●act01: 「盗賊」
荒野に一本の街道。
馬二頭と馬人一頭が各々人を乗せて歩いていた。
白い芦毛の馬に乗るニッキー。
栗毛の馬に乗るロッコ。
黒い馬人デレクに乗るケリー。
ニッキーがケリーに尋ねる。
「ケリー、グランデンまで何しに行くの?」
「、、、」
ケリーから返事はなかった。
先日の牧場の一件でニッキーとケリーは旅を共にするようになったが、ケリーとの会話は必要な事以外ほとんどなかった。
人見知りなのか、警戒されているのか。
寡黙な印象。
まあ、ギャンブルの借りで旅を同行されているということになっているのだから、ケリーにとっては好ましいことではなかろう。
と、ニッキーは思った。
しかし、嫌われているようではないようだ
牧場で見た、子どもたちと楽しげに話していたケリー。
そのときみたいに気さくに話ができれば、、、
このままではつまらない。
せっかく同性の同行者ができたのである。
ここは相手にも利する条件を出すべきだろう。
そう考えニッキーは続ける。
「詮索しているわけじゃないの。ただ急ぎかどうか聞きたかっただけ。
わたしたち、途中の町や村でわたしたちの会社の仕事がちゃんと出来ているか、見て廻っているの。
もし、急ぎでなく付き合ってくれるなら、グランデンまで宿泊や食事の費用とかわたしが持つわ。
どうかしら?」
しばらく間がありケリーが返事をする。
「、、、わかった、、、付き合う」
ニッキーは笑顔でかえす。
「そ、じゃ、よろしくね」
どうやらこれからの旅路の主導はこちらが持てそうだ。
そのうち打ち解けることもできるだろう。
するとロッコがニッキーに近づき、
「よろしくーっ」
っと笑顔で握手を求めるが、ケリーはツツツーとロッコから離れる。
「こりゃ、嫌われたかな?」
おどけるロッコ。
話の切り口をつくろうとしているのに邪魔するロッコをニッキーは睨んだ。
そんなニッキーを気にもせずロッコはニッキーに話しかけてくる。
「次はどこだい?」
ニッキーはため息をつき、
「ガルフよ、まだ先だけど、予定よりは早く着きそうね。
まずはハトバを目指しましょう。
この調子なら陽が沈む頃に着くと思うわ」
「ガルフか、あそこは行きたくないなぁ。臭いし、、、。」
いつものロッコの返事。
必ずなにか一言文句をいう。
「遊びで行くんじゃないのよ。
いま、ウチが一番力を入れているところよ。
あそこが成功すれば、近代産業のイニシアチブをとれるわ。
ハートはもっと飛躍できる」
「はいはい、、、」
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■タイトル
アフロディアックス・ウェスト
第二話 「魔獣」
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三人と三頭で道を進んでいると、後ろから猛然と馬車が駆けて来た。
二頭立ての屋根付きの馬車。
そしてケリーたちを追い越す。
車室の中の女性の不安な顔。
ライフルを持つ少年。
御者台の馬使いの必死な表情。
ただ事ではない様子。
その馬車を馬に乗った男たち数人が追いかける。
男たちは、銃を手に持っていた。
ニッキーが不振に思い、
「なにあれ?」
ケリーが叫ぶ。
「デレク!」
デレクが猛然と駆け出し馬車を追う。
「ちょっとケリー!」
ニッキーも追いかける。
「おい、またかよ!もう、厄介事にかかわるなよ、、、」
ロッコはあきれ顔で二人を追いかける。
馬車を追う男が叫ぶ。
「おら!止まれ!止まらねえと撃つぞ!」
馬車は止まらない。
止まれば奪われる。ことによっては命までも。
止まるはずがない。
男は空に向けて銃を数発撃った。
だが馬車は駆け続ける。
男たちは馬車に向かって撃ちだした。
デレクに乗ったケリーが男たちに追いつき叫ぶ。
「やめろ!」
「なんだてめえ?!邪魔すんじゃねえ!」
思いがけない邪魔者に、男はケリーに向かって銃を撃ちだす。
しかしデレクが巧みに避けて男の馬に体当たり。
馬が怯み鳴き声を上げ、乗っていた男が投げ出され落馬した。
ほかの男たちも馬の足を止めケリーに銃を向ける。
ケリーが呪文を唱えた。
「、、、フローイグニス」
ペンダントが紅く輝く。
ケリーの周りが光りだした。
強い光で男たちは目が眩み怯む。
ニッキーがライフルを撃ち男たちが手に持つ銃を弾いていく。
「テメーッ!!」
男の一人が腰の銃を抜きニッキーに向けるがその手をロッコが鷲掴みし、馬から引きづり降ろす。
「ほら、やめろよ。」
「なんだ、てめえら!」
ニッキーはライフルを構え男たちを威嚇しながら、
「あなたたち盗賊ね。命まではとらないわ。もうこんなことやめなさい。」
落馬した男が足元の銃を拾おうとするがニッキーはその銃をライフルで撃って弾く。
「銃は置いていきなさい」
「覚えてやがれ!」
憎々しげにニッキーを睨みながら、捨て台詞を言って男たち逃げ出した。
いつもの調子でロッコがニッキーに聞く。
「武官に突きださないのかい?」
「ここから町は遠い。町に保安官が居たら報告だけするわ」
馬車は離れたところで停まっていた。
馬車の扉が開き少年が降りてくる。
その少年を見て、ケリー驚く。
そんなケリーを見てニッキーが、
「どうしたの?」
ケリーは帽子で顔を隠し、
「なんでもない、、、」
少年はニッキーたちのところに駆けてきた。
「僕はガゼル グローリーといいます。助けていただきありがとうございます」
ニッキーが応じる。
「わたしはニッキー。大丈夫?怪我人はいない?」
「ええ、おかげさまで皆、無事です。あのまま逃げていたら馬も持たなかったでしょう。助かりました。
前の宿場で、この辺りを縄張りにしている盗賊がいると聞いてはいましたが、ほんとに襲われるとは、、、」
馬車の荷台には鞄や荷物が多く乗っていた。
それを見てロッコは呟く。
「これじゃあ、襲ってくれと言ってるようなもんだ」
ニッキーは盗賊たちが仲間を呼び仕返しにくることを懸念した。
「ここから、早く離れたほうがいいわね」
しかし、ガゼルは、
「ですが、馬が疲れてしまっていて、、、」
重い馬車を引いて走らされていたのだから当然だろう。
無理はさせられない。
「なら向こうの林に入りましょう。気休めだけど、隠れることはできるとおもうわ」
馬車とニッキー一行は街道を離れ、林の奥に入っていった。
木の枝を折り、それを引き摺り、馬の足跡を消しながら。




