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第二十二話 訓練中なのにボッチは料理を楽しみます


 もうキリクのことは伸治たちも無視している。

 他の騎士の皆様は表面上、紳士的なので問題ない。

 というか、伸治達の訓練の様子を見てその実力に蒼然としている。


 まあ、あいつ等完全にチートだからね。

 昨日、ステータスを確認してからさらに成長している。

 いくらチート職だからってここまで数値が伸びるのは卑怯だと思う。


 通常、レベルが上がっても上がるポイントは素質があって2、3ポイントだ。

 それをこいつらは平気で10~20ポイント上げている。


 レベル上は雑魚だが、ステータス値は既にここにいる騎士たちを越えている。

 動きも鋭く、その攻撃力も魔法の威力も補正が掛かって太刀打ちうちできない。

 唯一、彼らに勝てるのは実戦経験くらいだろう。

 流石の伸治たちもまだ人間に刃物は向けられない。

 魔物に対してもそれが出来るかが疑問である。


 そんなことを考えながら伸治たちの訓練風景を見学していた。

 ただ、見ているのも何なので薬草や食べられる野草やキノコ、木の実などを集めながらだ。


 大輔は別にさぼっているわけではない。

 ちゃんとサバイバル訓練はやった。

 力仕事は苦手だけど手先は器用なので難なくこなせた。

 知識だけはバッチリあるしね。

 河原にテントを張って水対策などの仕方を教えて貰いながら実践した。


 ただ、戦闘訓練は見学することにした。

 まあ、あいつ等と一緒に訓練など出来ない。

 近接組の動きにはついていけないし、魔法組に参加しても威力に差があり過ぎてそこにいても意味がない。


 クレメンスは指揮を執って欲しそうだったが、伸治と涼子を別として他のメンツが大輔のいうことを聞くとは思えなかった。


 だから、見学である。

 まあ、ただ見学するのは何なので採取活動をやっているわけだ。


「おお、これって松茸なんじゃないの?」


 図鑑を片手に大輔は完全に楽しんでいた。

 いつの間にかアイテム鑑定Lv1が生えている。

 どうやら薬草やキノコは素材扱い、つまりアイテムにカテゴリーされるみたいだ。


 こうなると図鑑の必要はない。

 鑑定結果を読書スキルで見れば図鑑に載っているより詳しく正しい説明がわかる。


 まあ、そう言っても図鑑を手放すような真似はしないけどね。

 読書は必要だからするのではない。

 楽しいからするのだ!


 大輔は凄い勢いで採取を続けていた。

 サバイバルキッドの中に釣り道具もあったので釣りも楽しんだ。

 採取と釣りのスキルが生えた。



「大輔。やり過ぎだ」


「はい。自分でもそう思います」


 苦笑を浮かべるビリー隊長。

 自覚しているのかこの件に対しては大輔も苦笑いを浮かべている。


 いつの間にかキノコや野草が山と積まれていた。

 最初はお昼ご飯の足しになればいいと思って採取していたのだが、思いのほか種類が豊富で図鑑と照らし合わせている間に楽しくなってきた。

 それはスキルも生える訳である。


 その後も気を効かして昼飯の準備でもしておこうと思ったのだがそれが悪かった。

 大輔はこう見えて凝り性なのである。


 土魔法で竈を作り、風魔法で枝を伐る。

 風魔法と火魔法の複合技で枝を乾燥させて、火魔法で着火。

 水魔法で水を鍋に満たして湯を沸かす。


 とって来たキノコや野草、ハーブ、保存食にあった干し肉でスープを作る。

 塩は持ってきていたし、唐辛子が自生していたのでこれも使う。

 あと、異世界特有の木の実で香辛料っぽい物を見つけたのでブレンド。

 うん、なんちゃってカレースープっぽいのが出来た。


 あとは魚を捌いて、ハーブや塩をまぶして土魔法で密封、蒸し焼きにする。


 ついでに非常用で持ってきた小麦粉を使ってハーブや野草を練り込みパンというよりナン、いや酵母がなくて発酵させてないからチジミやお好み焼きにに近い物まで焼いた。


 後は野草でサラダだ。

 保存食の固いパンとチーズを細かく削って振りかけて、塩と酢と油で簡単にドレッシングを作って物足りない風味はハーブでごまかす。


 家に籠りがちだった大輔は料理がそれなりにできるのだ。

 魚を三枚に下ろせるし、桂剥きだってお手の物だ。

 あっという間にお昼ご飯の完成だ。


 うん。キャンプ料理じゃないね。

 下手すると城で食べている物よりも贅沢かも。

 あっ、料理スキルまで生えた。


 はっきり言ってやり過ぎました。

 ごめんなさい。


 そんなわけで森の中の河原で殺人的にいい匂いが充満していた。

 訓練で腹を空かした獣たちが涎を垂らして近づいてくる。

 まあ、一人で食べるつもりもないのでみんなにごちそうしてあげた。


 しかし……こいつ等、マジケモノ?


 すごい勢いで貪り食っていた。

 カレー風味の香りは異世界では日本人の理性を狂わせるらしい。

 まだ一週間くらいしか経ってないのに涙を流して食べている。

 マジで怖い。


 クレメンスもビリー隊長もこの味は気に入ったようだ。

 さっさと自分たちの分を確保している。

 そして、騎士たちはというと指を咥えてこちらを見ていた。

 文字通り指を咥えている姿は滑稽だ。


 騎士たちの分もあるので進めてみたがキリクが凄い勢いで睨んでいる。

 隊長は護衛の身で護衛対象からほどこされるのはどうなのだろうと悩み、結局、キリクの意思を尊重した。

 その隊長も涎を垂らしていたが……


 彼らは鳥やウサギなどを狩ってそれを焼き、保存食と一緒に食べている。

 魚は残念ながら取れなかったようだ。


 こうして大輔はまた一つキリクから恨みを買っていた。

 食べ物の恨みは恐ろしいのだ。

 って完全に逆恨みだよ。



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