2、首無しライダー
これは数年前に耳にしたことなんです。
首無しライダーって知ってますか? ある男がツーリングをしていると、後ろから速いバイクが来る。特に急いでいなかったので道を譲ると、そのバイクの操縦者には首が無かった……。
デュラハンだとか、実は艶消しの黒ヘルメットを被っていたから首が無いように見えたとか、暴走族の横暴に耐えかねた住民がワイヤーを道に張ったらライダーの首がもげたとか、由来は諸説あります。
一つ言えることは、誰がこの話を始めたのか。
誰が目撃したのか。
どこの地域でよく目撃されるのか。
一体、どんなバイクだったのか。
詳しい情報が抜けているんですね。まるで暗闇のようにつかみどころのない話というわけです。
多くの派生も存在します。
私が聞いた話というのは、首無しライダーに挑んだスピード狂の話です。
ある男が居ました。彼はとてもバイクを愛していて、真夜中の山道を猛スピードで駆け抜けるのがたまらなく好きだった。
ある日、彼は首無しライダーに出会ってしまった。
壮絶な競争の結果、彼は負けてしまい、すっかり自信を失ってしまった。当然ですよね。彼はスピードに関して右に出る者がいないと自慢に思っていたんですから。得体の知れない化け物がどうというより、負けたことが悔しかったんですね。
彼はバイクを新調して、改造を施した。練習を重ねた。そして首無しライダーの出没する山道を毎週のように走っていた。
ライダーが来たんです。彼は命を懸けて走り、ライダーを負かしました。
話はここで終わっています。
後日談として、彼の新品のバイクに跨った首無しライダーが山道を走っているのが噂されているとか。
追い抜いてしまった者がライダーになったのか、興味は尽きません。