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闇夜の晩は  作者: 不愉快なタンス
1章 始まりは拉致と脅迫
7/10

《部屋》

「──な~んちゃって~☆」


とても重苦しい雰囲気の中、スペルさんが突然頭の上に手を持って行って、俗に言う『なんちゃってポーズ』をした。

ヤバイ。展開についていけない。


「今の話、実は俺がたった今作った作り話で、殆どが出任せでした~w。」

「・・・は?」


・・・つまりは、


『俺を騙すために口先だけの出鱈目な話をした。』


という認識でおk?

おkですよね。

ということは、


『コイツギタギタにしてもおk?』


おk・・・・・・・じゃない!

危ない! 今ここでコイツを殺ると、今後俺が何をしていいかがサッパリわからなくなるとこだった。

ナイス、俺の冷静な判断力。


「いや~・・・こんな突飛な話に騙される人がいたなんてねぇ~・・・。(ニヤ」


いや、やっぱコイツ殺r・・・・・・・・・いや、ダメだ。

仮にこれからやることが見つかったとしても、修行が終わるまでの間の食事がこの場にある『はしまき』だけになってしまう。

はしまきオンリーなんて生活、俺には耐え切れない。


「因みに、ここにいる間は寮に入ってもらって、食事などは全て俺が作るからな。・・・と言っても、はしまきだけだがww」


やっぱコイツ殺ろう。

俺がそう強く心に決め固く拳を握ったとき、


「じゃあ、私は少し見て回って帰るのね。土産でも買っていかないとリリーが怒るだろうし、寄るところもあるからね。」


突然、リーノがそんなことを言い出した。


「ちょっと待て! じゃあ俺は何をすればいいんだ!? っつか、リーノはこっから帰るのか?」

「そりゃ修練が終わるまでにはかなりの時間がかかるから、こっちにだけかかりっきりにはなれないのね。それに、私がこちらにいてもできることはないし、向こうでの仕事が山積みだからここに残ることはできないのね。」


・・・畜生。

口ではこんなこと言いながら、顔には『私はこれからこの近くで遊びまくって帰ります』って書いてやがる。

ここは・・・せめてもの足掻きだ!


「でもどうやって帰るのさ? ここがどこかは知らないけど、だいぶ遠くなんじゃ──」

「『転移魔法』で。しかも、ここと宮殿では10キロ程度しかないのね。」

「・・・でもこの前、『次元転移魔法』を使ったから魔力がどうのこうのって言ってたような──」

「誰かさんがグッスリお休みになっている間に、十分貯めさせていただいたのね。」

「・・・・・・でも俺、この世界の物何も持ってな──。」

「生活に必要なものは全部寮にあるから大丈夫なのね。それに足りないものがあれば、おっちゃんに言うなりなんなりすれば、大体のものは支給されるのね。食事はさっき言った通りはしまきだけだけど、それでもかなり美味しいから問題ないと思うのね。」

「・・・・・・・・・・・・・。」


玉砕した。

見事なまでに玉砕した。

何もかもが粉微塵になった。

多分今の俺の表情は、“気づいたら借金が膨らんでて返す余地もなく会社もクビになり奥さんにも逃げられガン宣告をされたうつにかかったサラリーマン”よりも顔に縦線が割り込んでいることだろう。


「まあ、そこまで悲観することはないのね。ちゃんと楽しめるような企画も用意してあるし、楽しめる物も置いてあるのね。」

「マジ!? それ先に言えよ! というか、どんなものがあるんだ?」


とても気になる。

この際、トランプでも難しい小説でも学術書でもなんでもいい。・・・いや、学術書とかは流石に困るけど。

それでも、一応は一般人の俺にでも楽しめる物があると思──


「ん~・・・。例えば、学術書(魔法の術式構成とそのあり方)とか学術書(魔法の起源を紐解く)とか学術書(徹底討論! これからの魔法社会を語る!)とか・・・。」


ダメだ。面白そうな要素が一つも見当たらない。

というか、こいつらはどれだけ魔法について調べたがってんだ。そういうことは学者にでも任せとけばいいんだよ。

心の底から湧き上がる、『ああ、これからどうなるんだろ俺・・・。』的な感情を押さえ込み、もう一つの最後の希望にかけてリーノに聞いてみる。


「・・・楽しめるもの(クソのような学術書)は置いておくとして、企画の方はどんなのがあるんだ?」

「確か、私がいた頃の今頃は・・・他の寮生徒と徹底討論! 魔術の活用法とそのあ──」

「わかった。よおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉく分かったから、お前はもうどっかに行って遊んで来い。」

「え? 説明はしなくていいのね?」

「ああ。本当に、身に染みるほど、100年も復唱してきたように分かったから。」


俺にとって全く楽しくないということが。

というか、俺に限らず、魔法について殆ど知らないような奴にとって、徹底討論は楽しいどころか拷問にしか成り得ないだろう。


「じゃあ、カズの了承も得たことだし、早速行ってくるのね!」


心の奥で絶望していると、いつの間にかリーノの姿は消えていた。

なんともすばしっこい奴だ。魔法を覚えたらそうそうにしばかなくてはならない程に。

俺はいつか絶対アイツをしばき倒す! と決心したところで、スペルさんがいなくなっていることに気づいた。


「・・・あれ? 確かさっきまでいたはずなんだけど。」


つい、口からそんな言葉が漏れてしまう。

周りに見えるのは、神社の入口のようにそびえ立っている鳥居、場違いなほど派手な感じのはしまきの屋台、御神木のように祀られている巨大な木、等々・・・。

何処を探しても見つからない。こっちに来ていきなり迷子か!? なんて焦って、とりあえず御神木の近くに行ってみようとして、駆け出すポーズをした俺は、


「よし、用意が出来た・・・。おーい、カズマくーん!」


背後の屋台の裏からひょいと現われたスペルさんの声によって、駆け出そうとしていた足が、完全に宙で止まってしまい、顔面からその場に派手に転がり込む。

おまけに息をしようとした時に砂が鼻に入ってしまい・・・


「ゲホッ、ゲホッ!!」


思いっきりむせた上に、額のところに少し大きいコブが出来てしまった。

痛い・・・・・。

俺、こっちの世界に来てから良いことが無さすぎじゃないだろうか。

これからは厳しそうな修行だし、食事ははしまきだけだし・・・・・・・・・・・・・ん?

食事?

ふと、食事という単語から疑問が湧き上がる。

こちらの世界に来てから食事をしていないのに、今生きていられるのは何故だ?

確かに、多少の空腹感はあるものの、3日以上食べてないのならこんなちっぽけな空腹感だけでは済まされないはずだ。

だが、何かを食べさせられた記憶もないし、今朝の寝起きを鑑みるに、点滴のようなものを受けていたとも考え辛い。

おまけに、この世界には殆ど『科学』が存在していないというのだから、後者についてはほぼあり得ないと見ていいだろう。

では、何故空腹感があまりないのか・・・クソ。リーノがいるうちに聞いておけばよかった。

因みに、リーノは車並みのスピードで走り去っているので、姿はおろか、居た形跡さえもなくなっていたりする。

じゃあこれはなんなのか・・・。

頭がこんがらがりそうになった時だった。


「ん? そういえば、カズマ君は3日間寝ていたといったね? ということは、『治癒魔法』を受けたということで間違いないのかな?」

「はい?」

「いや、実は、修練に挑む前に魔法を受けておくと、修練を積むのにかかる時間が短くなるとされているんだけれども、どうやら効果的な魔法は『攻撃魔法』と、さっき言った『治癒魔法』だけらしくてね。『攻撃魔法』だと威力が強くて耐えられない生徒も出てきくるし、『治癒魔法』は魔力の消費が激しくてあまり使いたくないんだよ。」

「・・・一つ聞きたいことがあるんですけど、なんで3日間寝ていたら『治癒魔法』が使われているってわかるんですか?」

「ああ、そうか。まだ殆ど知らないんだったね。『治癒魔法』は怪我とか病だけではなく、その人の一日の疲労だったり、マイナスな気分だったりと、色々と効果があるんだよ。その中に、栄養や空腹感なども緩和するような効果も含まれているし、カズマ君の様子を見た限りでは極限まで腹が減ったというわけでもなさそうだったからそう思ったんだよ。」

「・・・なるほど。」


一発で疑問が解決してしまった。

さっきまで悩んでいた自分が馬鹿のようだ。

・・・いや、学校での成績は良い方ではなかったけれど。


「と言う訳で、カズマ君は『治癒魔法』を受けたということでいいね?」

「はい。空腹感もそれほどありませんし、多分受けていたんだと思います。」

「なら話は早い。今からにでも始めようか?」

「え・・・? いや、流石にそれは・・・。」

「ははは。今のは冗談だよ。」

「冗談だと思えないからやめてください。」

「僕から冗談を取ったら何が残ると言うんだい?」

「誰にでも優し(そうな)いおっちゃんのぽっちゃりとした体型。因みに、冗談が9割で体が1割。」

「・・・・・。(シクシクシク)」

「今のは冗談です。」

「わかりにくい!」

「その言葉、そっくりそのままお返しします。」


よっしゃ! やっと1回仕返ししたった!

嬉しくて舞い上がりそうな勢いの俺に、若干引き気味のスペルさんは、


「・・・じゃ、じゃあ、早速寮へと案内するよ。」


あまりその話を続けたくないのか、急な話の方向転換をした。

フッ・・・。ここは俺の勝ちだ。

なんて中二病なセリフを呟いた俺(妄想中)を、心の中で他の俺達(妄想中)がボッコボコにする。

・・・とても人様に見せられるザマじゃねぇ。

落ち着きを取り戻した俺は、屋台の裏にポッカリと空いている(のようなもの)に入っていったスペルさんの後を追った。



                                    ☆



「まず、ここが出入り口。」


穴の先は、普通に元の世界にでもありそうな感じの寮の廊下だった。

出入り口は、思いっきり玄関のような感じになっていて、とても異世界に来たとは思えなかった。


「で、こっちが中なんだけど・・・。」


そして、歩いていたスペルさんが、ある一室の前で止まる。

ここが俺の部屋なのかな?


「・・・まあ、嫌な話は置いといて。」

「置いとくな! 気になる!」


何故そこまでためておいて話さないと言えるのか。

そんな俺をスルーして、スペルさんは、


「こっちが居間、こっちが便所、こっちが風呂ね。何か不満があったら言ってね。」


着々と説明を終わらせていった。

だが、俺は不満があるにもかかわらず、それを口に出すことはできなかった。

なぜなら、


「じゃ、僕は今日のところはこれで。」

「ここはどこぞの幽霊屋敷じゃああああああああああああああ!!!」


目の前に広がる光景は明らかに幽霊屋敷と呼ぶに相応しく、あまりのイレギュラーに対応できていなかったからだ。

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