第四十話 作戦会議のような物
すみません。更新遅れました。
「お前なあ、なんで、あんな無茶なこと言うんだよ。勝算があるんだろうな」
大輔はうんざりとした口調で涼子を問い詰めていた。
そして、その涼子はというと清々しい顔をして
「そんなのあるわけないじゃない。そう言うのはあんたが考えることでしょ」
スゲエ、丸投げっぷりだった。まさかここまでとは思っておらず大輔は呆然としている。
マジで頭が痛くなってきた。
そんな大輔の反応を見て少し心が咎めたのか、顔を寄せ、上目遣いでこちらを見てくる。
「もしかして無理なの?」
外見だけはお嬢様系の美少女なので大輔の心臓は跳ね上がる。
べっ、別に動揺と化してないし、涼子がしおらしくしてたって、こいつの性格知ってるから、ドキッとかしねえし
そんな言い訳を自分にしながら大輔は涼子から少し離れた。
その時、涼子がニヤリと笑ったような気がしたがそこは気付かないでおこう。
気付いたことがバレたら余計な言葉が待っているはずだ。大輔は経験でそれを知っている。
と言う訳で本題に戻ろう。
「四対二じゃ、ちょっと、勝ち目がない。回復役がいなくなったのは唯一のメリットだけど、それだけだ。短期決戦に持ち込まれて終わるんじゃないのか?」
「なによ。そこをあんたの悪知恵で何とかするんでしょ」
「悪知恵とは人聞きが悪いなあ。戦略とか策とか言い方があるだろう」
「そうね。姑息で卑怯な作戦って言い換えておくわ」
この女は!
イラッときていたがそこは抑える。こいつに口で勝てるわけがない。
まあ、この世界に来てから腕力でさえ勝てる気がしないけど。
って言うか、向こうの世界でも……
ゴホン。
いまはいらんことを考えている時ではない。
とりあえず、対処法を考えないと。
それにしてもこいつ二人きりだからって途端に地を出すとは、その内猫被ってるのがバレたりするんじゃないのか?
「心配ないわよ。わたしの猫被りは年季が違う物。あの親族と長年、渡りあって来たのよ。この世界でわたしの本性を見破れるのなんてクレメンスさんくらいじゃない? あんたと伸治さえ黙っていればバレっこないわ」
怖っ、こいつ人の心を読みやがった。
職業 聖女にそんな能力あったか?
それとも新しいスキルが生えたのか?
慌てて大輔が鑑定をしようとすると涼子は呆れたように肩を竦める。
「スキルでも何でもないわよ。あんたがわかりやすい表情をしてただけ。それで本当に勝ち目はないの?」
キッと睨んでくる、涼子。
そんな涼子に大輔は頭を掻きながら答える。
「う~ん。四対一なら、まだ、手はあるんだけど。四対二だときついんだよな」
小首を傾げる涼子。
そして、しばらくすると目が吊り上がっていく。
なんだかこの雰囲気はまずい。
「なによ、それ。わたしが足手まといだとでもいうの?」
その一言で涼子が何を勘違いしているのかがわかった。
大輔は慌てて手を振って否定する。
「違う、違う。今回の場合、100%足手まといはオレの方だ。それに相性が悪い」
「相性?」
小首を傾げて疑問を呈す。
「ああ、オレのスキルは魔法系の支援よりだ。状況や相手の状態を考えてアイテムなんかをフルに使って相手を翻弄する。攻撃魔法も多少は使えるがあいつ等に通用するレベルじゃない。オレが出来るのは不意打ちや妨害くらいだ」
「そうでしょうね」
自分から言った事なのだが、はっきりと認められるとそれはそれでムカつく。
だが、そんなことは表情に出さずに話を続ける。
「それで涼子の能力だが、これも回復と支援魔法が中心だ。多少、防御力は高いがあの二人と近接戦闘で渡り合えるとは思えない。伸治一人相手でも厳しいんじゃないかなぁ」
「そうよね」
涼子が俯いて考えていた。
「ただ、お前一人なら勝てる手はある」
その一言を聞いて涼子が顔を上げる。
すぐにでもその手を教えろと目が訴えていたが、大輔はそれを手を上げて抑えた。
「だけど、残念なことに今回は四対二だ。オレにはあいつ等に対抗できるような防御力も攻撃力もない。そのことは伸治たちも知ってるだろうから、最初にオレの方を攻めてくるだろう。そうすると涼子はオレを庇わないといけないから後手後手に回る。タダでさえ、攻撃手段の乏しいオレ達はジリ貧で押し込まれて終わるわけだ」
大輔の説明に頷きながら聞いていた涼子はニッコリと笑った。
万人が天使の微笑みと称するこの微笑み。しかし、大輔には悪魔にしか見えなかった。
「なんだ。そんなことなの。それなら心配いらないわ。メリットがないのなら、わたしにあんたを守る気なんてさらさらないから。そうね。あなたが囮になってその隙にわたしが殲滅する。そんな作戦でどう?」
「どう? じゃねえよ。どんだけ鬼なんだよ。他人を囮に使って少しは良心が咎めたりしないの?」
「何言ってるの。あんたの献身にわたしは涙を浮かべながら――」
「ああ、もうそう言うのいいから。お前に人並みの感情を求めたオレが間違っていた」
そう言って頭を掻きむしった大輔は作戦を練っていった。
こいつがこういう性格だから実行できる作戦なのだが、凄く納得がいかなかったのは言うまでもない。
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