定しておく。

 少し残念そうなビリー隊長は見なかったことにしておく。


「それより、鑑定はどうやって覚えるんですか?」


「こうしたら、覚えられるという方法は確立されてない。ただ、オレの教え方でよければ話すがそれでいいか?」


 大輔は頷く。

 そして、ビリー隊長は詳しく教えてくれた。


 まず、ステータス鑑定Lv1でわかるのは自分のHP、MP、SPらしい。

 これは自分の数値を感覚で覚えると身につくらしい。

 戦士にとっては重要なスキルなので大抵の人は持ている。

 ここまでは誰でも覚えられるらしい。


 問題はLv2だ。

 Lv2はステータスの能力値。

 これも自分の感覚を掴まなくてはならない。

 これがなかなか難しい。

 ただ、騎士団の教官には高レベルのステータス鑑定スキルを持っている者もいるので、その人にステータス値を教えて貰いながら実力を把握しているとLvが上がる。


 そして、Lv3は相手のHP、MP、SPを知ることだ。

 これがかなりの難易度だ。

 才能のない人はここまで来れない。

 上げる方法は相手をよく観察してダメージ量やMPを推測すること。

 その推測が正確になってくるとスキルレベルが上がる。


 Lv4も同様だ。

 相手のステータスを推測できるようになれば上がる。


 そして、最高ランク Lv5になると自分のスキルや相手のスキルなどを見破ることが出来るようになるらしい。

 ただ、このレベルの人間は滅多にいない。

 英雄と呼ばれるような達人たちや賢者と呼ばれるようなずば抜けて優秀な頭脳を持つ者。

 あとは鑑定に特化した人間だけだ。

 こういう人材は非常に希少で国に一人二人しかいない。


 大輔は説明を聞きながらとりあえずステータス鑑定のスキルを覚えてみようとビリー隊長にお願いしてみた。


 その結果


「はっはっはっ、なんで、オレは、走らせ、られて、いるんですか?」


 息も絶え絶えに大輔は走らされていた。

 

「このくそ虫が! 貴様がステータス鑑定を覚えたいと言ったんだろ。自分の言ったことすら忘れてしまうからくそ虫と呼ばれるんだ!」


 ビリー隊長はいつも通り鬼軍曹モードになっていた。


「いいか、くそ虫。くそ虫でもわかるように教えてやる」


「サー、イエッサー」


「長距離走をすれば疲れてSPが減る。その減る量を数値として身体に刻み付けるんだ。そうしているといつかはステータス鑑定を覚える」


「いつかなんですか、サー」


「物覚えの悪いくそ虫がすぐに覚えられる訳ないだろう。感覚を身体に刻み付けろ!」


「サー、イエッサー」


「いま、1減ったぞ!」


「ありがとう、サー!」


 朦朧とする意識の中、大輔は追い立てられるように走っていた。


「ペースが落ちてるぞ。足を上げろ!」


「サー、イエッサー」


「疲れたなら、別の方法に変えるか? じわじわ、剣で傷をつけながらHPを減らしていくんだ。そして、こぼれていく自分の生命をカウントしていく。実感が湧くから効果的だぞ。文字通り、身体に刻むんだ。心配しなくても回復魔法はかけてやる」


「ノっ、ノー、サー」


 大輔は自分の惨状を想像して顔を真っ青にさせながら走るペースを上げた。


「やればできるじゃないかくそ虫。もう十周追加だ!」


「サーイエッサー」


 その後も散々走らされながらSPの減りをカウントしてもらう。

 そして、日が暮れる頃になってやっと自分のステータスバーが視界の端に浮かんでいることに気付いた。


「これがステータス鑑定?」


 大輔は倒れ込み荒い呼吸をしながら呟いた。

 視界の端の方にゲームのような三本線があって、そこに注目すると数字が頭に浮かぶ。

 現在のSPはたった2だ。


「どうやら、覚えられたみたいだな。SPの値はいくつだ!」


「2です、サー」


「よし間違いない。今日の訓練はこれで終わりだ」


「ありがとうございました。サー」


 大輔の記憶はここで途絶えた。



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