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あの頃の明日はどうであっただろう  作者: 宮沢弘
第一章: あの頃
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ジャーナリストの手記より

 あの時代は奇妙であった。DNAの発見。ウィルスというものの発見。そしてそれらからもたらされた、DNAが遺伝情報の媒体であることの確認。時計の様々な機能の発明と実現。階差機関と、それに続く解析機関の発明と実現。そしてアンティキティラ島の機械の回収によってもたらされた、文明史の再評価。

 蒸気機関の発明と実現も、確かに大きな事件だっただろう。だが、ウィルスというものの発見も、DNAの発見も、それとは関係があるとは思えない。時計の様々な機能の発明と実現もそうだ。それらに比べれば、階差機関と解析機関という奇妙な機械の発明と実現など、時計の機能の延長線上にあるにすぎないとさえ言えるだろう。アンティキティラ島の機械がもたらした、文明史の再評価。それは蒸気機関とはなんの関係もない。そもそもアンティキティラ島の機械は、蒸気機関とはどのような関係も持ちようがない。

 その奇妙な時代は、何だったのだろうか。時代がそれらをもたらしたのか、それともそれらがその時代をもたらしたのか。

 そこに必然性、あるいは関連を求めようとするのは、ただの人間の、ただの機能の制限であるにすぎないだろう。

 「今」が、その時代に続いていることは言うまでもない。だが、もし何かが違ったとしたら。もし、それらのどれか一つでも起きなかったとしたら。もし、そうであったなら、世界はどうであっただろう。

 しかし、それらは起きた。どれほど奇妙に思えたとしても、それらは起きたのだ。

 だが、もしどれか一つだけでもタイミングが遅れていたら、世界はどうであっただろう。

 しかし、どれほど奇妙に思えたとしても、それらはそのタイミングで起きたのだ。

 いや、本当にそこに必然性はなかったのだろうか。もしあったのだとしたら、何がもたらした必然性だったのだろう。

 あの時代は奇妙であった。ただただ奇妙であった。何がそれらをもたらしたにせよ、何があの時代をもたらしたにせよ、ただただ奇妙であった。


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