第四話 取り巻き
王立アルカディア魔導学院の門をくぐった瞬間だった。
「クラリス様!」
明るい声が響いた。
振り向くと、三人の令嬢が駆け寄ってくる。
エレナ・ローゼンベルク。
リディア・クラウゼン。
ミレイユ・フォン・アルタ。
幼い頃からクラリスの周囲にいる、気心の知れた令嬢たちだ。
エレナが嬉しそうに言った。
「やっぱりクラリス様でした!」
ミレイユも笑顔になる。
「お会いできてよかったです!」
リディアは落ち着いた様子で軽く礼をした。
「入学おめでとうございます」
クラリスは微笑む。
「皆さんもおめでとうございます」
三人の令嬢は自然にクラリスの周囲に立った。
ちょうど囲むような形になる。
そのときだった。
エレナがふと自信なさげに話しかける。
「……あの?」
ミレイユも不思議そうに周囲を見回す。
「どうしました?」
クラリスが尋ねる。
エレナは少し困ったように笑った。
「いえ……」
「なんだか変な感じがして」
リディアが静かに続ける。
「既視感があります」
クラリスは思わず彼女を見る。
「既視感?」
リディアは頷いた。
「この場面を」
「すでに経験しているような気がします」
エレナがすぐに言った。
「そう、それ!」
「私もそれ思った!」
ミレイユも小さく手を挙げる。
「私もです……」
三人とも同じ違和感を感じているらしい。
クラリスは少し驚いた。
自分だけではなかったのか。
「……実は」
クラリスは小さく言う。
「私も同じことを思っていました」
三人の令嬢が顔を見合わせる。
エレナが笑った。
「変ですね」
「入学式で緊張してるだけかもしれません」
ミレイユも頷いた。
「そうですね」
そのとき。
「クラリス」
後ろから声がした。
レオンハルトだった。
第二王子がこちらへ歩いてくる。
そして、そのまま自然と令嬢たちの中に取り囲まれた。
エレナとミレイユが礼をする。
「おはようございます、殿下」
レオンハルトは軽く頷いた。
「おはよう」
クラリスは少しだけ前に出る。
「おはようございます、殿下」
レオンハルトはいつものように、当然のようにクラリスの手を取った。
三人の令嬢たちはほほえましそうに二人を見る。
エレナが笑う。
「殿下、入学式が始まりますよ」
ミレイユも言う。
「人が増えてきました」
レオンハルトは少し残念そうな顔をした。
「そうだな」
クラリスは思わず微笑む。
その様子を。
少し離れた場所から、ピンク色の髪の少女が見ていた。
リリア・フェアライト。
彼女はレオンハルトを見つめる。
MODウィンドウ。
レオンハルトのステータスを確認しようとする。
しかし。
「……あれ?」
王子の姿がよく見えない。
令嬢たちに囲まれている。
ステータス確認ができない。
リリアは少し考えた。
「まあいいか」
どうせ入学式の前には見える。
それまで待てばいい。
リリアは肩をすくめた。
「ちょっと時間できたな」
このときはまだクラリスは知らなかった。
入学式当日が繰り返されていることを。
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