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第十八話 テンプレ展開、騎士の詰め所で絡まれる

 騎士の詰め所にやってきた。

 中には休憩時間なのか待機中なのか10人前後の人が寛いでいた。

 お酒は飲んでいないようだが、何やらチェスのようなボードゲームやサイコロを使って賭け事をしているみたいだ。


 大輔が中を伺っているとすぐに視線が集まってくる。

 そして、代表者が席を立つと他の者は何事も無かったかのように寛ぎだした。


「どうかなさいましたか?」


 金髪で背が高いイケメンが目の前に立っている。

 他の者より少し良さそうな鎧を着ているので多分この人が隊長か何かなのだろう。

 大輔は素直に要件を告げる。


「ここに鑑定の宝玉があると聞いたので使わせてもらえないかやって来たんですが」


「ああ、そうですか? あなたは……もしかして、異世界からいらっしゃった方ですか?」


 その声を聞いたのか散っていた視線がまた集まってくる。

 大輔は居心地の悪さを感じながらも頷いた。


「そうですか? それではこちらに」


 そう言って丁寧に案内してくれる隊長の後をついていこうとすると


「これは、これは。勇者様のお連れ様ですか」


 こちらも金髪のイケメン。

 この世界で会うのはイケメンばかりだ。

 もう少しビリー隊長のような残念な顔をした人がいてもいい気がする。

 って言うか、もしかしてこの城、顔で選んでない?

 

 なんてことを考えている間に、ニヤニヤ笑いながら男は目の前までやって来た。

 いやらしい笑い顔が非常に似合う。

 こういうタイプは日本でもよく見た。


「あれ? 勇者様かと思ったらおまけ様ではないですか」


 キリクの嘲るような声に興味深げにこちらを見ていた他の騎士たちもどことなく残念そうな顔をする。

 多分これは大輔の被害妄想ではないだろう。

 その間もキリクは不躾にこちらを見てくる。


「キリク。失礼だろう。言葉を慎め」


 隊長の眉間に皺が寄る。


「いやいや、隊長殿。折角の待機日なのに森の探索の護衛なんて仕事を与えてくださったんですから挨拶くらいしないと」


 嫌味たっぷりの言葉に大輔は溜息すら出なかった。

 どうやらテンプレ展開に巻き込まれてしまったらしい。

 待機日で楽を出来ると思ってた所に仕事を押し付けられたから機嫌が悪いようだ。

 そんな事、オレには関係ないだろうと言ってやりたかったが、大輔は黙っておく。


 そもそもなんでこんなところに一人で来てしまったのか大輔は後悔していた。

 この世界に来て周りの人間が良い人ばかりで少し勘違いしていたようだ。

 大輔は苦笑いを浮かべながらキリクを無視することにする。


 隊長はキリクを諌めるのを諦めたのか重い溜め息を吐いてこちらに目線で謝っていた。


「それではわたくしがおまけ様に鑑定のオーブの使い方について説明をさせて頂きます。こちらのオーブに手を翳して念じればこのように鑑定結果が出るのですよ。おまけ様」


 おまけ様、おまけ様。うるさいが大輔は黙って聞いていた。

 そんな大輔の態度を萎縮していると勘違いしたのか嘲るようなニヤケ面でこちらを見てくる、キリク。


 そんなキリクの鑑定結果。


 名前 キリク=フォン=サーズデン

 年齢 18歳

 性別 男


 ステータス

  Lv35

  HP :1540

  MP :330

  SP :620

  STR:156

  AGI:138

  VIT:127

  INT:152

  DEX:212

  DEF:132

 MDEF:112


 職業 貴族の三男

 称号 騎士の身分を金で買った男

 取得スキル

  剣術Lv9 槍技Lv3

  盾術Lv5

  肉体強化Lv2

  魔術の才能Lv3

  身体強化魔法Lv3 防御魔法Lv2

  ステータス鑑定 Lv2

  

 キリクはドヤ顔で鑑定結果を見せてくる。

 自分の実力に余程自身があるのだろう。


 だが、大輔には基準がわからない。

 ステータス値はレベル1の伸治と同等かやや劣るくらいだ。

 スキルは槍が槍技まで上がっているのでなかなかの使い手なのだろう。


 戦闘系のスキルは術、技、奥義、そして、最高ランクの極みなどに上がっていく。

 最高ランクは武器などによって名前が変わる。


 どれくらいの実力かというと


 術を持っていれば一人前

 技を持っていれば一流

 奥義で達人

 最高ランクを持っているのは世界に5人といないらしい。


 キリクが威張っているのは槍技Lv3を持っているからだろう。

 だが、大輔の目は別のところに向いていた。


 職業が貴族の三男なことと称号である。


 『騎士の身分を金で勝った男』


 大輔は思わず吹き出してしまった。


「貴様! おまけの分際でわたしを愚弄するつもりか!」


 顔を真っ赤にして憤る、キリク。

 そして、彼は大輔の胸倉を掴み上げた。


「キリク! 客人への無礼。これ以上は流石に看過できぬぞ。いい加減にしろ」


 それはやりすぎだと思ったのか隊長は間に入ってキリクの腕を捻りあげる。

 そして、大きな声で叱責した。

 しかし、キリクは納得していないようだ。

 こちらを思いっきり睨み付けている。


「こやつはわたしのステータスを見て鼻で笑ったんですよ。許せると思いますか?」


「お前の言い分も分かるが最初に無礼な態度を取ったのはお前だろうが。なんでお前が正騎士になれないのか分かるか? その傲慢な態度とすぐに感情をむき出すところだ。下がって反省してろ」


 そういうと隊長はキリクを突き飛ばした。

 隊長は視線で他の部下に合図すると二人ほどが立ち上がりキリクを連れ出そうとする。

 しかし、キリクはその手を乱暴に振り払って出て行った。

 隊長はそれを見ると深い溜め息を吐いて大輔に向き直った。


「申し訳ありまっせんがお引き取り願いませんか?」


 言葉遣いは丁寧だったが表情も口調も硬い物に変わっていた。

 内心、余計なトラブルを起こしおってとか思っているのだろう。

 大輔は頭を下げてその場を後にするのだった。


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