第五話 講堂
王立アルカディア魔導学院の講堂は、すでに多くの新入生で埋まっていた。
高い天井。
長く並ぶ木製の椅子。
前方には、入学式のための壇上が設けられている。
貴族の生徒と庶民の生徒は、自然と席が分かれていた。
クラリス・ヴァレンシュタインは、中央付近の席に座っている。
その隣には。
レオンハルト・アルヴェリア。
第二王子だ。
周囲の令嬢たちは遠慮して、少し距離を空けている。
護衛騎士達は講堂の入り口で別れ、不審人物の侵入に備えている。
そのおかげで、二人は自然と並ぶ形になっていた。
レオンハルトが小さく言う。
「やっと座れたな」
クラリスは静かに頷く。
「人が多いですね」
入学式の講堂は、思った以上に混雑していた。
周囲では新入生たちが緊張した様子で話している。
しかし。
クラリスは少しだけ首を傾げた。
……おかしい。
レオンハルトが気づく。
「どうした」
クラリスは少し迷ってから言った。
「殿下」
「何だ」
「変なことを言うようですが」
レオンハルトは少し笑う。
「構わない」
クラリスは小さく息を吐いた。
「講堂に入るまでに
何回も門をくぐったような気がします」
レオンハルトは一瞬、黙った。
「……門を?」
「はい」
クラリスは静かに頷く。
「同じ道を
同じ会話を
何度も繰り返しているような……」
そこまで言って、クラリスは困ったように笑う。
「おかしいですね
入学式は今日が初めてなのに」
レオンハルトは少し考え込む。
そして静かに言った。
「……いや」
クラリスが彼を見る。
レオンハルトは続けた。
「俺も似たようなことを思った」
クラリスは目を瞬く。
「殿下もですか?」
レオンハルトは頷く。
「門の前、
お前との会話
同じことを前にも言った気がする」
クラリスは驚いた。
自分だけではないのか。
そのとき。
後ろの席から声がした。
「それは興味深いですね」
振り向くと、銀髪の少年が座っていた。
ユリウス・フェルンベルク。
魔導科の首席入学として有名な学生だ。
ユリウスは静かな目で二人を見ていた。
「今の話ですが
推論があります。」
レオンハルトが言う。
「どういう」
ユリウスは少し間を開けてから答えた。
「時間の異常です」
クラリスは首を傾げる。
「時間の……異常?」
ユリウスは頷く。
「普通ならあり得ません」
「しかし」
少し間を置いて言った。
「この学院には
強い時間干渉の痕跡があります」
レオンハルトは眉をひそめる。
「時間魔法か?」
ユリウスは静かに首を振った。
「いいえ」
そして言った。
「魔法ではありません」
クラリスが尋ねる。
「では何ですか?」
ユリウスは講堂の天井を見上げた。
「まるで」
少し間を置く。
「この一日が
何度も巻き戻されているようです」
クラリスは思わず黙った。
そのとき。
講堂の入り口付近で、ピンク色の髪の少女が立っていた。
リリア・フェアライト。
彼女はレオンハルトを見つめている。
MODウィンドウを開く。
ようやく。
MODが開けるぐらいレオンハルトの姿が見えた。
リリアは小さく呟く。
「……あ」
ステータスを確認する。
レオンハルト・アルヴェリア
好感度
クラリス:最高
リリアはため息をついた。
「また外れか」
リリアはMODウィンドウのリセットボタンを押す。
その瞬間。
世界が白く染まった。
よかったら感想をください。




