●act04: 「魔獣」
街道を進むニッキー一行。
宿場町ハトバまで数マイルもない。
だがケリーは後ろからの気配を感じた。
悪意に満ちた人の気配。
盗賊で間違いないだろう。
そしてその気配は後ろからだけではなかった。
ケリーが呟く。
「あとすこしなのに、、、」
後ろから銃声が聞こえた。
数人の男が馬に乗り駆けてくる。
ニッキーが嘆く。
「見つかったわね。ハトバまであとすこしなのに、、、」
馬車も駆け出す。
ケリー、デレクがしんがりを受け持つ。
ケリーは呪文を唱え、光、風の術で盗賊たちの馬を驚かせ怯ます。
盗賊たちを近づけなければ乗り切ることができる。
しかし、前方からも大勢の気配がある。
正面突破できるか?
やがて前の道からも数十人の盗賊たちがが駆けてくるのが見えてきた。
挟み撃ちされてしまう。
その手前に分かれ道があった。
ニッキーが馬使いのローレルに指示をだす。
「そっちに逃げて!」
ケリーが叫ぶ。
「だめだ!道から外れちゃだめだ!!」
だが馬車は細い道に駆け込む。
それに続く、ガゼル、ロッコ、ケリー。
盗賊一党は合流してニッキーたちを追う。
盗賊の親分が叫ぶ。
「女とお宝は傷つけるな!金にならなくなる!」
シルビアは馬車の窓から身を乗り出し、ガゼルに叫んだ。
「ガゼル!逃げなさい!
貴方が生き残ればグローリーは無くならないわ!!」
だがガゼルは応じない。
「いやです!
僕は姉さんたちを守る!!」
数十人の盗賊たちが馬車を追う。
道が狭いため周りの木々の枝にぶつかりへし折りながら駆けていく。
細い道を駆ける馬車。
しかし、その先は切り立った岩壁があり、道がなくなっていた。
「行き止まり?!まずい!!」
ニッキーは盗賊の策略に嵌まってしまったことを悟る。
岩壁前で止まる馬車。
逃げ道はない。
大勢の盗賊がニッキーたちを囲む。
ロッコが呟く。
「多勢に無勢だな」
一気に襲われたら敵わないだろう。
盗賊の親分が前に出る。
「おとなしくすれば命までは取らねぇ。降参しろ」
馬車から降りるシルビア。
盗賊たちの前に立つ。
「持ち物はすべて貴方たちに渡します。
だから、人は許して」
毅然とした態度。
「女もだ」
「、、、私がついていきます。
だから、他の人達に手を出さないで」
己の犠牲だけで皆が救われるのあれば、ガゼルが無事であればよい。
窮地に陥っても心は屈していない。
「姉さんに近づくな!
許さないぞ!!」
シルビアの前に立つライフルを持ったガゼル。
しかし、銃口は盗賊に向けておらず、棒のようにライフルを持っていた。
ガゼルは銃を撃った経験はない。
「ガゼル、、、」
自分を庇ってくれるガゼル。
いつも自分の言うこと、願いを叶えてくれる愛しい弟。
この子だけは守りたい。
シルビアは動揺した。
盗賊の親分がガゼルを見下し、
「威勢がいい坊主だな。
ライフルの使い方わかってんのかぁ?
人を殴る棒じゃねえぞ」
ガゼルが怒鳴る。
「うるさい!」
「じゃ、坊主から死んでもらうか」
盗賊の親分は腰の銃を抜く。
「やめて!」
シルビアはガゼルを抱きしめ庇う。
ロッコは背の刀に手をかける。
「ニッキー、いいな?」
ニッキーは苦渋の選択を迫られる。
「しかたがないわ、、、」
これだけ大勢の盗賊との乱戦になれば、シルビア、ガゼルたちを護ることは難しい。
自分の命さえも、、、
だがこのまま見過ごすこともできない。
突然、数人の盗賊が投げ飛ばされ宙を飛んだ。
盗賊たちが悲鳴を上げる。
「ひいい!魔獣だ!!」
魔獣が盗賊たちを捕まえ次々と放り投げていく。
盗賊の親分はその光景に驚く。
「なにぃ?!奴らなんで今になって?!」
数頭の魔獣が盗賊たちを蹴散らせていく。
ロッコも驚く。
「タイガーウォーリア?!面倒なのと出くわしたぜ」
タイガーウォーリア
虎の顔を持つ魔獣。
ヒトよりもふた回りほど大きい屈強な身体を持ち、片手で盗賊を持ち上げブン投げている。
ガゼル、シルビアに襲いかかる魔獣。
悲鳴をあげるシルビア。
だがデレクがそれを防ぐ。
デレクの腕力もタイガーウォーリアに負けない。
組み合ったまま睨みあう。
ニッキーがライフルで魔獣を狙う。
ケリーが叫ぶ。
「ダメだ!魔獣を撃つな!!」
「え?!」
ニッキーはライフルの照星から視線を外す。
ニッキーに気を取られ隙ができたケリーに魔獣が襲いかかる。
「しまった!」
だがロッコが間に入る。
魔獣に殴られるロッコ。
しかし怯まず殴り返す。
ファイティングポーズをとるロッコ。
「レディーに乱暴はよしな」
盗賊たちは我先にと逃げ出す。
残る馬車とニッキーたち。
魔獣に囲まれる。
ロッコが呟く。
「一難去ってまた一難。かえってたちが悪いぜ」
ロッコ、刀を抜こうとする。
しかし、ニッキーがそれを制する。
「ロッコ、待って!」
「チッ、なぜだ?!」
皆と魔獣の間に立つケリー。
魔獣に向かってゆっくり歩く。
右手でナイフを持ち、左腕を前に出し、その自分の左腕にナイフを刺した。
苦痛で歪むケリーの表情。
それを見たニッキーが叫ぶ。
「ケリー!」
ケリーはそのナイフをタイガーウォーリアに投げた。
タイガーウォーリアはナイフを受け取る。
ケリーはそのタイガーウォーリアに近づき、その前で跪き頭を下げ膝をついた。
左腕の傷口から血が流れ地面にたれる。
タイガーウォーリアはナイフを逆手に持ち勢いよく振り下ろす。
ケリーが刺されるとおもいニッキーが悲鳴をあげる。
「ケリー!!!」
だが、タイガーウォーリアは
ケリーの前の地面にナイフを突き刺した。
タイガーウォーリア達は背を向け、森のほうに立ち去って行った。
ケリーに駆け寄るニッキー。
「ケリー、なにしたの?」
ケリーは刺した腕を押さえ痛みを堪えながら言った。
「彼らに詫びただけだ。
彼らはあたしたちを襲いにきたんじゃない。
警告にきただけだ。
テリトリーを荒らすなと」
「ケリー、貴女、いったい、、、」
魔獣が去ったあと、皆、再出発の準備をはじめた。
ケリーの傷はニッキーが手当てをした。
手際よく包帯を巻き出血を押さえる。
ニッキーは手当てしながらケリーに強い口調で言う。
「貴女、自分の身体はもっと大事にしなさい。
もうこんなことしちゃダメよ」
ケリーはまるで母親から叱られているように感じ、俯いてしまう。
手当てを終え、ニッキーはケリーに、
「しばらくは左手でモノを持ったりしたらダメよ。傷が開いちゃうから」
ニッキーはそう言うと、シルビアの馬車の積み荷直しを手伝うため馬車に向かう。
ケリーはロッコのところに行く。
ロッコは馬鞍をいったん弛ませ馬たちを休ませていた。
ケリーはロッコに声をかける。
「ロッコ、さっきはありがとう」
「レディーをお護りするのが紳士の務めだからね。
それより腕のほうは大丈夫かい」
ケリーの左腕に巻かれた包帯。
傷口の部分は血が滲んでいる。
ケリーはその腕を見ながら、
「ああ、たいしたことはない」
ロッコは立ち上がり、ケリーの肩に手をおく。
そしてケリーの目をまっすぐに見て、
「さっきは君のおかげで助かった。
でも理由はどうであれ、自分の身体を傷つけるようなことはやめてくれ。
レディーにそんなことはしてほしくない。
ケリー、オレからのお願いだ」
ロッコの真摯な言葉にケリーは俯く。
ロッコもニッキーも自分を気遣ってくれている。
そう感じた。
「、、、わかった」
「これから仲良くしてくれるかい?」
「ああ、、、」
ロッコが右手を出すとケリーは握手をした。
そしてロッコはケリーを試すように、
「君は、オレになにか感じているのかい?その不思議な力で」
「、、、」
ケリーからの返事はない。
「なにを思っているかはわからないが、すくなくとも、突然襲ったりはしないぜ。いまのところはね」
「わかった、、、」
その返事から、やはり彼女は自分の秘密を見抜いているとロッコは確信する。
己の身に降りかかっている忌まわしい秘密に。
だがロッコはいつもの軽い口調で、
「まっ、ガゼルたちを抱えながらタイガーウォーリアと取っ組み合いはできなかったし、礼をいうのはこっちのほうだよ。
君は魔獣の友人は多いのかい?」
ケリーが応える。
「すこしだけ魔獣のことを知っているだけだ。
ニッキーのいうとおりほとんどの魔獣はよほどのことがない限り、人を襲ったりしない。
テリトリーを荒らされたり、殺されようとしない限り、、、。
魔獣も他の魔獣や獣を襲い殺すこともある。
でも、それは生きるのに必要なときだけだ。
盗賊たちも逃げれば魔獣が追って来ないことを知っていた。
だから魔獣を銃で撃たなかった。
もし魔獣を傷つけたら、その分の仕返しをされる。
同族で殺しあう、それは人だけだ」
「ふーん」
ケリーの魔獣を擁護するような言葉。
ケリーは魔獣を畏怖の対象ではなく、共に大地に生きる者、対等なモノとして見ている。
ロッコはそう理解した。
そしてもう一点、気になることがあった。
「君は年下の男性がお好みかい?」
「へっ?!」
思いも寄らない問いかけにケリーは素っ頓狂な声をあげる。
ロッコはからかうように、
「ガゼルを見る君の眼が気になってね」
ケリーの顔が見る見る赤くなっていく。
ケリーは俯き帽子で顔を隠した。
「そ、そんなことはない、、、」
どうやら図星のようである。
「ケリーはショタコンかぁ」
「な、なんだそれは?」
「ショタコンというのはだな、、、」
すると突然ロッコはニッキーに耳を思いっきり引っ張られた。
「いてててっ、、、」
「ロッコ、ケリー、もう行くわよ」
ニッキーはロッコをケリーから引き離す。
ロッコが自分以外の女性といることをニッキーは許さない。
ほどなく出発し、ニッキーたちは街道を進み、宿場町ハトバに着いた。
ここまでくれば盗賊に襲われる心配はない。
ハトバは保安官も居て治安も安定しているようだった。
ニッキーは保安官に盗賊の報告をし、盗賊の捜索・逮捕のため、軍の出動を要請した。
シルビアはニッキーに深々と頭を下げる。
「ニッキー様、大変お世話になりました。このご恩は忘れません」
「いえ、私は大したことはしていません。
礼をいうならケリーに。それにダイナフォレストのことも聞けるのでは?」
「いいえ、やめておきます。
もし、そうであったら、彼女も辛い思いをしているかもしているかもしれません。
そうであったとしても、それはたぶん彼女のせいではないでしょう」
「お気遣い、ご立派です」
「いえ、、、」
宿で夕食を一緒する一行。
またシルビアのおしゃべりの独壇場となる。
でもそのテーブルにはケリーだけいなかった。
ニッキーがロッコに尋ねる。
「ケリーは?」
「さあね、まあでも、たぶん相棒のところなんじゃないかい」
宿場町からすこし離れた荒野に一本だけ立つ木。
その木にもたれ根本に座るデレク。
ケリーを抱いていた。
ケリーは右手を左腕の傷に添えていた。
右の手のひらが光って傷に当てている。
やがて光が消え、ケリーは包帯を解いた。
ナイフで刺した傷が残ってないことを確認する。
ケリーは呟く。
「ロッコ、あいつ、何者なんだ?
あの感じはたぶん、、、」
ケリーは顔を上げデレクを見る。
「デレク、お前はわかるのか?」
その表情を読みとることはできなかった。
デレクなら見抜いているはず。
でもデレクは答えてくれない。
「、、、お前はいつもそうだ。
肝心なことは教えてくれない、、、」
デレクに抱かれ眠るケリー。
つづく
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■次回予告
ニッキー:「あの娘、不思議ね」
ロッコ:「お、やっとわかってくれたかい」
ニッキー:「スタイルいいんだから、もっとかわいい服を着ればいいと思わない?ジーンズよりスカートが似合うとおもうわ。スリムだし」
ロッコ:「またそこか、、、」
ニッキー:「マジメに聞いてよ!」
ロッコ:「最近、君のアンテナずれすぎじゃないか?」
ニッキー:「なんですってーっ!」
ロッコ:「イタタタタ、、、」
次回
アフロディアックスウェスト
「紅きチカラ」
ニッキー:「っで、ショタコンってなんなの?」
ロッコ:「もういいよぉ、、、」
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