継ぎ接ぎ死体 ~ Full of Scars
( *・ω・)ノヤァ( _ᐛ )ノユゥ(*゜▽゜)ノヨォ
【#モノ】でございます。
中々苦労して書きました。もうしばらくしたら最終話です。
*月*日
今日の天気は生憎の曇り…
曇り空を見つめる少女の元に、1人の男性が入って来た。
「やぁアイリス、今日の調子はどうだい?」
「師冶先生…」
虚ろな瞳に映るのは、大好きな藪石 師冶医師。
少女とは正反対にニコニコした表情で、少女アイリスの元へ向かう。
師「どうした?そんな顔して」
ア「今日はつまんない…
みんなも退院したり、大きな病院に行っちゃった
し…」
師「うんうんそっか…
そんなキミに、友達を連れてきたよ!」
ア「え?」
医師はそう言うと、少女にプレゼント袋を渡した。
少女は不思議に思いながらも、袋のリボンを解いて、中身を取り出してみる。
ア「…わぁ!クマさん!」
中身は大きなテディベア。
少女と同じぐらいの大きさで首元には赤いリボンが結ばれている。
少女はクマを抱きしめて、医師に感謝を伝える。
ア「先生!ありがとう!」
師「気に入ってくれて、私も嬉しいよ」
医師は少女の頭を撫でる。
先程まで虚ろな瞳をしていた少女とは思えない、眩しい笑顔をしている。
師「せっかくだから、そのクマに名前を付けて上げれ
ばいいんじゃないか?」
ア「名前…」
医師がそう言うと、少女はクマを見つめて悩みだした。
少女はしばらくの間、クマとにらめっこして、ようやく口を開いた。
ア「決めた!」
師「おっ?どんな名前にしたんだ?」
ア「フラン!」
師「フラン?」
ア「そう!フラン!
この子の名前はフラン!」
師「良い名前じゃないか!
フランと仲良くするんだよ」
ア「うん!」
少女と医師の和やかな日常。
少女も医師と話している時は自分が病気だと言う事を忘れるぐらい、医師が大好きだった。
…ただ、後に悲劇が起こるなんて、2人は知るよしも無かった…
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療子の猛攻に、空泡は必死に避けていく。
鋭利なメスに勝てる様な武器を生憎持っていないため、反撃をする事ができない…
療「ほらほらっ!!どうしたんですの!!
さっきまでの勢いは!?力は!?
何にもできないのですの?」
療子にあーだこーだ言われるが、空泡は冷静にメスの起動を見る。
空「…!?
しまっ!」
避けているのに夢中になっていたら、足を絡めてしまい、尻もちをついてしまった…
療「アハハっ!!死ねぇ!!」
チャンスだと思った療子空泡の上に馬乗りになり、メスを持っている手を大きく上げた。
そして、空泡の心臓を狙って振り下ろしてくる…
空「ぐはッ!」
空泡の心臓にメスが突き刺さる…
刺された空泡はしばらくして、動かなくなってしまった…
療「…ハハッ
アハハ!
アハハハハッ!!
鬱陶しいガキを殺してやりましたわ!
これで師冶様を邪魔する者はいなくなりました
わ!」
療子は甲高い声で笑う…
しばらくの間笑い、空泡の後始末を始めようとした。
療「さて、あの死体を師冶様の元に持っていきましょ
う
アイツなら、師冶様も喜んでくれるに違いない…
そしたら褒められる…うふふふふ…」
上機嫌な療子は空泡が眠る方を見る。
療「………あっ?」
しかし、そこにあった筈の空泡の死体は無かった…
動かなくなったのをちゃんと確認した筈の療子は焦り、その場へ近づいて行く…
療「なんで…どうして!
確かにここに…心臓を刺した筈!」
「それはだなぁ…」
療「!?」
声がした方を確認してみたと同時に、療子は無数の札に囲まれている事に気づく…
療「なっ!?貴方…どうして生きて…!?」
療子が上を見上げると、死んでいた筈の空泡が何事も無かったかのように、宙を飛んでいる…
空「どうして…ねぇ?
お前が刺したのはコレだ」
空泡が取り出したのは人型の御札…
心臓部には穴が空いている…
療「それがどうした?」
空「コイツはダメージを肩代わりしてくれる俺特製の
御札だ
1回しか使用できないのが難点だけどな」
療「もしかして…わざと刃を受けたというですの…」
空「あぁ、切り札は隠しておくもんだろ?」
療子はイラつきながらも、札の中から抜けようとする…
しかし、反発されてしまい、抜け出す事が出来なかった…
療「チィィ!!」
空「…さて、お前に聞きたい事がある」
療「!!」
空「お前の主は何処にいる?
そして、目的はなんだ?」
空泡が色々聞き出すも、療子は黙秘を続ける…
その様子に空泡もイライラし、札の嵐を徐々に凝縮させている…
空「喋らなければ、お前を調伏する
喋ったなら、成仏はさせてやらない」
療「ぐっ…師冶様の野望を喋る訳には…」
空「そうか、じゃあ死ね
【色空結界】」
空泡は呪術を唱えると、周りを飛んでいた無数の札が療子に向かって飛んでいく。
全方位からの攻撃に、療子は捌ききれずに当たり続けてしまう…
療「ぐっ!!うぅ!ぅぅうぅ!?!
しぃぃやぁぁさぁぁああまぁああま!!!!」
療子は徐々に体が消滅していき、最終的には何も無くなってしまった…
完璧に調伏されてしまい、この世から消え失せてしまった…
空「…アイツ、最後まで主の野望を喋らなかったな
はぁ…疲れた…」
長い戦闘を終え、空泡は座りこんでしまった。
空「でも、療子は従者なんだよなぁ…
まだ親玉がいるとか、めんどくせぇな…」
空泡は気づきたくない事に気がついてしまい、ため息をついてしまった…
しかし、今は体力と霊力が少なくなってしまった為、少し休憩してから、親玉を探しに行く事にした。
空「…射竜、無事だと良いんだけど…」
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射竜は409号室前にいた。
ナースコールが鳴り響いたのも、少女の霊に呼ばれたのも、409号室に何かあると思い、一息吐いて、中に入ってみる。
射「……これは…」
部屋はベッドが1つあるだけの大部屋だった。
壁は朽ちて、窓ガラスにはヒビが入っている…
そして、部屋の中で似つかわしくない物が部屋の中央にあった…
射「…血だ
それも…凄い量だ…」
部屋の中央にあった物…それは赤黒く乾いた血液であった…
射竜は看護師日記でみたあの文を思い出す…
"殺す事にした"…嫌な考えが次々浮かんでくる…
射「(あれが本当なら…この部屋の患者は…
アイリスって子は…)」
射竜は口を抑えて、思考を巡らせる…
その時、後ろから何かが抱きついて気がした…
射「うわあぁああぁっ!?!?」
射竜は大きな声で驚き、背後を確認してみる…
しかし、後ろには誰もいない…
恐る恐る下に目線を向けてみると…
「ばぁ!!」
射「うわあぁっ!?」
小さな女の子が射竜の腰に抱きついていた…
射竜がまた驚いた声を出すと、少女は楽しそうに笑い、射竜から離れてくれた。
「アハハ!
お兄ちゃん、ようやく気づいてくれたね ♪ 」
射「きっ…キミは…?」
「アイリスだよ
アイリス・コープスメル ♪」
射「アイリス…って!
日記に書かれてた!」
少女はアイリス・コープスメルと名乗った。
白いワンピースを着ていて、全身に包帯を巻いている…
そして左手には大きなハサミを持っていて、右手にはクマのぬいぐるみを抱えている…
射「キミが僕を呼んだの?」
ア「うん、そうだよ」
アイリスは可愛らしい笑顔で射竜に返事をする。
そして、ふわふわ浮遊しながら射竜に近寄ってきて、射竜の頬を触れる…
射「んぐっ!」
ア「ねぇカメラを持ったお兄ちゃん」
射「なっ…なに?」
ア「私のお願い、叶えてくれる?」
射「おっ…お願い?」
無垢な笑顔でアイリスは射竜の元に近づいてくる…
射竜は何故か動く事ができず、アイリスに腕を掴まれてしまった…
ア「つーかまえた♡」
射「ッ!?」
ア「お兄ちゃん!遊ぼ遊ぼ!」
腕をぶんぶんしながら懇願してきたのは、一緒に遊んでほしいとのお願いだった…
射「あっ…遊ぶ?」
ア「うん ♪
私…ずっと1人だったからさ
寂しかったの…」
射「でも…僕今急いでて…」
射竜はそう伝えると、さっきの無垢な笑顔から、哀愁が漂う表情へと、変わってしまった…
射竜はハッとした、日記に書いてあった彼女の事を思い出したのだ。
生まれつきの難病、看護師のせいで小さな命が終わった事を…
射「…本当に遊びたいだけなの?」
ア「うん ♪
私が満足したら、お兄ちゃんのお友達の場所に連
れて行ってあげる ♪」
射「…えっ!」
アイリスの言葉を聞いて、射竜は大きな声をだす…
もし彼女の願いを叶えてあげれば、みんなの元へ行ける…
射「本当に!?」
ア「私はアイツとは違うから、約束は守るよ
だから、お願い…」
上目遣いでキラキラした目をしながらこっちを見てくる…
幽霊とは思えない程の澄んだ瞳で…
射「…………うん
いいよ、遊んであげる」
ア「本当!?」
射「本当だよ」
ア「やったー!」
射竜の返事に、アイリスは大きく喜ぶ…
幽霊になって身軽になったのか、派手に喜んでいる…
射「ちなみにどんな遊びをするの?」
ア「鬼ごっこ!
私が鬼ね」
射「うん、わかった」
射竜が返事をすると、アイリスは持っていたハサミを大きくして、構えた…
射「…えっ?」
ア「じゃあ十秒数えるから、お兄ちゃんは逃げて
ね ♪
逃げないと、真っ二つにするから ♪」
射「ちょっ!ちょっとまっ…」
ア「じゃあ数えるねー
1…2…3…」
アイリスは静かにカウントダウンを数え始めた…
射竜はとりあえず逃げる事にし、部屋から飛び出す…
ア「9…10!
…キャハ…キャハハ!
キャハハハハハ!」
10となった瞬間、アイリスは笑いだし、部屋の扉を壊して、部屋を飛び出した…
ア「キャハハ!お兄ちゃん!今行くよ!」
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ある程度霊力が回復した空泡は、改めて今いる場所を散策してみる事にした。
今いる場所が普通の世界なのか、異世界、若しくは呪われた領域なのか、空泡にも分からない…
空「病院は病院だけど、昔の病院みたいだな」
周りの雰囲気から見てみると、何処かの診療所なのではないかと空泡は考えた。
細かく分けられた部屋に診察室や待合室という文字…
さっきまでいた廃病院とはまた違った病院である事は間違いない…
空「………ん?
なんか踏んだか?」
空泡は何か硬い物を踏んだ様な気がし、足元を確認してみる。
空「これは…骨…!?」
白くて石の様な物…
空泡が触って確認してみると骨だという事が分かった。
空「まさか…!」
空泡は他にも骨の存在があるかどうか調べる為に自身の霊能力を解放する。
存在を司る事のできる空泡は何処に何があるか瞬時に把握できる。
空「………ありとあらゆる場所にあるな」
空泡は目の前にある部屋の扉を開けてみる。
そこには白骨死体の山があった…
その数は百体以上…他の部屋にも骨の山があるのを霊能力で知ったので、犠牲者の数は凄まじいと思われる…
空「これは…早く見つけないとな…
俺以外に誰かいないか…」
他に誰かいないか、霊能力で探ってみる。
それが生きた人間であろうが、元凶の何かであろうが、何でも良いので早く射竜の元へ帰りたいと思っていた。
空「手術室に何かいるな
…向かうか」
空泡は宙に浮かび、手術室へ飛んで行く。
手術室にいるのは元凶か黒幕か…
空泡も気合いを入れて向かう
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さっきまで、ラップ音1つしなかった診療所が、とても騒々しい音で鳴り響いている…
ある場所は破壊され、ある場所は切られ、ある場所は崩れ、朽ち果てていた診療所は更に壊れていく…
射竜はアイリスからの攻撃を何とか避けながら、診療所から脱出をし、廃病院へと向かって走っている…
アイリスの狂気の笑いと巨大なハサミに怯えながら…
射「はぁ…はぁ…」
ア「キャハハ!待ってよお兄ちゃん!」
ハサミで切りながら、射竜の元へ向かって来る…
声は笑っているが、顔は笑っていない…
射「(どっ…どうしよう?
このままじゃ殺される!
どうにかしないと…)」
射竜は走りながら、アイリスの気分を抑える方法を考える…
しかし、普通の自分では空泡の様な事は出来ない…
かと言ってそのまま逃げ続けてしまえば、いずれ体力も命も尽きてしまう…
射「…そう言えば
このカメラ…」
射竜は鞄に入っている射影機の事を思い出した…
最初は廃病院にいた幽霊にダメージが入った事…
死体を撮ったら、死体が動かなくなった事を…
射「一か八かだ!」
射竜はアイリスの方を向いて、射影機を向ける。
射「アイリスちゃん!ハイ!チーズ!」
射竜はアイリスを捉え、射影機のボタンを押す。
押したと同時に、アイリスは苦しそうにもがいた…
ア「あ"あ"あ"ぁ"っ!?」
射「やった…!
けど…ごめんね、アイリスちゃん…」
か弱い (?) 少女に攻撃してしまった事に、射竜は心を痛める…
しかし、そんな余裕も無い為、射竜は一旦カメラをしまって、廃病院へ逃げて行く。
ア「アハハ…アハハ…アハハハハハ!
アハハハハハハハハハハハハハハハハハ!
お兄ちゃん…面白いねぇ…楽しいねぇ…
もっと…もーっと…遊びましょう!!」
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手術室の前に着いた空泡は、手術中という文字を見た。
空「この中にいるのか」
空泡は自分の頬を叩き、気合いを入れる。
扉を勢いよく蹴り飛ばし、敵の本拠地へと入り込んで行く。
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中は異様な広さだった…
少しの光と、薬品や道具が入ってある棚が乱雑に置かれており、床のタイルはボロボロだった…
空泡は臆せず、前に進んで行く。
進んで行くうちに、ぐちょぐちょと嫌な音が鳴り響いている事に気がつく…
空泡は音の鳴る方へ進んで行くと、男らしき人物が手術台に向かって何かやっている事が分かった…
空「…おい、お前」
「………駄目じゃなぃかぁ…
今は…手術中だぞぉを…」
男は手を止めて、こちらをゆっくり振り向いてくる…
大きなクマにげっそりとした体…
少なくとも、生きた人間では無いと、空泡は思った。
空「何が手術中だ
それ、死体じゃねぇか」
空泡の指摘通り、手術台の上にあるのはバラバラの体の部位が継ぎ接ぎに縫われていた、人間だった何か…
「これはぁ…あの娘を治す為にゐいぃ
やってるんだぁああぁ…」
空「はぁ?」
「体の弱いあの娘にあった体を作ったりいいいぃ…
付け替えたりしとてゑえぇ…治してるんだぁ!
こぉすればぁあ!あの娘は治るんだぁ!!!」
空「………」
空泡は相手の言っている事が理解出来なかった…
移植という方法で治すのは聞いた事があるが、相手のやっている事は、正気の沙汰ではない…
「さらぁにゐゐゐぃ!!
それぞれの部位にぃいいぃいぃ!
魔力を込めればぁぁあ!
究極の体が手に入れられるらしいぃんだぁああ
ぁ!」
空「究極の体だって?」
「あの娘に合う部位を探してぇゑえぇ!
あの娘を究極の生命体にするんだぁああぁぁ!」
男が叫ぶと、周りが突然明るくなった…
明るくなったと同時に、周りにあった物の全容が明らかになった…
周りにあったのは、バラバラ死体や継ぎ接ぎの死体
骨死体の正体が明らかになった…
空「…!あれは…」
バラバラ死体の中に、何処かで見たような人間達の顔があった…
空泡は思い出した…
射竜が化け猫に写真を見してた時にチラッと見た写真に写っていたあの…
空「…お前、あの死体はなんだ…?」
「アイツらはぁあ…療子が連れてきたあぁあ
材料だなああぁぁあ!
ただぁ!使い物にならなかったがなあああああ!」
空「!!」
空泡はその言葉を聞き、男に向かって、札を投げつけた。
しかし、魔法陣を発動され、防御されてしまった…
「危ないなぁあ…」
空「お前、藪石 師冶って奴だな…」
師「…お前ぇえゑ?
何で私のぉお、名前をををぉ!」
空「俺は无色 空泡
悪いがお前は死んでもらう」
師「………」
師冶という男は不思議そうな顔をしながら、空泡を見つめてくる。
しかし、空泡は気にせずに話を進める。
空「支離滅裂な私利私欲のせいで、何人の犠牲が出て
いるのか、分かっているのか?
お前の存在が迷惑だって、気がついているの
か?」
師「………」
空「お前が存在する限り、あの廃病院の噂は無くなら
ない
だから、今すぐ消え失せろ!
人間を弄ぶ闇医者よ!」
師「………くっ!
くっくっくっ!
威勢のいい人間だなぁあぁあ!
お前は廃病院にやって来た青二才や女やガキや老
害共とは違う気を感じるなああぁぁぁ
お前の体を使えばぁぁあ!
究極の体が完成されるだろぅぅうううう!
その体を寄越せぇゑぇえぇゑぇ!!!」
To Be Continued
キャラクター
新しく出てきたキャラは次と次の回に詳しく書きます。
*无色 空泡
彼の霊能力、存在を司るとはありのままの意味です。
例えば、リンゴという果物の存在を消してしまえば、この世からリンゴという存在がなくなってしまいます。
但しそうすると、過去にも影響を及ぼすので、余程の事が無い限り、存在を消すという行為はしません。
他には、存在感を薄くしたり、貫禄を出させたり、別の存在へと変化させたりできます。
空泡は目立つのが嫌いなので、存在感を薄くしていました。
何故その様な事ができるかは、謎です。
彼の生まれた場所に関係があるかもしれません。
*麻生 射竜
生まれつき強い霊感を持っています。
そのせいで過去にいじめられて、幽霊を見えない振りをして過ごしていました。
たまに、幽霊か本物の人間か分からなくなります。




