第十七話 終わったループ
魔導対策官が静かに手を掲げた。
次の瞬間、光の魔法陣がリリアの足元に広がる。
「対象拘束」
淡々とした声が響く。
リリアの両腕が光に包まれた。
そして。
手首に光の枷が現れる。
魔法封印だ。
リリアは目を見開いた。
「ふざけないで!」
魔導対策官を睨みつける。
「NPCのくせに!」
声を張り上げる。
「なんで追ってこれるのよ!」
対策官は何も答えない。
リリアはさらに叫んだ。
「私は今のループでは始めたばかりの新規プレイヤーのはずよ!」
そして空を見上げる。
「運営!」
「聞こえているんでしょう!?」
広場が静まり返る。
だが。
返事はない。
代わりに。
空中に淡い光が浮かび上がった。
文字。
それはリリアにしか見えない。
システムメッセージだった。
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運営からのお知らせ
お疲れ様です、お嬢様。
本日『1.636.0』にアップデートしました。
【問題修復】
・不正MOD対策
・時間干渉バグ修正
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リリアの顔から血の気が引いた。
「……は?」
その瞬間。
リリアの手首の枷が強く光る。
魔法封印。
完全拘束だった。
広場の向こうで。
クラリスは静かにレオンハルトを見つめた。
レオンハルトも静かに視線を返す。
今はもう。
肉壁はない。
周囲には普通の学生たちの流れがある。
そして。
時間は――
巻き戻らない。
レオンハルトが小さく笑った。
クラリスも微笑む。
次の瞬間。
二人は同時に抱き合った。
「終わりましたね」
クラリスが小さく言う。
レオンハルトは頷いた。
「ようやくだ」
周囲でも歓声が上がる。
エレナたち取り巻きの令嬢は抱き合って喜んでいた。
「本当に終わったんですね!」
「もう戻らない!」
ユリウスは腕を組んで静かに言った。
「犯人を特定できなかったのは残念ですが」
そして少し満足そうに続ける。
「ターゲットの特定
時間干渉の推理
どちらも正しかった」
ガルドは大きく笑った。
「やったな!」
騎士科の学友たちと握手を交わす。
「いい壁だったぞ!」
「お前もな!」
一方そのころ。
学院の別の場所で。
セシル・ラウレンツは友人からの情報を受け取っていた。
「捕まったのか」
セシルは頷く。
「そうか」
そしてすぐに歩き出す。
向かった先は。
王太子アレクシスのもとだった。
「殿下」
アレクシスが振り向く。
セシルは報告する。
「問題の人物が拘束されたそうです」
アレクシスは静かに頷いた。
「そうか」
しかし。
王太子の表情はわずかに険しかった。
アレクシスは小さく呟いた。
「だが」
セシルが聞く。
「何か?」
アレクシスは遠くを見る。
「動機が分からない」
静かに言う。
「なぜ、入学初日を繰り返していたのか」
答えは誰にも分からなかった。
ただ一つだけ。
確かなことがある。
王立アルカディア魔導学院。
時間は。
ようやく前に進み始めていた。




