第五話 大輔、自分のステータスを知る
その後も順にステータスを見ていった。
驚くことにと言うか、やっぱりと言うか、全員チート職業を持っているようだ。
伸治の勇者を始めとして
涼子が聖女。
みな実が剣聖。
絢奈が大魔導士、
西郷が格闘王だ。
聖女は回復系、大魔導士は魔法系、剣聖は剣、格闘王は素手、それぞれの分野の最高職らしい。
平均値では伸治に及ばないが、それぞれの得意分野においては伸治より高いステータス値を持っている。
これを見ると魔王を倒すために異世界召喚をした王女たちの気持ちが分かるような気がする。
そんなことを考えている間にとうとう大輔の順番がやってた。
五人の高いステータスを見てきた王女たちの期待の視線が大輔に降り注ぐ。
かくいう大輔も胸を躍らせていた。
それはそうだろう。
日本ではなんの取柄もない、ただの高校生だったのだ。
そんな自分に物語の主人公のような能力が与えられる。
伊達にオタクをやっている訳ではない。
自分に秘められた力があると妄想したのは一度や二度では済まないのだ。
大輔は期待に胸を膨らませてオーブに手を掲げた。
そして
名前 朝倉大輔
年齢 十六歳
性別 男
ステータス
Lv1
HP :100
MP :50
SP :30
STR:22
AGI:24
VIT:18
INT:287
DEX:45
DEF:13
MDEF:60
職業 読書家
称号 召喚に巻き込まれた者
取得スキル
異世界言語
読書
「えっ、なにこれ?」
大輔は目を点にしている。
「どうした。大輔。何か変なことが書かれているのか? ちょっと見せてみろ」
驚きのあまり混乱していたのか大輔は伸治に言われた通りステータスを公開していた。
そして
「プっ、なんだよ。読書家って。お前にお似合いじゃねえか」
「西郷君。笑っちゃダメよ。でも、プっ――」
西郷の言葉が大輔の胸に刺さる。
絢奈はフォローしようとしたのだろうが笑いがこらえきれなかったようだ。
同じくみな実も懸命に笑いを堪えている。
伸治と涼子はそんな三人を見ながら苦笑していた。
日本語で書かれたステータスを読めない王女たちはそんな彼らの反応に首を傾げている。
それを見た伸治が大輔のステータスを説明していた。
それを聞きあからさまに失望した空気が伝わってくる。
それもそうだろう。
大輔のステータスは伸治たちに比べて驚くほど低い。
INT以外はこの世界の一般人程度だ。
DEXとMDEFが若干高いくらいで他は下手すると一般人にも劣る。
これでは落胆するなと言う方が難しい。
そんな風に理解してしまうからか大輔はそんな彼らにあまり怒りを感じなかった。
確かに、西郷の言動にはイラッときたがそれぐらいだ。
逆に期待してしまった自分を恥ずかしく思う。
それにしても読書家と言うのは言い得て妙だ。
これ程自分に合った職業はない気がする。
この世界の神もなかなかセンスがあるじゃないか。
はっきり言って負け惜しみだが、いつも伸治と比べられてきた大輔にはこのくらいなんでもないことだった。
ちゃんと傷付いているけどね。
それにしても……
称号の欄を見て溜息が出た。
「なるほどね。召喚に巻き込まれた者か」
大輔の呟きを聞いたのか、王女が謝ってきた。
しかし、すでに大輔の眼中にはない。
大輔が異世界に飛ばされてきたのはどうやら間違いだったようだ。
それならそれで問題はない。
どうせ、一か月後には帰れるのだ。
それなら帰るまで異世界を楽しもう。
それにしても『召喚に巻き込まれた者』か。
不意に視線がそこに行く。
すると
召喚に巻き込まれた者:
不幸にも召喚に巻き込まれてエメラルディアに訪れた者。あらゆる意味で残念。
ステータス成長補正(微)
なんか表示内容が増えた。
てか、残念ってなんだよ。
それにしてもこれは何なんだ。
補足説明なんて今までなかったぞ。
この操作は本人にしかできないのか?
それとも、もしかして読書スキルの影響?
周りを見るがステータスの変化に気付いた者はいないみたいだ。
どういうことだろう?
大輔は考え込んでいた。
それを見た西郷たちが勘違いしたのか笑って悪かったと謝ってきた。
が、そんなことどうでもいい。
はっきり言ってウザい。
大輔は適当にあしらいながら王女に確認を取る。
「王女様。職業 読書家について何か知りませんか?」
「申し訳ありません。聞いたことのない職業です」
「では、読書のスキルについても」
「はい。スキルの名前は王家が知ることが出来る範囲で記録されています。そして、長年の調査の結果、スキルにどのような効果があるかも記されています」
「じゃあ、読書のスキルがどのような効果があるかはわからないということですか?」
「はい。太古の魔導具や最高レベルの鑑定スキルで確認することができると言う話ですが、魔導具は現存している物はありません。それに鑑定スキルは元々レアスキルです。それも高レベルの者は我が国には現れたことがありません」
「スキルって使えばレベルが上がるんじゃないんですか?」
「はい。ただ、鑑定スキルはレベルを上げるのが難しいのです。経験値を得られるのは一品について一度だけ。同種の物を何度鑑定しても経験値を得られないのです」
申し訳なさそうに答える王女だったが、大輔は彼女の答えに満足していた。
大輔が知りたかったのは読書スキルの効果ではない。
『スキルの効果は誰にでも確認できるものではない』ということだ。
大輔は内心でほくそ笑みながら、ステータスの読書スキルに視線を向ける。
そこに表示されていたのは
読書:あらゆる書を読み解くスキル
予想通りだ。
多分、書であれば何でも理解できるのだろう。
でも、ステータスって書なのか?
ていうかこのスキルの言う書ってなに?
そんなことを考えながら書のところを見ていると
書:意味、意思が込められた文字、模様、図形が書かれた物。
表示が追加された。
本当にこれは便利なスキルだ。
大輔は内心沸き立つ心を抑え込み、何事も無かったかのように俯き加減でオーブの前から離れた。
それをがっかりした姿と捉えてくれたのかこれ以上は誰もなにも言わなかった。
その後、王女がこれからのことについて話していたが、大輔はこのスキルの使い方について考えていた為、ほとんど聞き流していて聞いていなかった。
今日はここまでの更新となります。
書き溜めのある間は二日に一度、書き溜めが終わったらまた更新頻度を変えようと思っています。
年内はこの更新頻度が守れればと思っています。