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第五十一話 伸治の決断、そして、帰還


「オレはこの世界に残ろうと思う。やっぱり、この世界を見捨てて日本には帰れない」


 伸治は真っ直ぐな瞳でこちらを見ているその眼に一点の曇りもない。

 だから、大輔は


「いいんじゃないか。って言うか、お前がそういうことを最初から分かってたし」


「いいのか?」


 伺うようにこちらを見てくる。

 そんな伸治に苦笑しながら


「涼子が言っていただろ。ちゃんと考えて決めろって。考えた末での結論ならオレも涼子も反対しない」


 キョトンとした顔でこちらを見る、伸治。

 どうやら、大輔の言っていることがわからないようだ。


「だから、オレみたいに圧倒的に弱い相手にだって負けることがあるんだ。それがわかってれば無謀なことはしなくなるだろ」


「大輔は弱くない」


「いや、オレが言いたいのはそういう事じゃなくて」


「大輔は弱くない」


 頑なに引かない伸治を見て、大輔は盛大に溜息を吐く。

 こいつの価値観は本当によくわからない。


「まあ、そこはどうでも良いよ。とにかく、油断や無謀はしないでくれってことだ。普段通りのお前ならオレは何の心配もしていない」


「じゃあ、本当に」


「ああ、この世界に残りたいなら残ればいい。ただ――」


「ただ?」


「死ぬなよ。この世界なんて救えなくてもいいから無事に日本に帰ってこい」


「大輔……」


「なんだよ。そんな目でみんなよ。オレは腐れ縁のお前が知らないところで野垂れ死んだら寝覚めが悪いと思ってるだけだかんな」


 そう言ってそっぽを向く、大輔に伸治が


「これがツンデレって奴か?」


「ツンデレって言うな!」


 大輔の叫び声が部屋の中に木霊していた。




「それでは転移の儀式に入ります」


「お前等、本当にいいんだな」


 大輔が全員に尋ねる。


「ああ」


 伸治がもう言うことはないといった感じで力強く頷く。


「わたしの魔法がないと伸治が困るでしょ」


 絢奈が伸治の方をチラチラ見ながらそう言う。


「わたしもやれることをやってみます」


 みな実は露骨な絢奈みたいに言いたいけど言えないのかそんな返答だった。

「心配するな。オレがみんなを守ってやるぜ」


 拳を突き出してそう言う西郷はなんかバカっぽい。


 そして


「わたしはこの世界なんてどうでもいいんだけど、この子達だけじゃ心配だからね。だから、残るわ」


 腹黒で嫌みばかり言うこいつは優しい奴なのだ。

 照れ臭そうにそう言う涼子には『ツンデレ』の称号を送ってやりたい。


「それじゃあ、オレは帰るわ。また、日本でな」


 そう、大輔は一人日本に帰ることを決断していた。

 それに対して誰も文句は言わなかった。


「ああ、日本で」


 そいう言って伸治は手を突き出す。

 なんだか恥ずかしいが大輔はその手を取って握手を交わした。


「そろそろ時間です」


 王女様がそう言うと儀式が最終段階に移行したのか魔法陣が光を帯び始めた。

 大輔はにこりと笑い。


「じゃあまたな」


 そう言い残して大輔は光に包まれ消えていった。



第一部完です。

書き溜めもなくなってしまったのでここで少しの間時間をいただきたいと思います。

今まで読んで頂いた皆様ありがとうございました。

再開は8月中頃を考えていますが、もう少しかかるかもしれません。

まだ、終わった訳ではないので再開をご期待ください。

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