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第三十三話 新たな石碑


 魔力反応のある地点に大輔達は順調に進んでいた。

 この階層はゴブリン種しかいないみたいで伸治たちの相手にはならなかった。


 奇襲を禁止したので少し手間取るようになったが、みな実と西郷が持つ見切りのスキルは圧倒的だった。攻撃が当たらないのでダメージを受けない。攻撃すれば一撃で倒せる。もう、こいつらを止める手立てはないだろう。


 有効そうな攻撃と言えば遠距離からの飽和攻撃なのだが、ここはダンジョンなのでそもそも遠距離攻撃できない。直線的な通路もあるが2、300mくらいの距離なら彼らは瞬時に詰めてしまう。

 なら包囲殲滅しようとしても囲む前に倒される。

 それに後ろに絢奈まで控えているのだ。イメージするだけで魔法が制御できることを教えたので威力を抑えるのもお手の物のようだ。味方には効果のない範囲魔法なんてゲームに出てくるような攻撃を行ったときにはもう呆れて声も出なかった。


 そん中、騎士団の面々の口数がどんどん減っているのはこの際目を瞑っておこう。この部隊、冒険者上がりや兵士からの叩き上げが多く、それなりに自信を持っている人が多かったようだ。だが、物の見事に鼻っ柱を叩き折られたみたいだ。


 うん、エリート魔導士さんみたいに騎士団を止めないことを祈っておこう。

 ちなみにキリクはそんなのお構いなしに大輔のことを睨んでいる。本当に勘弁してほしい。

 


 そうこうする内に魔力反応があった地点に近づいてきた。

 そして、そこにあったのは


「石碑……」


 そう、このダンジョンに飛ばされて時に会ったものと同じような石碑が立っていた。


「皆さん。わたしが確認してきます。それまで近づかないでください。特に――」


 大輔の言いたいことを悟ったのか騎士団の面々がキリクを取り押さえていた。何やら喚きだしていたがすぐに猿轡をされて縛られている。賊の捕縛も騎士団の仕事なのだろう。手慣れた様子でキリクを縛るのを何とも言えない気持ちで眺めていた。


「じゃあ、行ってきますね」


「大輔さん。わたしも行きます」


 そう言ってついてきたのはクレメンスだった。

 最初は断ろうと思ったのだがすぐに彼が鑑定スキルを持っていることを思い出して止めた。

 鑑定スキルを持っている彼なら大輔には気付けないこともあるかもしれない。


「お願いします」


 そう言って二人で石碑に向かおうとすると


「じゃあ、オレも」


「お前はダメだって」


 あきれ顔で伸治の肩を掴む。

 本当にこいつは何なんだろうか。この世界に来てから少し様子がおかしい。日本ではもう少し思慮深かったはずなのに


「オレも行くって。何かあったら守らないといけないだろう?」


「お前はバカか。何かあったら困るから二人で行くんだろう。なにがトリガーになって危険なことが起こるかわからないんだ。人が多ければ多いほど危険度は上がる。ここは必要最低限で行くしかないの」


 頭では大輔の言ってることを理解しているのだろうが、心が納得してないのだろう。伸治はなかなか首を縦に振ってくれない。


 大輔は大きく溜息を吐いて


「涼子。悪いけどこのバカ押さえといて。邪魔になるから」


 もう少し言葉遣いに気を遣えればいいと本人も思っているのだが、そんな社交性スキルを持っていたらボッチなどやっていない。

 そんな自分に向かって苦笑しながら大輔は石碑へと向かう。

 もう振り向くことはなかった。





「クレメンスさん。何かわかりますか?」


「ダメですね。わたしの鑑定スキルでは古代の石碑としかわかりませんね。刻まれているのも神聖文字に似ていると思うくらいです」


 なるほど、レベルが低いからなのか、それともそう言う表示しかされないのか、は分からないが、クレメンス程の者でもこの石碑が何なのかわからないようだ。


「そうですか。なら少し離れていてください。これから僕一人で調べてみます」


「しかし、それは危険なのでは」


 伸治と同じようにクレメンスも躊躇している。

 だが大輔は折れない。


「どんな危険があるかわかりません。それにダンジョンの中では僕は戦力にはなりません。最悪いなくなっても被害は最小限で済みます。だけど、クレメンスさんは違う。貴方がいなくなったら確実にこの集団は瓦解しますよ」


 大輔の言い分が正論なのがわかるのでクレメンスは唸ることしか出来ない。


「わかりました。ただし、ここで見ています。何かあったら直ぐに止めますのでそこは了承してください」


 2mくらい下がるクレメンスを見て大輔は苦笑いを浮かべた。

 ここに来た時のことを考えると転移が発動すればクレメンスの位置だと巻き込まれる恐れがある。本音を言えば伸治たちのところまで下がっていて欲しかった。


 だが、大輔は頷いた。クレメンスを説得するのは無理だろうから


「わかりした。ただし、何か異変があったら直ぐに逃げてください。自分の身を最優先に行動してください」


 多分、大輔のいうことは守られないと思ったが釘は指しておく。

 そして、大輔は気持ちを切り替えて石碑に臨むことにした。


 まずは魔導具鑑定だ。

 クレメンスの持つ鑑定はあらゆるものに対処できるが、今の大輔が出来るのはステータスとアイテム、魔導具の鑑定だ。だから、これが武具や防具扱いなら対処できない。

 まあ、そんなことはないと思うけど。

 ないよね。


 そんなことを思いながら魔導具鑑定を発動。


 結果は『石碑』


 うん。実に簡潔な答えだった。

 はっきり言ってこれだけでは何もわからない。ただ、これが魔導具扱いとわかってホッとする。

 クレメンスの鑑定結果が古代の石碑で大輔の鑑定結果がただの石碑だったのはレベル差なのだろう。


 まあ、それは仕方がない。

 それに大輔にはレベルはあまり関係ないのだ。大輔は読書スキルを発動する。


 そして、意識を『石碑』に向ける。


 石碑:何らかの目的で文を刻まれた石


 うん。石碑の解説が出てしまった。

 こういうことが知りたいわけではないのだが、どうやら大輔はまだ読書スキルを使いこなせていないみたいだ。

 

 苦笑いを浮かべながら、もう一度『石碑』に目を向ける。というより表示窓全体に。石碑の上下左右満遍なく意識を向ける。


 すると、表示が変わった。

 

『神が記した力の碑』


 神が人に力を授けるために残した石碑。

 資格と才能があるものが触れると指定のスキルを得ることが出来る。



「おお」


 あまりの内容に驚いて思わず声を上げてしまった。そう言えばダンジョンに入ってすぐにクレメンスがそのようなことを言っていた気がする。

 ただ、こんなに早く出てくるとは思っていなかったので完全に意識してなかった。


 そんなことを考えていると


「大輔えええええええええ!」

「大輔さん!」


 大きな声がダンジョンに響いた。

 大輔の反応に驚いたのかクレメンスが駆け寄ってくる。

 伸治もこちらに走ってきた。

 そんな彼らに大輔は何でもないと手を上げて答える。


 だが、納得いかないのか彼らは戻ろうとはしなかった。

 まあ、この石碑には危険はなさそうなので問題ないかとそのままにしておくことにした。


「それで何かわかりましたか?」


「ええ、これは『神が記した力の碑』と言う物らしいです」


「なんか大げさな名前だなあ」


 伸治が胡散臭そうな顔をする。

 そんな彼に対して説明を続けた。


「そんなことを言ったらバチが当たるぞ。これは資格と才能を持つ者が触れるとこの石碑に込められたスキルを授かることが出来るという凄い物なんだから」


 それを聞いてクレメンスも伸治も目を剥いて驚いていた。

 そして、しばらくして気を取り直したクレメンスが


「それでどんなスキルが授かるのですか?」


 期待に目を輝かせている。

 そんな彼に申し訳なさそうに大輔は


「わかりません。まだ、文字の方は解読してませんからね。ちょっと待ってください――」


 そう言って文字の解読に移ろうとした時だった。


「危険はないんだろう? そんな物、試して見ればいいじゃないか」


 そんなことを言って伸治は石碑に触れていた。

 石碑が輝き、周囲は白く染まっていた。


いつもお読みいただきありがとうございます。

宜しければ感想やご指摘、誤字脱字などを教えて貰えると助かります。

これからも読んで頂けると幸いです。

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