第四十二話 決闘直前
今日は夕方に更新出来そうにないのでこの時間に更新します。
いつもに時間に待っていた方は申し訳ありません。
「何とか間に合ったな」
「ホント、ふわあああ。徹夜になるとは思わなかったわよ」
盛大に大口を開けて欠伸をする、涼子。もう美少女が台無しである。
そんなことを思いながらも大輔は眠い目を擦りながら闘技場の対面にいる4人を見た。
どうやら、向こうは体調万全のようで闘志が漲っている。
それどころか約一名ほどかなりいきり立っているようだ。昨日のことをまだ怒っているとか、どんだけ、沸点が低いのだろう。もう溜息しか出ない。
まあ、そのおかげでこちらの勝率は上がるのでいいのだが……。
「それではルールを説明します」
クレメンスが闘技場の中央に入ってきた。
それに合わせるように大輔や伸治たちも中央に集まる。
「この闘技場は――」
クレメンスの説明は簡潔な物だった。
この闘技場は失われた技術で作られた魔導施設の一つで設置された魔法陣の上に立つと自分と同じ能力のある分身体が闘技場内に現れる。
それを戦わせることにより、ケガや生命を気にすることなく真剣勝負が出来るとのことだ。
そして、分身体は闘技場内だけで存在することができ、実際には実体を持たないらしい。
それは行使される魔法も同様だ。
まあ、自分そっくりの映像が戦うゲーム見たいのを想像して貰っていいだろう。
貴重な施設でありかなり魔力消費が激しいので滅多に使えないのだが、勇者たちを危険にさらすわけにはいかないので今回使用が決まったらしい。
それに徹底的にやらなければしこりが残るとでも思ったのだろう。
その通り過ぎて何も言い返せない。
その辺の判断は、流石、クレメンスと言えるだろう。
「この分身体は一定のダメージを受けるか、降参を宣言すると消えるように設定されています。勝者は最後まで闘技場内に残っていた者とします。あと、ケガをすることはありませんが、軽減されるとはいっても痛みはあります。後遺症になる可能性は否定できないので無理せず降参してください」
クレメンスは厳かにそう言って締めくくった。
多分、この気遣いは大輔に対しての一言なのだろう。
まあ、そんな無理する気はさらさらないので無駄な気遣いなのだが……
そんなことを考えているのがバレたのか、涼子にきつく睨まれた。
大輔は軽く肩を竦めておく。
「何か質問はありますか?」
クレメンスは一通りこちらを見渡し、返答がないことを確認すると一つ大きな溜め息を吐いた。
「それでは魔法陣に移動して準備にかかってください」
クレメンスの言葉に従ってみんなが踵を返す。
ただ、伸治だけが立ち止まりこちらを見ていた。
それに気付いた大輔は小首を傾げながら伸治に視線を向ける。
「大輔。悪いがオレは手加減をするつもりはない。降参するなら今の内だぞ。本当にオレ達と戦うんだな」
「まあ、こういう流れになっちゃったから仕方ないんじゃねえの」
「ふざけるな! こっちは真剣なんだ。やるなら真面目にやれ」
大きな声を上げる、伸治。
みな実、西郷が気づかわしげにそちらを見ている。
先程からイライラと文句ばかり言っていた絢奈でさえ心配そうにしている。
だが、視野の狭くなった伸治にはみんなの想いは届いていない。
大輔は盛大に溜息を吐き。
「わかったよ。いつものお前になら勝ってこないけど、いまのお前になら多分勝てるからな」
伸治はこちらを激しく睨んだが、何も言わずに振り返った。
大輔はもう一度溜息を吐いて魔法陣の方へと歩みだした。
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