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第十四話 視線

王立アルカディア魔導学院の門。

レオンハルトの周囲には、騎士科の学生たちが立っていた。

ガルドを中心に、数人の学生が並ぶ。

完全な人の壁。

いわゆる――肉壁だった。

当然、周囲はざわつく。

「何あれ」

「騎士科?」

「殿下?」

新入生たちは足を止めて見ていた。

珍しい光景だからだ。

王族を囲む騎士科の学生たち。

まるで警護のような陣形。

興味を持つ者は多かった。

しばらく見て。

飽きる。

そして去る。

普通はそうだった。

その中に。

ピンク色の髪の少女が立っていた。

リリア・フェアライト。

彼女もまた、その光景を見ていた。

「……なにこれ」

少し身を乗り出す。

肉壁の向こう。

見えない。

レオンハルトの姿が。

「隠してる?」

リリアは小さく笑った。

考えられる理由は一つだ。

「クラリスと喧嘩?」

思わずわくわくする。

もしそうなら。

それは。

1000分の1の条件に近い。

婚約者と不仲。

それが王子ルートの分岐条件。

リリアはさらに身を乗り出した。

「ちょっと見せてよ」

肉壁の隙間から覗こうとする。

その様子を。

一人の学生が見ていた。

セシルの友人だ。

彼は眉をひそめる。

……あれ?

どこかで見た顔だ。

思い出す。

前の巻き戻り。

あのとき。

新入生のはずなのに。

在校生の席の近くまで来ていた少女。

ピンク色の髪。

同じ顔。

同じ少女。

学生は静かに観察する。

周囲の学生は。

興味を持つ。

少し見る。

そして離れる。

しかし。

その少女だけは違った。

ずっと。

熱心に。

肉壁の向こうを覗こうとしている。

学生は小さく呟いた。

「……怪しいな」

そしてすぐに歩き出す。

向かう先は一人。

セシル・ラウレンツ。

学生は小声で言った。

「セシル」

セシルが振り向く。

「何だ」

学生は指で示した。

「あのピンク髪」

セシルは視線を向ける。

リリアが覗き込んでいる。

学生は続けた。

「前の巻き戻り

在校生の席の近くまで来てた」

セシルの目が細くなる。

学生は言う。

「しかも

あいつだけだ

ずっと覗こうとしてる」

セシルは静かに言った。

「なるほど」

そして頷く。

「十分だ」

その情報はすぐに伝達された。

セシルから。

王太子へ。

講堂の奥で。

アレクシス・アルヴェリアはその報告を聞いていた。

「ピンク髪の少女」

対策官が頷く。

「はい

新入生です」

アレクシスは静かに言った。

「監視を続けろ」

対策官は頭を下げる。

「承知しました」



そのとき。

門の近くで。

リリアはまだ肉壁を覗き込んでいた。

「見えないなあ」

少し楽しそうに呟く。

「絶対なにかある」

レオンハルトとクラリス。

もし二人が喧嘩しているなら。

それは。

最高のイベントだ。

リリアは少し笑った。

「早く見せてよ」



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