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味の旅路~放浪するエルフは糧を求めて今日も往く~  作者: 壬生
世話になった貴方に最後の感謝を
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純白葉の谷

朝のうちに町を出たリフィは、昼を過ぎた頃には目的地である北の山間を縫うように広がる渓谷地帯へと辿り着いていた。

陽光を浴びて白化したホワイトセニオンが育つ場所——そこは地熱の影響で温暖な気候を保ち、常に柔らかな霧が地を這っていた。


「……間違いない、ここだ」


斜面のくぼ地には、翠から灰色へ、そして輝く純白へと変わった葉を持つ薬草が群生している。

だが、その美しさの裏に潜む気配を、リフィはすぐに察知した。


「……来るか」


霧の奥、地面を這うような重い音。土と岩が擦れるような鈍い響きとともに、それは姿を現した。


鋼殻の魔亀トルトゥス・ガード

全身を分厚い甲羅で覆い、まるで岩塊のような巨体を揺らしながら迫ってくる。

赤銅色の目がリフィを捕えると、次の瞬間——その口から火の奔流が吐き出された。


「っ……!」


咄嗟に横へ跳び、炎をかわすリフィ。焼け焦げた草の匂いが辺りに広がった。


「火属性……やっぱり、普通の魔物じゃないな」


背袋の空間から出した大鉈を担いで構え、霧を切り裂くように踏み出す。

トルトゥスが甲羅を回転させ、鉄塊のような重さで襲いかかる。


リフィは地を滑るように回避しつつ、片手を掲げる。


「《アイスブレス》!」


掌から吹き出した冷気が甲羅の側面を覆い、鋼の殻に一瞬の凍結を生じさせる。


「今だ!」


駆け寄り、凍りついた隙間へと大鉈を振るう。

甲羅の裂け目に食い込む刃、肉の奥から唸るような咆哮。


トルトゥスは地を蹴り、大きく跳ね上がった。

その質量が地面に衝突し、激しい衝撃波が辺りを包む。


リフィは後方へ跳び、空中で再び呪文を紡いだ。


「《水の槍よ、貫け——アクア・スパイン》!」


無数の水の矢が空中から降り注ぎ、甲羅の継ぎ目や露出した肉体を正確に貫く。

一撃、二撃、三撃——トルトゥスの動きが鈍り、甲羅の表面がひび割れ始めた。


「あと少し……!」


再び地を蹴り、最後の一撃を叩き込むべく距離を詰める。

大鉈を両手に構え、全力で振り下ろした刃が、甲羅の中央を貫き砕いた——


一拍の静寂ののち、トルトゥスの巨体が崩れ落ちる。

赤銅の目が揺らぎ、やがて光を失った。


リフィは大きく息をつき、額をぬぐう。


「やれやれ……セニオン、少しばかり分けてもらうぞ」


辺りを警戒しつつ、ホワイトセニオンの白葉を慎重に摘み取り、布包みに収めていく。

風が霧を撫で、静かな空気が戻る。


——新たな材料、“白き願いの葉”は、確かに手に入った。

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