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人生はちっぽけな彗星

作者: 熊野 猫

「お前も彗星にしてやろうか」彼ははっきりとそういった。

それはある日の昼休み、教室から始まった。

その日は朝から雲一つなく窓からは暖かい光が差し込んでいた。

校庭では活発な人たちがサッカーやバレーボールなど各々の好きな遊びをしていた。

しかし、私には関係ないことだろう。

そんな時ただただ時間を無駄に過ごしていた私に、彼はご機嫌な様子で私に話しかけてきた。

彼の頭に新たなる存在が発見されたらしい。

その日はその噂で持ちきりだった。

それからの日々彼は幸せに過ごし日々の観察記録をクラス中いや学年中に話していた。

その時の彼は毎日が幸せで人生に希望を持っていたと思う。

私はそのような彼がうらやましくもあった。


しかし、そんな幸せの時間は短くすぐに消え去ってしまうものだった。

彼がある昼休みにうとうととまどろんでいた時彼の宝物は彼に嫉妬した者によってけされてしまった。

彼は人生のすべてに絶望しただろう。

この世のすべてを恨んだであろう。

彼は人生すべての希望を失ってしまったのだ。

それは彼が生きる意味すべてを失ってしまったも同然である。

彼はもうかつての姿ではない。

それからの日々彼はだんだん変わってしまった。

鏡は見なくなりガラスなどの光を反射するようなものを嫌い、暗い生活を日々送っていた。


「お前も彗星にしてやろうか」


聞き間違いだろうか?

いや彼はきっと私にそう言った。

彗星にするとはどういうことなのか私にはわからなかった。

今思えばそれが私への彼のSOSだったのかも知れない。


何日か経ったころ、私は彼の家を訪れた。

私が彼の話を聞いていると彼はだんだんと言葉に勢いがなくなりとうとう彼は泣いた。

涙が枯れるまで泣いた。私が彼の涙を見たのは初めてだった。

彼は心の底から泣きたかったであろう。

つらかったのだろう。

彼の生きがいが奪われてしまったのだ。

私は彼に同情した。

人は醜いものだとも思った。

なぜ人はこうも人を憎み相手がつらくなることをするのか?

そのようなことをしたってつらいことが連鎖するだけなのに。

それが結果彼のような哀れな人々を生み出すのだ。


しばらくして彼はまた学校に来るようになった。

彼の頭は今はピンポン玉のようだったしかし彼を笑うものはどこにもいなかった。彼の新たな生活が、始まった。

しかし私はある日見てしまったのだ。

彼は誰も見ていないトイレで鏡を見て泣いていた。

彼は平気なふりをして、誰もいないところで泣いていたのだろう。


次の日空に大きな彗星が現れた。

SNSでは知らない人たちが騒ぎ立て、ニュースではしばらく前から71年ぶりだと知らない天文学者が騒いでいた。

町では空を見上げ、スマホを構えている人たちでごった返していた。

その日、私は彼とともに空を見上げていた。

彼は箒星を眺めながら私に


「あの彗星は長い間一人で旅をしていて、今やっと人々に姿を見せている。人も同じように時間を旅しそして生涯に一度最もいい瞬間があればそれでいいじゃないか。俺は彗星になりたい。お前も彗星にしてやろうか。」といった。


それからは彼の頭がどんな状態だろうと涙を流さず、恥ずかしがることはなかった。


彼は毎日いろんな人に挨拶し、ごみを拾い環境や社会のために奉仕した。

困っている人に手を差し伸べ、より多くの人と関わった。

それによって彼の頭に奇跡が起きたのだ。

彼の頭に新たな存在がもう一度発見されたのだ。

彼は歓喜した。

彼は自分を神が見捨てていなかったことに喜んだ。

毎日をスキップして過ごした。

空には、多くの流星が輝いていた。

彼の頭はもうピンポン玉ではない。

多くの生命がいる熱帯林になったのだ。

彼の新たな生活はここから始まった。

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