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アフロディアックスウェスト - 第02話「魔獣」  作者: アフロディアックス


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2/3

●act02: 「野営」


ニッキーたちは林の奥まで入り、小さいながらも平らな場所を見つける。

「この辺がいいかしら」


「ま、そうだな。だが、ここで襲われたら逃げ場はないな」

「そのときはそのときよ」

「さすがハートお嬢様、度胸が据わっていらっしゃる。あとは魔獣が出てこないのを祈るだけだな」


森や林の中をテリトリー(縄張り)にしている魔獣も多い。


「ここが魔獣のテリトリーなら、盗賊は入ってこないわ。わたしたちにはもう逃げ場がないのよ。もし、魔獣が出てきたら貴方が話し合って頂戴」


「それは御免蒙るね」


魔獣のテリトリーに入ったとしてもそれを荒らさない限り魔獣は襲ってこないはず。

もしここが魔獣のテリトリーだとしたら、その魔獣が寛容であることをニッキーは祈った。


林の中を探索していたケリーが戻ってきた。

「ニッキー、向こうに池がある」


「よかった。ガゼル、馬を休めさせられそうよ」


ガゼルが応える。

「はい。ローレル、馬を放して連れていって」


「はい、坊ちゃん」

馬使いはこの少年の家の使用人なのだろう。

手際よく馬を馬車から離し連れていく。


ニッキーもロッコに自分たちの馬も池に連れて行くよう指示した。

「エリザベスとルドルフも連れて行ってあげて」


「はいはい、ハートお嬢様」

ルドルフはニッキーが乗る白い芦毛の雄馬。

エリザベスはロッコが乗る栗毛の雌馬である。

ロッコも二頭の荷物を降ろし、同じように池に連れて行った。



馬車の扉が開き、若い女性が降りてきた。

ドレスを着ており、気品を感じられる仕草。

その顔立ちから少年ガゼルと親族・姉弟なのだろうというのがわかる。



女性はニッキーの前に立ち、ドレスの裾を持ちお辞儀をする。


「ご挨拶が遅れて申し訳ありません。わたくしはシルビア グローリーと申します。

この度は危ないところを救っていただき感謝いたします」


「いえ、ご無事でなによりです。私はニッキー、彼女はケリー。先程の男性はロッコといいます。

馬たちが戻ってくるころにはもう日が暮れてしまいますね。夜の移動は危険です。今日はここで野営いたしましょう。」


「貴女様のご提案に従います」


「火は焚かない方がいいわね」


ケリーが応える。

「たぶん大丈夫だろう。緩い峰を越えたから、来た方向からはここは見えていない。

それに近くに人の気配はない」


「それも貴女の不思議なチカラでわかること?」


「今夜はあたしとデレクが見張りをする」


ケリーは周りの気配も感ずることもできるらしい。

今は彼女の不思議なチカラに頼るしかない。

「そ、じゃ、早めに支度して明日に備えましょう」





日が沈みあたりは暗くなった。

今夜は月が昇っておらず月明かりもなく、暗闇がひろがる。







ケリー手のひらの上に光が灯る。

ゆっくり手を引くとその明かりは宙に浮いたままランタンのように周りを照らす。

「しばらくはこれでいいだろう」


驚くシルビア。


ケリーは立ち上がり、

「見張りをしてくる」


ニッキーが礼をいう。

「ありがと。手間をかけるわ」


ケリーが林の奥に行き闇夜に消えていく。


ケリーの後姿を見てシルビアは呟く。

「大地の理を司る三原種、、、」





ケリーが灯した明かりを皆で囲んでいた。

ニッキーが話す。

「ハトバまで行けば盗賊も追ってこないでしょう。今夜見つからなければ諦めてくれるかもしれない」


ロッコが口をはさむ。

「どうだろうなぁ、獲物に返り討ちにあってしかも逃げられている。盗賊の面子丸潰れだからなぁ。やつら血眼になって仕返しにくるぜ。イタタタ、、、。」

ニッキーはロッコの耳を引っ張った。

どうしてこの男は皆が不安がることをわざわざ言うのだろう。


「とにかく、明日は明るくなりはじめたらすぐ出発しましょう」


シルビアが不安げに、

「こんな森の奥に入って、魔獣に襲われないかしら」


ニッキーが応じた。

「そうですね。ここが彼らのテリトリーなら、出て来るかもしれません。でも彼らは、それを荒らさない限り襲ってはこないと聞きます。襲われないとは言い切れませんが、盗賊より紳士的なのかもしれません」

ニッキーは続ける。

「仕事の関係で、彼らのいくつかの部族と会ったことがあります。言葉は話しませんが彼らはわたしたちの言葉を理解できるようです。ですので、コミュニケーションはとれます。

たとえテリトリーに入ったとしても、荒らしたりしないかぎり理由もなく人を襲うのとはありません」


「お詳しいんですね」


「そんなことはありません」


するとまたロッコが、

「そうとはかぎらないぜ。奴らには奴らのルールがある。それを犯したヤツには容赦しない。

特に狼人(ワーウルフ)は、、、。

自分が気に入らなければ、子供だろうが女だろうが平気で食い殺す。

いてててっ。オイ、ニッキーやめろ、、、」


ニッキーはロッコの頬を引っ張った。

「ごめんなさいね。この人、人を怖がらすのが好きでこんなことばかりいいますの。ほんとにそうなら、もうとっくに出ていますわ。

大丈夫、明るくなったら盗賊に見つかる前に町に行きましょう」


ニッキー、ロッコを睨む。

ロッコ、とぼけるようにそっぽを向く。


するとシルビアが聞いてきた。

「ニッキーさん、あの、、、

先ほどロッコさんがニッキーさんをハートお嬢様って、、、」


「ええ、ハート財団の者です」


「え、ニッキー ハートって、ええっ!

あのハートお嬢様?!

失礼しました!」


「お嬢様だなんて、、、」


ニッキーはよけいなことを口走ったロッコの頬をまたツネった。おもいっきり。

「イテテテ、、、!」



ハート財団。

この国一番の大財閥である。

ニッキーはその一族であった。

ニッキー ハート

この国でその名を知らぬ者はいないだろう。

財団の次期党首と噂されている女性。


「わたしもいまはあなた方と同じ普通の旅行者です。

どうぞ、お気にせず、ニッキーと呼んでください」


しかしニッキーの物腰は低く柔らかいものだった。

大財閥の絶対権力者。

力強いイメージからほど遠い印象にシルビアは少し戸惑う。

「はあ、、、ロッコさんはニッキーさんの旦那様ですか?」


ロッコが応える。

「私は、ただの付き人ですよ。」


「そうですか。ニッキーさんはどちらに向かわれているのですか?」


「グランデンのほうに、途中事業視察をしながら向かっています」


「私たちはジャージから来ました。カロナに向かっています」


「ではハトバまで一緒ですね。よろしければそこまでお供します」


「ありがとうございます。馬車の長旅は初めてでして。盗賊にも襲われるなんて、、、外はほんとに怖いんですね」


ガゼルが、

「僕たち、生まれてからジャージを出たことがなかったんです」


ニッキーが応える。

「ジャージは仕事で行ったことがあります。暖かで過ごしやすいところですよね、、、」


すると突然シルビアは笑顔で声を大きくした。

「ご存じですか!

ええ、四季を通じて温暖で自然が豊か。野菜や果物もよく育ちます。他の地方のことはよくわかりませんが、私はジャージが一番のところだと思っています。いまの時期だとキャベツや玉ねぎが柔らかく美味しいですよ。玉ねぎなんかはそのままでも食べれます。甘いですよ。じゃがいももいいです。あ、アスパラガスという野菜をご存じですか?、、、」


よほど故郷に愛着があるのだろう。先ほどまでのお淑やかな雰囲気から一転し話好きの少女のようになった。

ニッキーも応じ会話を楽しんだ。

「ええ、ジャージの特産ですよね。ジャージの農作物はわが社でも取引させていただいてます。香りも品質も良く、ワシンでも人気ですよ、、、」












夜も深まり、皆、明日に備えて早めの就寝となった。


シルビア、ガゼル、馬使いのローレルは各々毛布に包まり、ニッキーとロッコは皆とすこし離れた木の下にいた。


ロッコが木の根元に座り込み、ニッキーは抱かれるようにロッコの上にいた。



ニッキーの耳元でロッコが囁く。

「ニッキー」

ロッコがニッキーを抱きしめてくる。


「ダーメッ」


「つれないなぁ」


「人がいるじゃない。今夜は月が出てなくて助かったわ」


「そんなこと言ってると食べちゃうぞ」


「貴方になら食べられてもいいかな」


「はあ、、、しかたがない。なら、せめて熱いベーゼだけでも」


「もう」


ロッコのほうを向き口づけするニッキー。

恋人同士の熱い口づけ。息遣い。




ガゼルはニッキー、ロッコに近い場所に横になっていた。

眠れずにいると二人の声がわずかに聞こえてくる。

使用人と主人の関係と言っていたが、あきらかに恋人同士の会話である。

ふたりの声を聞いて顔を赤くするガゼル。

思春期の若き少年には刺激が強かった。




口づけをし続け愛撫してくるロッコ。


ニッキーが口づけをやめようとロッコの胸を押すが、首の後ろを捕まれ唇を離すことができない。

息苦しくなってくる。

でもそれは口を塞がれいるからだけではない。

ロッコの愛撫にニッキーの女の部分がそれに応じようとしている。


まずい!流される!

ニッキーの理性がロッコに抗う。

ロッコの顎を持ち、唇をなんとか引き離した。


「もういいでしょ!」

すこし荒い息、赤い顔。鼓動も早くなっている。


そんなニッキーをロッコは見透かすように、

「物足りないなぁ、、、」


「だから、人がいるじゃない」


「人がいなければいいんだ」


「バ、バカ!」


「ニッキー、愛しているよ」

ロッコはまたニッキーを抱きしめその髪に顔を埋める。

力強く、でも優しい抱擁。


「ホント、イジワル、、、」





しばらくするとニッキーの声が聞こえる。

「愛しているわ、、、ロッコ、、、」



ガゼルはずっと聞き耳を立てていたが、そのあとふたりの声が聞こえなくなった。

話の流れから行為に至っているのか。

でも声や息遣いも、物音も聞こえてこない。

それほど離れていいないはず。身をよじるだけでもその音が聞こえるはず。

だが、まったくふたりの声、音が聞こえてこなくなった。


月明かりがない、なにも見えない暗闇。


ふたりはどうしているのか。

悶々とするガゼル。

若き少年の眠れる夜となる。










皆から離れたところでケリーは見張りのため木の根元に座っていた。

今夜は月明りなく深い闇が広がる。

なにも見えない。


己のチカラをつかい周りの気配を感じとっていた。

虫の足音。羽根の音。

木々の靡き

風の囁き。



そして、あるものを感じた。



、、、この気配は、、、、。

人じゃない、、、。








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