第三十四話 これはチートスキルだ
光がおさまるとそこには……
「お前はなにやってるんだよ」
とりあえず目の前にいた伸治を殴っていた。
大輔もそれなりにレベルが上がっているので、ステータスも伸治たちほどではないが一般の兵士ぐらいにはなっている。その影響もあったのか伸治が吹っ飛んでいた。
自分の力に全く自覚のなかった大輔の方が驚いている。
そして、今の光に驚いたのか涼子たちが走ってきていた。
「ちょっと、あんた、なに伸治を殴ってんのよ」
絢奈が大輔を責めるように声を上げている。
遠目では伸治がバカをやったところは見えなかったのだろう。そして、大輔が言い訳しようとしたところに伸治の声が割って入った。
「ごめん。大輔を責めないでくれ。いまのはオレが悪いんだ」
頬を抑えて立ち上がった伸治は絢奈たちを止めてくれる。
涼子以外の三人はまだこちらを睨んでいた。
そんな状態に辟易した大輔は一連のことは忘れて気になることを先に済ませる。
伸治に目を向けステータス鑑定を発動。
なるほど。伸治に生えたスキルは
光属性付加(自):技能スキル
自らが装備している武器、防具に光属性を付加できる。
消費魔力量によって効果、継続時間が変化する。
光属性
光以外の全ての属性に効果あり。闇属性とは効果が相殺される。
小:攻撃力1.2倍 ダメージを2割減。
中:攻撃力1.5倍 ダメージ半減
大:攻撃力2倍 ダメージ無効
これはかなり有効なスキルだ。
光属性は闇属性とは対の効果があるのだろう。
そして、魔族は闇属性持ちが多い。
そうなると魔族と戦うのに闇属性か光属性を持っていない者は戦闘で大幅に不利になる。ただ、これだけ見ると闇属性持ちには闇属性で攻撃した方が有利と思われるが問題が一つ。
特大:攻撃力三倍 ダメージ無効 光属性攻撃の吸収
これが問題だ。
多分、闇属性も光属性と同等のスキルだろう。
つまり、闇属性(特大)を持っている者に闇属性で攻撃するとダメージを与えられないどころか回復してしまうのだ。
そして、魔王はまず間違いなく闇属性(特大)を持っている。
つまり、光属性(中)以上を持っていないと魔王にはダメージすら与えることが出来ないのだ。
なるほど、これは確かに神が魔王討伐の為に勇者に与える力に相応しいものだ。
だが、こんなに簡単にこれ程の力を手に入れていいものなのだろうか。
そう思っていたのだが……
大輔は石碑に書かれている文言を確認する。
『資格ありし者に光の加護を与えん。望むものは我が碑に希望を願って手を振れよ』
資格が何かはわからないがこの光の加護というのが光属性付加(自)のスキルのことなのだろう。
他に刻まれた魔法文字をざっと見てみるが、転移だの、罠だの、危険な文言は刻まれてはいないみたいだ。
それをクレメンスに伝える。
最初はみんな怯えて石碑に触れようとしなかったのだが、クレメンスが自ら試し、涼子たちが続くとどうやら問題はないと理解したのか次々に石碑に触れていった。
そして、結果は……
あまり芳しくなかった。
護衛についていた騎士や魔法の教師である神官、宮廷魔導士、ビリー隊長も試してみた。だが、力を得られたのは伸治以外には涼子とクレメンスだけだった。
ただ、クレメンスは既に聖属性魔法 光属性付加Lv3を持っている。
光属性付加:聖属性魔法
指定した武器、防具に光属性を付加する。
Lvにより効果、継続時間が変化する。
こちらは他人にも効果を及ぼす。
ただし、Lvがあるので、ある程度成長させないとあまり効果がない。
クレメンスのLv3では光属性(中)を一分付与するのが限界である。だから、このスキルはあっても損はないが練習をしてレベルが上がればあまり意味をなさなくなるだろう。
それはこの魔法を覚えられるであろう涼子にも言えることだ。
二人は嬉しいのだが微妙な表情をしていた。
そして、大輔はというと
その間も石碑の調査を続けている。
さっきは簡単な確認しかしていなかったので詳しく石碑に刻まれている文字を解析していた。
もしかしたら、光属性付加を与える以外にも何かこの石碑にはあるかもしれない。
このダンジョンから脱出する仕掛けがあれば儲けものだ。
それに、もしかしたら……
そんな時だった。
石碑が光に包まれる。
大輔は弾き飛ばされて身体を壁に打ち付けられていた。
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