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親友と婚約者が結ばれそうです、好きな人を奪われてしまいました。

作者: 有梨束
掲載日:2026/08/30

私のこの世で一番好きな人、唯一恋をした人は、私のことが好きではなかったようだ。



「ごめんなさいっ。あなたの婚約者のことを好きになってしまったの…!」

「君には本当に申し訳ないと思っている。でも、僕が愛したいのは君ではなく、ジュリエラなんだ…!」

私の婚約者が、一番の親友であるジュリエラをその腕に抱いていた。


カアッと血がのぼって、気づいたら口汚く罵っていた。

そんなこと、一度もしたことがなかったのに。

だって、大好きだったもの。

あなたに少しでも好かれたくて、とっても利口にしていたもの。

だというのに、愛は憎悪に変わるのだ。

こんなにも、自分を制御できずに、手からスルスルと溢れ落ちていってしまうものなのか。


触るな、穢らわしい…!

今までに感じたことのないドス黒い気持ちが込み上げてきて、吐きそうだった。


私を見る目が、怯えていた。

そのことに、もっと嫌気さした。


そんな目で、私を見ないで!

私は本当はこんなんじゃないっ!


私が花嫁修行として、婚約者のお母様から家のことを教わっている間、たしかに忙しくしていた。

会える時間も、全然なかった。

でも、それはわかってくれていると思っていた。

それなのに、私がそんな時間を過ごしている間に、二人は密会して、仲を深めていたというの?

私を除け者にして、まるで最初から私がいなかったみたいに…。


ねえ、二人で会う時、少しでも私のことは浮かばなかったの?

ちょっとでも、私のことを考えてくれたりはしなかったの?

そんなに、その人がよかったの?

ねえ、聞かせてよ…、私ってそんなにあなたにとって小さい存在だったの…?


私には、特別で一番で、誰よりも大きい存在だったのに。


婚約者がジュリエラを守るように、きつくその腕に隠したものだから、本当に吐いてしまった。

気持ち悪くて、ムカムカして、苛ついて、ジュリエラが気持ち悪く見えて、余計に落ち込んで、さらに吐いた。


絶望に似た瞳で私を見下ろしているから、そっちがそんな顔をするの?と、ぼやける思考の中で思った。




結果的には、向こうのお家有責で婚約破棄となった。

そんなこと、どうでもよかった。


私には、ジュリエラしかいなかったのに……。

ジュリエラだけが、私の全てだったのに。


私が好きだったのは、ジュリエラだ。

恋をしていたのも、ジュリエラだ。

最初から、ジュリエラ以外目に入っていない。

それなのに、こんなのってあんまりよ…!


貴族の娘に生まれた以上、義務は果たす。

だから、元婚約者とも縁を結んだし、ちゃんと嫁ぐはずだった。

向こうのお母様にも、しっかり頭を下げていた。

その間、ジュリエラに会えない時間は、本当に寂しかった。

想いなんて、告げない。

ただ、いつまでも、子が生まれても、おばあちゃんになっても、友達でいたかった。

ジュリエラの子どもだって、愛せると思っていた。

それだけ、ずっと覚悟して、ずっと妄想して予行練習して、ずっと一個ずつ諦めてきた。


「…どうしてなの、ジュリエラ。友情は、男に勝てなかったの…?」


私が男だったら、そばにいられたんだろうか。

女じゃなければ、堂々と彼女を口説けたのだろうか。

私たちの出会いが、こんな形じゃなければ、もっと一緒にいられる方法があったのか。


私が私で、ジュリエラがジュリエラだったから、友達になれた。

同じくらいの身分で、同じ貴族令嬢だったから、出会えた。

一番の親友になって、一番いい形になっていた。

私じゃなかったら、友達にすらなれていない…!


ああ、愛していたの、ジュリエラ…。

どんな男があなたを攫っていっても、我慢するはずだったの。

本当よ。

よりにもよって、あいつじゃなくても、いいじゃない…!

あの人に抱かれた、あなたなんて…、ウエッ。



その夜、私はもう一度吐いて、胃の中が空っぽになるのと同時に、虚しさしか残らなかったのだった。






お読みくださりありがとうございました!!

241日目。

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