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第二十六話 ダンジョン探索に魔法は便利です


 こうしてダンジョン探索が始まった。

 まず最初の選択。


 前に行くか? 

 後ろに行くか?


 前が騎士団たちがいた方である。


 まあ、判断材料がないので勘で決めるしかない。

 クレメンスの判断は前に行くことだった。

 まあ、後ろに行くというのは気分的に嫌なのだろう。

 多分、それだけの話だ。


 まず、隊列を組む。

 ダンジョン内は比較的広い洞窟で通路でも人が三人並んで歩いても余裕がある。

 ただ戦闘になることを考えると二人くらいがベストだろう。

 騎士団は前と後ろに半分ずつ別れた。

 前に来たのは大きな盾を持つ騎士が三人と軽装の斥候担当の騎士が二人。あとはコールマン隊長だ。

 そして、真ん中にビリー隊長とクレメンスと大輔達が固まる。

 大輔達のすぐ後ろに魔法担当のローブ姿の騎士が二人配置されあとの残りが殿を務める。

 ちなみにキリクはビリー隊長の前を歩かされている。

 いまは大人しく歩いていた。


 未知の空間を歩き回るのは緊張する。

 緊張していると疲労も激しい。

 重苦しい空気の中、静まり返った空間の中を歩くのは大変だった。

 自然に呼吸は荒くなりその音さえ煩わしい。


 真っ暗な洞窟の中で唯一の灯りは光魔法で生み出された光る玉。

 大輔達の頭上をゆらゆら飛んでいる。

 魔法担当の光魔法で生み出されたものだ。

 その明るさは電球程度で足元を薄暗く照らすのが精一杯だった。

 薄暗い空間は疲労に拍車をかけていた。

 

 そんな中


「そんなに緊張してると持たねえぞ。未知のダンジョンで警戒するのは当然だが、緊張してたら逆になにかあった時に動けねえ。軽くしゃべりながら歩いていた方がいいぞ」


 薄暗い洞窟にビリー隊長の明るい声が響く。

 多分、全員の緊張をほぐそうと無理に明るくしゃべっているのだろう。

 流石はビリー隊長だ。

 内心はわからないが声は平常時と同じだった。

 その思惑に乗ることにした大輔はビリー隊長に問いかける。


「隊長。ダンジョンっていうのはこういう暗いところが多いんですか?」


「そんなことはないぞ。洞窟型は真っ暗なところが多いが、塔型や遺跡型は魔石灯が設置されているところもあるし、自然型のダンジョンだと天井自体が太陽のように発光しているところもある。地下なのに朝や夜があるんだぞ。ホント、ダンジョンは不思議なところだ」


 ガハガハ笑いながらそんなことを言っていた。

 大輔は感心しながら話をふっていく。


「じゃあ、洞窟型の探索は大変ですね。灯りを常時用意しないといけないし、それに明るくすれば敵に見つかりやすくなるんじゃ」


 大輔の不用意な発言にみんなの緊張が高まった。

 大輔は失敗したと舌打ちする。

 だが、そんな大輔の発言をビリー隊長がフォローしてくれた。


「別に灯りはこちらの害にはならないぞ。こういうダンジョンにいる魔物はみんな夜目が利く。それ以外にも目が全く見えなくて目以外の手段で周りを察知する魔物も少なくない。それに灯りを嫌う魔物も多いんだ。だから、この手のダンジョンは出来るだけ明るくした方が良いと言われている。暗いとこちらは戦いにくいからな」


「それは本当なの?」


 不安そうな声で絢奈が語り掛けてきた。

 意外そうに大輔が視線を向ける。

 そんな彼女にビリー隊長は


「本当だ。魔物にとっては暗いも明るいも関係ない。それならこちらに不利な暗闇は避ける方がマシだ」


「それならよかった。少し薄暗くて足元が不安だったのよ。明るくしていいかしら」


 その質問を訝しく思いながらもビリー隊長は頷く。

 すると、彼女は口元でゴニョゴニョ言いだした。

 多分、魔法の詠唱だろう。

 そして杖を天に掲げ


「ライト!」


「「「「「うわあああ」」」」」


 周囲から驚きの声が上がる。

 薄暗かった洞窟があっという間に白く染まる。

 そして、しばらくすると外と変わらない明るさになっていた。


 その明るい範囲はどこまでも続いている。

 見渡す限り闇は存在しない。


 この現象に魔法担当の騎士は驚き声を震わせて


「まっ、魔力の方は大丈夫なのですか。魔物が出てくるかもしれないので無駄に魔力は消費してほしくないのですが」


「大丈夫よ。あまり魔力は消費してないし、これくらいならすぐに回復するから」


 そんな彼に絢奈は何でもないような軽い口調で答えていた。

 魔法使いは呆然としていた。

 多分、彼にはこれ程の魔法は使えないし、使えたとしてもこの魔法一発で魔力を枯渇させてしまうのだろう。

 戦闘訓練の様子を見て知っていたが、その能力の差をまざまざと見せつけられて戦慄している。


 そんなことが起こりながらも大輔達は先に進んでいった。

 大輔は携帯を取り出して時間を確認する。

 歩き出して三十分経過していた。


 このダンジョンにまだ分岐がない。

 いくつか曲がり角を通過していたがずうっと一本道だった。

 魔物もトラップもない。

 その静けさが逆に不気味だった。


 さらに十分ほど歩いたところでやっと変化が訪れた。


「階段……」


 そう下に続く階段が現れたのだ。


 選択は二つ。

 引き返すか? 

 ここを降りるか?


 引き返して逆方向を目指すことは出来る。

 そちら側には昇り階段があって外につながっているかもしれない。

 洞窟だからか感覚的に上に上がっていった方が出口に近いような気がする。


 まあ、気がするだけなんだが……


 全員の視線がクレメンスに向かう。

 リーダーは彼だ。


 そして、クレメンスは一瞬も迷わなかった。


「下に行きましょう」


 その声を聞いて騎士団の斥候役が階段を降り始めた。



いつもお読みいただきありがとうございます。

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