第三十話 チートスキル 第二弾 鬼頭絢奈
「ごめん。日高さんの能力は多分、聞けばすぐに実践できるものだから先に鬼頭さんの方の説明をしてもいい?」
大輔がそう言うと渋々という形で絢奈に順番を譲った。
絢奈は待ちきれないのか
「それでわたしの能力って何なの?」
期待に目を輝かせている。
一歩引いてクールを装っているのがカッコイイと思ってるタイプだと思ってたのに、この反応は本当に意外だった。
そんなことを考えながらも大輔は説明していく。
「鬼頭さんの能力は……」
彼女のスキルはチートその物だった。
魔導の極みLv1
あらゆる魔法を使いこなし、イメージできる魔法を作ることもできる。
MP及び魔法効果増加(10+Lv倍)
このスキルのチートとなる所以はオリジナル魔法を作ることが出来ることだ。
そして、彼女がこのスキルを持っていることでその能力は何段もスゴイ物へと変化する。
簡単な大輔の説明で正確にこちらの思惑を察したのか絢奈も息を飲んでいた。
「どうやら気付いたようだね。この世界にはない日本で学んだ物理法則の知識を持っている鬼頭さんならとんでもない魔法が造れるはずなんだ。それで、まずやって欲しいことなんだけど」
軽く自分の考えを説明した。
それを絢奈は黙って聞いてしばらく黙考。
多分、大輔の説明では足りないところを補足、論理を構築しているのだろう。
そして
「ソナー!」
杖を掲げて絢奈が叫んだ。
大輔は周囲に絢奈が発した魔力の波動が放たれていくのを感じた。
魔法に適性のあるものは大輔と同じ感覚を味わったのか皆こちらを注目している。
他の者は何が起こったのか分からずに周囲を見渡していた。
「何か書くものをちょうだい」
そう言って絢奈は徐に地図を書きだした。
そう、大輔が頼んだのは探索魔法だ。
潜水艦に積んであるソナーを思い出してほしい。
光の届かない深海では目は役に立たない。
潜水艦は基本、音を頼りに走行する。
そして、ソナーには大きく分けて二種類ある。
パッシブソナーとアクティブソナーだ。
今回の魔法はアクティブソナーを参考にしたのだ。
絢奈は音波の代わりに魔力を周囲に飛ばす。
そして、魔力の反射の仕方やスピードの変化を分析して周辺の様子や魔物の状況を探ったのだ。
ただ、この方法には実は問題もある。
魔法に適性があるものが反応したように魔力を周囲にまき散らすので敵にこちらの存在を知らせることになるのだ。
この辺も潜水艦と一緒だろう。
しばらくすると、地図を書き終わったのか大きく息を吐いた。
「いまのわたしに出来るのは半径300mくらいね。練習すればもっと範囲を広げられると思うけど今はこれが限度よ。しかも結構MPを食うみたいだし」
貴也が鑑定スキルで確認すると彼女のMPは100近く減っていた。
これは最上級魔法に匹敵する。
と言っても既に1万近いMPを持つ絢奈には関係のないレベルなのだが……
「それでアクティブソナーの効果確認は地図を見ながら今後検証するにして、パッシブソナーの方は使えそう?」
「いまやってるわよ」
ぶすりと不満そうに言うが彼女は素直に実行してくれているようだ。
しばらくすると、問題ないと言ってくれた。
実は大輔としてはこちらに関しては気にしてなかった。
魔力感知のスキルの存在を本で読んで知っていたからだ。
魔力感知
魔力の存在や動きを察知するスキル
基本、この世界の人間なら誰でも魔力を感知できる。
魔法の才能のあるものはさらに細かく感じることも可能だ。
それなら全員が魔力感知のスキルをみんなが持っているかというとそう言う訳ではない。
通常、魔力を感知できるのは自分の体内ぐらい広くて半径三メートルだ。
魔力感知のスキルを持っているとその範囲が劇的に広がる。
Lvが高い人だと半径10メートルに及ぶことがあるという。
これは地味だが、かなりの利点だ。
敵が魔法を使う時、それが察知できるというのは大きい。
しかも、魔力の動きからそれがどのような攻撃かも判断できる。
非常に便利なスキルだ。
絢奈にはそれを魔法で再現してもらったわけだが……
「あっ、生えた」
大輔の呟きにみんなの視線が集まる。
その視線をとりあえず無視して絢奈に
「パッシブソナーの魔法を切って貰える。それで魔法を使わずに魔力を感じる範囲を広げていって」
訝し気な顔でこちらを見ていたが言われたように実行する、絢奈。
そして、戸惑うようにあたりをキョロキョロ見廻す。
「えっ、えっ? 魔法を使ってないのに周囲の魔力がわかるよ」
「うん。魔力感知のスキルが生えたからね。これからはそっちを使う方がいいよ。そっちなら魔力消費がないから」
まあ、絢奈には必要ないかもしれないけど。
ちなみにパッシブスキルの魔力消費量は回復速度より少ないので絢奈のMPは減少していない。
あと、大輔が思っていた検証が一つ出来たとほくそ笑んでいる。
ここから脱出出来たらいくつか実験に付き合ってもらおう。
そんなことを密かに考えている大輔だった。
大輔はその後、いくつか奥の手を伝授しておいた。
「よく思いつくわね」と絢奈が呆れ顔で見てくるが気にしない。
これも小説や漫画ではよく出てくる方法で別に大輔のオリジナルではないのだから。
そんなことを考えつつ、くれぐれもピンチになるまで使わないように念押ししておく。
下手に高威力の魔法を使って生き埋めなんてことは勘弁してもらいたい。
それにしても本当にとんでもない能力だな、と少し羨ましく思う大輔だった。
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