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闇夜の晩は  作者: 不愉快なタンス
1章 始まりは拉致と脅迫
8/10

《選択》

「でも意外と使いやすいな。」


幽霊屋敷に放り込まれた俺は、十数分探索した後にそんなことを呟いた。

実際に使ってみたりすると、祖母の家と似通ったところがあったりするのだ。

・・・流石に幽霊屋敷みたいではなかったけど。

ただ・・・


「寝るときはどうしよう?」


確か上に階があるはずなのに何故か天井からの雨漏りが激しく、床に水溜りが出来ている中でどうやって寝ろというのだろう?

確かに布団は押入れの中にあったが、それは寧ろ毛布といった方が適切で、あまりに薄すぎるために水溜りの上に敷くのは不可能と思われた。

なら、どうするか。


「ふはははは! こんな水たまりなぞ余裕余裕!! 瞬時にして消し去ってくれるわあ!!」


そう、拭いてしまえば何の問題もあるまい。

そう考えた俺は、謎のスイッチが入ったままで部屋の掃除を始めた・・・。



                              ☆



「そうだ・・・。こんなこと、できるわけがないんだ・・・。」


2時間に及ぶ格闘の後、俺は結局部屋の掃除は愚か、水溜りさえ吐き出せずにその場で座り込んでいた。

因みに、唯一の湿っていないスペース(半畳程のスペース)のため服は一切濡れていない。

落ち着いて考えてみれば、上から継続的に降り続いてくるものに対して、下だけ拭いていても無駄なのだ。それに気づいたのが1時間前で、ならばバケツな何かで水を溜めておいてその間に拭いてしまえば? という考えにたどり着いたのがそれから30分後。

それから、バケツやら桶やらが風呂に置いてあったのでそれを使って掃除再開! と意気込んでいたら、バケツ及び桶の数は足りんわ間違えて布団用として置かれていた毛布を使って水を拭いてしまうわで、散々な目に遭って。

そんなこんなで今の状況に至るのだが。

時間は夕方(と思われる)、しかも明かりが蝋燭しかないというこの状況で、一体何をしろと言うのか。

最終的には部屋の掃除は1割も終わってないし、じゃあ今からすればと思えば蝋燭の灯り程度では部屋は照らせず、ならばスペルさんのところへ行けば? と考えついたのはいいが、部屋番を聞き忘れたせいでどこの部屋かわからない。

部屋の真ん中で「どうしよう、どうしよう・・・・・。」と呟いていた時だった。


コンコン!


「カズマくーん! 夕飯できたよー!」


ノックと共に、聞き覚えのある声が飛んできた。


「スペルさあああああああああん!! 待ってましたああああああああああああ!!」

「うわ、ちょ、流石に抱きつくのはやめ──」


ドアが空いた瞬間に、文字通り飛んでいく和磨。

それに対して、抱きついてくると思ったのか、スペルは半身になって避けようとするが、


「ちょっと吹き飛べやごるあああああああああああああああああああ!!」


残念ながら、和磨は抱きつくために飛んだのではなく、恨みの篭った精一杯の拳を突き出すために飛んだのであり、


「ごぶるああああああ!!」


不意の出来事に対応できなかったスペルは、そのまま廊下の壁へと(頭から)激突した。


「幽霊屋敷に案内するとは何事だ、アァン? なめとんのか我ェ。そもそも、何でコンナ幽霊屋敷に人を住まわせようとか思ったんだド畜生がァ。あんまふざけてっとシバき倒すぞ!!」

「ま、まあ落ち着きなよ。何も僕は、争うために来たんじゃないんだ。夕飯の準備が出来たと伝えに来ただけで──」

「返答次第で許してやろう。今日の夕飯は?」

「はしまき。」

「殺す。」


はてさて、富士の樹海がいいか、相模湖の底がいいか、太平洋がいいか・・・なんて、いつの間にか『処刑の仕方』から『死体の処理』に話が切り替わっている中、


「そうだそうだ、実はちょっと変更があってね。」


不意に、スペルがそんなことを言い出す。

頭の中で死体の処理方法を考えていた和磨だったが、『ひょっとしたら部屋の変更かもしれない・・・。』と言う希望があるからか、一旦考えを仕舞う。


「実は、部屋が変更になったんだ──」

「イヤッフウウウウウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥ!! やりいいいいいいいぃぃぃ!!」

「──この上の階の人が。」

「なら俺に知らせるなあああああああああぁぁぁぁ!!」


が、久しぶりの朗報かと思えば、それは上の階の住人が引っ越すという知らせであり、一切俺には関係がなかった、と和磨は嘆く。

そんな様子を見ていたスペルは、


「いや、実際にはいい話だと思うんだけどねぇ・・・。」

「どう考えても俺に関係がなさすぎるんだが・・・。」

「それが、上の階の人が引っ越すから、その部屋が空いてしまうんだけど──」

「その話、乗った!!」


部屋が空いているという話をした瞬間、和磨は手の平を返したように態度を急変させ、さっきまでの憎悪や嫌悪といったものはすっかり消え失せていた。


「いや、でもさっき殴り飛ばされたしな・・・。」

「・・・・・。(←神々しいオーラ・・・を醸し出したと勘違いしているw)」

「まあでも、実際に幽霊が出る屋敷に閉じ込めたのは俺だし、そのくらいは許すか・・・。」

「おいちょっと待て。今、信じられない言葉が聞こえた。」

「ああ、安心して。ここの幽霊、この部屋にしか出ないから。」

「安心できるか。」

「そんなに心配しなくても、滅茶苦茶綺麗な幽霊だから。」

「俺、この部屋でいいです。」

「綺麗な顔立ちの──男の人だよ。」

「やっぱ部屋変えてください。」

「大丈夫、怖い点といえば、手にしている包丁とボサボサな髪、そして『・・・う・・・・らめ・・・し・・・や・・・・。』と呟いているくらいだから。」

「明らかに大丈夫じゃないよな。」

「それに、出てくるのも365日中350日だから。」

「『国民の祝日はお休みです』ってか。」

「この前は、『こっちは楽しいトコだから、いッシょニおいデヨウ・・・。』って、前の住民を追い掛け回してたなぁ・・・。」

「それ、明らかにあの世に連れて逝こうとしてるよな。」

「・・・そんなにこの部屋が気に入らないかい?」

「心底気に入らない!!」

「じゃ、しょうがないか・・・。」


最終的には、激しい攻防の末、和磨が辛勝したようで、なんとか部屋を変えてもらうことになったそうな。



                        ☆



「・・・で、結局俺の部屋はどこなんだ?」


廊下で立ち尽くしている俺に冷たい風が吹き付ける。


--時間を遡ること十数分前--


-和磨の回想-


「それで、今度の俺の部屋っていうのは?」

「ちゃんとした部屋だよ。勿論、さっきまでの幽霊屋敷とは比べ物にならないほどにね。」

「なら良かった。」


これで『さっきの幽霊屋敷より酷い部屋でーす』なんて言われた日には、一発殴るだけでなく、更に10発は蹴らなければならなかっただろう。


「・・・ん?」

「? 何かあったんですか?」

「いや、今、通信が入ってな。どうやら、修行している奴の一人に異変があったらしい。ちょっと行ってくるから、自分の部屋にでも入っててくれ。カズマ君の部屋はそこの角を曲がった先にある部屋だから。」

「え? ちょっと待っ──」

「・・・。(←転移魔法で消えた)」

「・・・・・・・・・。」


・・・まあ、部屋の場所は教えてもらったし、大丈夫だろう。

そんなことを考えていたが。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。(絶句中)」


和磨を待ち受けていたのは、角の奥に広がるひたすら長い廊下と、その廊下に接している無数のドアだった。


「・・・・・・・・確かに廊下を曲がった先ではあるけど。」


どうしてこの世界の連中には常識がないんだろう?

周りがおかしすぎるのか、それとも俺がおかしいのか・・・。

廊下に突っ立っている俺に、冷たい風が吹き付けた。


-回想終了-


・・・とまあ、こんな感じの理由で俺は廊下に突っ立っていたりするのだが。

今、俺に取れる行動は3つある。


一、近くの部屋の住人に聞いて、空き部屋がどこかを聞いてみる。


二、近くの部屋の住人に聞いて、スペルさんの部屋がどこかを聞き、そこで待機。


三、この若干涼しい廊下で、スペルさんが帰ってくるまでひたすら一人で待つ。


とりあえず、三はナシ。ふざけんなと言いたいところだ。

しかしそうすれば、一、二のどちらの選択肢を取るにしろ、近くの部屋の住人に聞くことが前提条件となってしまう。

この世界の常識さえもないまま話をするのは、どうしても避けたい。しかし聞かなければずっと待っているハメに。

このどうしようもないジレンマをどのようにして解決するか。

俺は少し考えてみる。

ここで待っていたらどうなるか。

当然、秋風が吹く中なのだから、若干は寒くなるだろう。それはいい。

問題は、ここが廊下だということだ。

廊下ということは、下手したら部屋から出てきた人とバッタリ鉢合わせ! ということも有り得る。その場合、


「あ、ども~。俺、異世界から来たんです~。それで、今空き部屋を探してるんですけど、どこにあるか知ってます~?」


なんて挨拶はまず論外だ。

空き部屋を探している時点でアウトだろう。

仮に相手が物凄く温厚且つかなりの世話焼きさんで優しかったとしても、普通に部屋の人に聞いてからとでは時間に差が出てしまう。

それなら、無駄な時間分の損をしてしまうだろう。

じゃあ、残された選択肢は、


「空き部屋を探すべきか、スペルさんの部屋を探すべきか・・・。」


この二つになる。

この二つには、それぞれ長所と短所がある。

空き部屋部屋を探す場合、中の部屋の人が知らないという可能性がある。それに比べ、スペルさんはこの寮の管理者だし、まず知らない人はいないと見ていいだろう。

しかし、仮にスペルさんの部屋を見つけたとして、そこが空いているとは限らない。鍵が掛かっている可能性が高い。

対して空き部屋を見つけた場合は、そうはならない。スペルさんは入っててくれといったぐらいなのだから、鍵が掛かっている可能性はないと見ていいだろう。


果たして、どちらの選択肢を取るべきか。

しばらく考えた結果、俺は答えを導き出した。


「すいませーん、ここに越してきたものですけれどもー。」

「はーい。」


思い切って、近くの部屋をノックしてから声をかける。


「スペルさんに部屋を案内してもらおうと思ってたんですけど、どうにも用事があるらしくてどこかに行っちゃったんですよ。それで今、空いている部屋がこの近くにあると聞いて探しているんですけれども・・・っ!」


不意に、そこで言葉が途切れてしまう。

何故なら、ガチャと扉を開けたその先には、


「はい? ・・・あら? なんで倒れてらっしゃるのかしら?」


バスタオル姿の同年代の女の子が立っていたから。


・・・流石にこれは耐え切れねぇ・・・。

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