第八話 条件の整理
王立アルカディア魔導学院の門。
クラリス・ヴァレンシュタインは静かに目を開いた。
……やはり。
門の前だ。
朝の光。
集まる新入生。
同じ景色。
同じ時間。
この一日は、また巻き戻された。
「クラリス様!」
声がした。
エレナ、リディア、ミレイユ。
三人の令嬢が駆け寄ってくる。
そして自然な動きで、クラリスの周囲を囲んだ。
ほとんど同時に。
「クラリス」
レオンハルトが護衛騎士達を連れて歩いてくる。
令嬢たちは自然に見せて、レオンハルトを自分たちの壁の中に取り込んだ。
エレナが小声で言う。
「戻りました」
ミレイユも頷く。
「講堂のあとですね」
クラリスはレオンハルトを見る。
レオンハルトもすでに理解している様子だった。
「前々回、前回の2回は講堂まで行けた」
リディアが静かに言う。
「はい」
「今までより長く続きました」
レオンハルトは後ろの騎士達を振り返った。
「一つ頼む」
騎士はすぐに頭を下げる。
「は」
「ユリウス・フェルンベルクを探してこい」
「すぐに」
騎士達は目くばせし3人のうちの一人が頷き、人混みの中へ消えた。
エレナが驚く。
「ユリウス様ですか?」
レオンハルトは答える。
「あいつは時間の話をしていた
一番理解している」
それから、ほんの少しだけ沈黙があった。
ほんの少しだ。
「呼びましたか」
静かな声がした。
振り向くと、銀髪の少年が立っている。
ユリウス・フェルンベルク。
魔導科首席だ。
レオンハルトが言う。
「早いな」
ユリウスは答える。
「門の近くにいました」
そして周囲を見る。
クラリス。
取り巻きの令嬢たち。
レオンハルト。
レオンハルトの護衛騎士達。
ユリウスは静かに言った。
「また巻き戻りましたね」
クラリスは頷く。
「はい」
ユリウスは続ける。
「時間干渉は継続しています」
レオンハルトが腕を組む。
「2回は講堂まで行けた」
ユリウスの目がわずかに細くなる。
「状況を整理しましょう。
最初から、何が違うのか話してください。」
クラリスが説明する。
「門をくぐったあと、
私たちはすぐにお友達の令嬢に囲まれました」
エレナが頷く。
「殿下とクラリス様を囲んだんです」
ミレイユも続ける。
「そのまま講堂まで歩きました」
ユリウスはレオンハルトを見る。
「殿下はどう動きましたか」
レオンハルトが答える。
「令嬢の後ろにいた」
ユリウスが付け足す。
「後ろには護衛騎士達がいる
つまり、お二人は取り囲まれて周囲には見えにくかった」
ユリウスは小さく頷いた。
「なるほど」
クラリスが続ける。
「講堂に入って、
護衛騎士達と別れて、
席に座りました」
レオンハルトが言う。
「そのあと、
お前と話した」
ユリウスは頷く。
「ええ」
「その直後に巻き戻りました」
しばらく沈黙が流れる。
やがてユリウスが言った。
「つまり、
門から講堂までの間、
今までとは行動が違った」
クラリスは頷く。
「はい」
ユリウスは静かに続けた。
「そして、その結果、
時間は講堂まで続いた」
レオンハルトが言う。
「原因は何だ」
ユリウスは首を振った。
「まだ分かりません」
そして言う。
「しかし、何かを確認された瞬間、
時間が巻き戻されている可能性が高い」
クラリスが小さく言った。
「……何かを」
ユリウスは頷く。
「おそらく、誰かを見つけた瞬間です」
レオンハルトが笑う。
「俺か」
ユリウスが言う。
「それとも、
クラリス様かもしれません」
その場が静かになった。
ユリウスは続ける。
「まだ断定はできません
ですが
条件は確実に存在します」
そのときだった。
少し離れた場所で。
ピンク色の髪の少女が、じっとこちらを見ていた。




