親友と婚約者が結ばれそうです、好きな人を奪われてしまいました。
私のこの世で一番好きな人、唯一恋をした人は、私のことが好きではなかったようだ。
「ごめんなさいっ。あなたの婚約者のことを好きになってしまったの…!」
「君には本当に申し訳ないと思っている。でも、僕が愛したいのは君ではなく、ジュリエラなんだ…!」
私の婚約者が、一番の親友であるジュリエラをその腕に抱いていた。
カアッと血がのぼって、気づいたら口汚く罵っていた。
そんなこと、一度もしたことがなかったのに。
だって、大好きだったもの。
あなたに少しでも好かれたくて、とっても利口にしていたもの。
だというのに、愛は憎悪に変わるのだ。
こんなにも、自分を制御できずに、手からスルスルと溢れ落ちていってしまうものなのか。
触るな、穢らわしい…!
今までに感じたことのないドス黒い気持ちが込み上げてきて、吐きそうだった。
私を見る目が、怯えていた。
そのことに、もっと嫌気さした。
そんな目で、私を見ないで!
私は本当はこんなんじゃないっ!
私が花嫁修行として、婚約者のお母様から家のことを教わっている間、たしかに忙しくしていた。
会える時間も、全然なかった。
でも、それはわかってくれていると思っていた。
それなのに、私がそんな時間を過ごしている間に、二人は密会して、仲を深めていたというの?
私を除け者にして、まるで最初から私がいなかったみたいに…。
ねえ、二人で会う時、少しでも私のことは浮かばなかったの?
ちょっとでも、私のことを考えてくれたりはしなかったの?
そんなに、その人がよかったの?
ねえ、聞かせてよ…、私ってそんなにあなたにとって小さい存在だったの…?
私には、特別で一番で、誰よりも大きい存在だったのに。
婚約者がジュリエラを守るように、きつくその腕に隠したものだから、本当に吐いてしまった。
気持ち悪くて、ムカムカして、苛ついて、ジュリエラが気持ち悪く見えて、余計に落ち込んで、さらに吐いた。
絶望に似た瞳で私を見下ろしているから、そっちがそんな顔をするの?と、ぼやける思考の中で思った。
結果的には、向こうのお家有責で婚約破棄となった。
そんなこと、どうでもよかった。
私には、ジュリエラしかいなかったのに……。
ジュリエラだけが、私の全てだったのに。
私が好きだったのは、ジュリエラだ。
恋をしていたのも、ジュリエラだ。
最初から、ジュリエラ以外目に入っていない。
それなのに、こんなのってあんまりよ…!
貴族の娘に生まれた以上、義務は果たす。
だから、元婚約者とも縁を結んだし、ちゃんと嫁ぐはずだった。
向こうのお母様にも、しっかり頭を下げていた。
その間、ジュリエラに会えない時間は、本当に寂しかった。
想いなんて、告げない。
ただ、いつまでも、子が生まれても、おばあちゃんになっても、友達でいたかった。
ジュリエラの子どもだって、愛せると思っていた。
それだけ、ずっと覚悟して、ずっと妄想して予行練習して、ずっと一個ずつ諦めてきた。
「…どうしてなの、ジュリエラ。友情は、男に勝てなかったの…?」
私が男だったら、そばにいられたんだろうか。
女じゃなければ、堂々と彼女を口説けたのだろうか。
私たちの出会いが、こんな形じゃなければ、もっと一緒にいられる方法があったのか。
私が私で、ジュリエラがジュリエラだったから、友達になれた。
同じくらいの身分で、同じ貴族令嬢だったから、出会えた。
一番の親友になって、一番いい形になっていた。
私じゃなかったら、友達にすらなれていない…!
ああ、愛していたの、ジュリエラ…。
どんな男があなたを攫っていっても、我慢するはずだったの。
本当よ。
よりにもよって、あいつじゃなくても、いいじゃない…!
あの人に抱かれた、あなたなんて…、ウエッ。
その夜、私はもう一度吐いて、胃の中が空っぽになるのと同時に、虚しさしか残らなかったのだった。
了
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241日目。




