表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/51

第二十八話 初戦闘と真実

祝一万PV&100ポイント

更新日ではありませんが記念に投稿します

「いくぞ!」


 その声で気付いたのか角の向こうから「ギャア、ギャア」と濁った声が聞こえてくる。

 枯れたような喉を潰されたような声は大輔に不快な思いを抱かせた。

 伸治たちに続いて涼子と絢奈も通路に飛び出す。

 大輔もその後ろに続いた。


「おらああああああああ」


 伸治がいつにない雄叫びをあげ、剣を振りかぶり走っていく。

 ゴブリンたちは突然の奇襲に戸惑っているみたいだ。


 前に二匹

 真ん中に二回り大きな剣を持った者。

 その後ろに一匹という陣形だった。


 伸治はまず、剣を横に一閃に薙ぎ払う。

 振りかぶっていた意味があまりない。


「「ぎゃああああああああ」」


 前に陣取っていた二匹が腹のあたりから両断されて倒れる。

 腹を裂かれて内臓がはみ出している姿はなかなかグロイ。

 思わず吐き気を催したが何とか堪える。


 前にいる二人を見ると絢奈は目を逸らしていたが、涼子はしっかりと見届けていた。

 表情には揺らぎさえないのは流石だ。

 というか乙女的にはここは怯えるのが正解だと思う。

 まあ、そんなことはどうでも良い。

 いまは戦闘中だ。


 伸治は倒れ込む二匹の間を駆け抜けてゴブリンリーダーに向かって剣を振り下ろしていた。

 正中にまっすぐ振り下ろされる剣。


 ゴブリンリーダーは剣を掲げてそれを防ごうとしたのだが……


 キーンと甲高い金属が響いた。

 そして、何かが脇に飛んでいく。


 それは剣の片割れだった。

 ゴブリンリーダーの剣は折れ、剣の柄だけ握られている。

 そして、抵抗などする暇もなく、ゴブリンリーダーは縦に真っ二つに切り裂かれていた。


 血が噴き出して伸治の身体が赤く染まる。


 瞬く間に三匹の仲間がやられ、残されたゴブリンは呆然としていた。

 そこに伸治が突進する。

 彼はまだ止まらない。

 そのまま、剣を返し、右下から左上に逆袈裟に斬り上げた。


 ゴブリンの身体に斜めの線が生まれ、前に倒れ込んでくる。

 伸治はそれを躱して、心臓に留めの一撃を放つ。

 最後のゴブリンも何も出来ずに絶命した。


 勝負は一瞬で済んだ。


 伸治が荒い息で心臓に剣を突き刺されたゴブリンを見下ろしている。

 実力差は歴然で勝負も一瞬だった。

 でも、初めての戦闘、しかも人型の魔物の相手だ。

 その緊張はかなりの物だったのだろう呆然としている。

 その身体は僅かに震えていた。

 伸治は心臓に突き刺さったままの剣を抜こうともせず、ただ固まっている。


 そんな伸治の横に大輔はゆっくり向かった。

 そして、彼の肩を叩く。


「おいおい。作戦立てた本人が全部一人で片付けてどうすんだよ。お前、めっちゃテンパってるぞ。あははははは」


 お道化て見せた。

 はっきり言って場違いな行動だ。

 絢奈やみな実がムッとしているがそれを涼子が抑えてくれている。


 そして、ようやく伸治が顔を上げた。

 少し青ざめていたがそこは指摘しない。


「わ、悪い。思いのほか緊張してたみたいだ」


 声が震えている。

 そんな彼の背中を西郷が思いっきり叩いた。


「あははは。オレの出番をとるんじゃねえよ。次はオレが一人でやるからな」


 そう言って笑って伸治にヘッドロックを決めていた。


「やめろよ。痛いだろう。あはははは」


 多分、この手のやり取りは男にしかわからないのだろう。

 ただ、伸治の笑い声を聞いて、緊張感が一気に緩んだのを感じ取ったのか、女性陣は文句を言わずに苦笑いを浮かべていた。


 そんな中、クレメンスがやってくる。


「流石は大輔さんですね。色々、よくわかっている」


 耳元で囁かれた。

 それに「買被り過ぎだ」と答えた大輔は最後に斬られたゴブリンを見下ろす。

 彼女(斬られたゴブリンはメスだった)は小さなロッドを持っていた。


「クレメンスさん。ちょっと」


 そう言って少し集団から離れる。


「あれはゴブリンリーダーではありませんでした。大きいゴブリンはゴブリンナイト。後ろの一匹はゴブリンヒーラーでした」


 ゴブリンナイトはゴブリンの上位種。

 ゴブリン → ゴブリンリーダー → ゴブリンウォリアー → ゴブリンナイト

 と進化していく。


 一撃で斬られたがかなり強かった。

 奇襲で倒さなければ経験の差で苦戦したかもしれない。


 そして、最も厄介だったのはゴブリンヒーラー。


 こいつは回復魔法を使う。

 ランクで言えばゴブリンウォリアーと同等だが、集団になったらゴブリンマジシャンと同じくらい厄介な相手だ。


 真実を明かして、このダンジョンは一筋縄ではいかないと忠告する。

 クレメンスは真剣な表情で頷いていた。


 そんな中、やっと気を取り直したのか、伸治たちが初戦闘の勝利を喜び合っている。

 大輔はそんな彼らを見ながら、これからのことについて考えていた。


 まだ、地下二階でこのレベルだ。

 どうやら手の内をどうこう言っていられる状況ではないみたいだ。

 盛大に溜息を吐きながら、大輔は今後の対応に思いを巡らすのだった。


皆様のおかげで一万PV、100pt達成しました。

ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ