第四十四話 決闘中 涼子のターンは終わらない
「それにしても本当に完全防御できるんだな」
「あんたねぇ。わたしの魔法が信じられないっていうの?」
「いや、というか魔法ってスゲエんだなって再確認させられただけ」
そんな風に二人で言い争いっていると我に返った絢奈が叫びだした。
「ちょっと、どういう事よ。『インフェルノ』は火炎系極大魔法なのよ。それも大魔導士のわたしが撃って何倍もの威力になっているのに無傷だなんて」
うん、そうだよな。
普通に考えれば町一つ消し炭に変えてしまえる魔法だ。それを受けて無傷というのはどう考えてもチートすぎだ。どんなズルをしたんだと言われても仕方がない。
と言う訳で種明かし
「この前、光属性の話をしただろ。『ホーリーガード』は光属性の防御障壁を生み出す魔法だ。だから火属性の魔法じゃダメージは与えられない」
「ちょっと。あんた、なにベラベラと種明かししてんのよ。気付かない内にこちらが一方的に攻めればよかったのに」
涼子の反論を大輔は無視をする。
というよりそんな暇はなかった。
「てりゃああああああ」
一瞬で間合いを詰めた伸治が輝きを放つ剣を振り下ろしていた。
大輔はその勢いに壁まで吹き飛ばされた。
「グファ」
背中から壁に激突して息が詰まる。
障壁でダメージがない筈なのに身体中が痛い。
マジかよ。聞いてねえぞ。
大輔は心の内で毒吐きながらも表面上は何でもない風を装って立ち上がる。
軽く手足を振って異常を確かめてみるが身体に不具合はない。ダメージは無さそうだ。
でも、かなり軽減されているとはいえ痛みがあるというのは想定していなかった。
魔法は障壁に当たると消え去るのだが、物理攻撃はそううまくはいかないらしい。
これはマズいかもしれない。
そう思うが、今更作戦は変えられない。
大輔は気合いを入れ直す。
しかし、口調はお道化た調子だ。
「無駄だって言ったろ。オレ達には光属性の防御魔法がかかってるんだから」
「なんでだ。光属性の防御は光属性の攻撃に対して効力がないんじゃないのか」
伸治が顔を顰めている。
そう思うよな。
これも思惑通りだ。
伸治の剣や鎧が光を放っている。
あの試練の祠で得た光属性付加を使っているのだろう。
だが、それを使ってくるのは織り込み済みだ。
「お前たちに光属性の攻撃手段があるのは知っているんだ。だから、ただの光属性防御なんて使う訳ないだろう」
「そんな、まさか……」
「そのまさかだよ。ホーリーガードは光属性(極大)の防御効果を持つ、その特性は光と闇属性以外の攻撃の無効、闇属性攻撃の相殺。………そして、光属性攻撃の吸収だ。光属性での攻撃はオレ達には回復にしかならない」
ニヤリと笑う大輔に伸治は悔し気に唇をかんでいる。
これで伸治たちに攻撃手段はなくなった。
たった一つを除いては
「なら、わたしが!」
絢奈が叫んで魔法の詠唱を始めた。
大輔は涼子に視線を送る。
涼子はそれに笑みで答えた。
そのやり取りで何かに気付いたのか伸治が吠える。
「やめろ、絢奈。それは罠だ!」
だが伸治の忠告は遅かった。
絢奈の魔法は完成し、彼女の身体を闇の魔法文字が囲いそれが一点に凝縮していく。
「ダークシャイニング!!!」
暗黒の閃光が涼子に対して解き放たれた。
光の速度で放たれる闇の光線を躱す術はない。
多分、現段階では伸治やみな実、西郷でさえ回避不可能な技だ。
これで決着がついたかと思われたが――
待ってましたとでも言うように涼子は肉食獣のように獰猛に笑った。
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