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EP89 影の支配者





 アルバート5世陛下は、起き上がれない病状に成った折り、議会進行の妨げにならぬ様、次代の国王コーデリア殿下を摂政に首相のレベット伯爵と枢密院議長のハークリー男爵たちと話し合って据えた。


 此れは、アルバート4世陛下の時、急に体調を崩され開会式を行えず、議会が一時混乱した事が在った為だ。



 その後、意識が戻られたアルバート4世陛下に「摂政を決める権限と摂政の権力抑制案を議会で決め、議会で通過した法案を有効にするため、国璽を使用する許可が欲しい。」と、貴族院議長だったシーハント公爵から提案された。


 実際は、もっと厭らしく婉曲な言い回しだったけども。



 当たり前だけども、シーハント公爵を信用していないアルバート4世陛下は拒否って仕舞い、次期王位継承者で或るアルバート5世陛下の摂政案は棚上げに成って居たのだけど、現在アルバート5世陛下は小康状態と伏せる状態を繰り返していた為、クランベル伯爵やレンフィール公爵達とも相談して、次期国王で或るコーデリア殿下の摂政をレベット首相たちと決めた。



 つう訳で、コーデリア殿下は弱冠19歳にして貴族議員として貴族院議会に参加していた。

 公式行事も陛下の代打で熟されているコーデリア殿下の負担アップのお知らせだったりする。



 そんな多忙なコーデリア殿下を余所に、俺はクランベル伯爵から「チャーリーがコーデリア殿下とあからさまに一緒だと面倒な噂が立つから。」と、ローゼブル宮殿でまったり留守番を命じられている。



 グレース夫人の夫であるキューリック公爵、デイジーの旦那でありクランベル伯爵の弟のスレイン・フォーリー少将も貴族院に列せられたし、フリップの甥っ子で或るハーバート・ピバート伯爵3世などの他にも、がっちりスクラムを組んでコーデリア殿下をお守りしている、って話だ。


 貴族院の議会堂って、そんなにヤバイ所だったっけ?

 と、思わないでもない。


 初めてコーデリア殿下が貴族院に登院した時は、その清楚な気品にオジサン達は平伏したという。


 単に臣下の礼だったって話だけどね。

 でも、クランベル伯爵が精魂込めて育た上げたコーデリア殿下は、議員たちから大変に好評だったらしい。


 社交デビューとは全く違う緊張感らしく俺が顔を見せる度に、コーデリア殿下は「チャーリーも来て呉れたらいいのに。」と、溜息を洩らされていた。



 別に俺はコーデリア殿下の傍についても良かったのだけども、如何やら俺は影の支配者らしくて、歴代のブレイス皇帝を影で操っている奴っぽいので、コーデリア殿下の傍でウロチョロしない方が良さげなのだ。



 俺は誰も影で操ってないよ?


 両陛下から俺が転がされていた記憶は或るけども。



 歴代って言っても、アルバート4世からは6年間くらい好き勝手に命令されて、アルバート5世陛下は実質3年くらい?の間、私書や議事録を手短に纏めて読んでいただけなのだけどなあ。


 確かに、陛下達から気に入られて居たけど、寵臣ってのも何か違う気もする。


 どちらかと言う遊ばれていた気がする。

 勿論、俺がな。



 それにもし俺が影の支配者なら、現在18%の砂糖税とプラス馬鹿高い関税を下げるよ。

 だって砂糖って、どんな病気にも効くって昔から言われているしね。

 蜜香病(メリタス)(糖尿病)のアルバート5世陛下にも、薬として砂糖を処方されているし。

 まあ、国王陛下に税金とか関係ないけどさ。



 大体、いつもジーンとエドが俺の傍に居るのに、如何やって影へ廻るのさ?

 ひっそりジーンが影に廻るなら兎も角。


 ギボンズとコーデリア殿下の母親ノイザン公爵夫人が居なく成ったのも、俺が始末したという噂も或るし。


 企みは間違ってはないけど、始末はしていない。

 ギボンズなら間違って俺も()っちゃうかも知れないけども、コーデリア殿下の母親であるノイザン公爵夫人を始末なんて出来る訳無いっつうの!

 一応はノイザン公爵夫人ってアハルト=サクセス公国の王族だよ?

 

 全くさあー。



 それに俺がギボンズの事で、コーデリア殿下から内密の相談を受けていたのに、ジーンはちゃっかりクランベル伯爵に報告しているからな。


 でも結局のところ、事後処理は大変に助かって仕舞ったのだけども。



 、、、だけどジーンに礼は言いたくねぇー。






 そんな事を考えつつ、俺が新たに届いた請願概容を纏めたモノに目を通して居ると、ジーンが珈琲と銀盆に乗せて領地で或るソルズサンドのゴードンから届いた書類を持って来た。



 漁業と牧畜での一年分の収入は諸経費を引いて約4,290ポンド。

 シリング以下は寄付にでも使って貰おう。

 ソルズサンドに或るカントリーハウスの執事からの会計報告書に目を通しながら、元嫁のジュリアへ半額支払う為に小切手をジーンに持って来て貰った。


 そういやケビンがジュリアとの愛の巣を探しているって言っていたなあ。

 ケビンが出航するポータスの港とソルズサンドが近かったら、ジュリアとソルズサンドのカントリーハウスで暮らして貰うのだけど、110km離れたロドニアに或る実家へ帰る方が、曲がりくねった道路を行くより圧倒的に掛かる時間が短かい。


 潮の関係で遠浅の浜辺が続くため巨大な軍艦とか泊めれる港が無いんだよな。

 ソルズサンド領地って。

 まあ、呪われた事故物件のソルズサンドに行かせる必要もないしな。

 居住しているゴードン達や領民たちには申し訳ないけども。



 ジュリアはソフィアとシャロンのコトもあるし、住むならロドニアが良いんだろうな。



 温かな珈琲を口にして、俺は書類から目を離し部屋の窓から、西に或る広大な大庭園に生えた常緑樹に紛れている紅葉した落葉樹を眺めた。









 


 

         ※※※※※※※※※※





 



 時計の針が夜の9時を回り、俺はジーンたちとバスルームへ向かった。


 ジーンに濡れた身体を拭かれて、ゆったりしたコットンの夜着に着替えた後、俺は寝室に置いてある丸いティーテーブルに向って寝酒用の葡萄酒の葡萄ジュース割りを飲み始めた。


 今日もクランベル伯爵は、ウエスト・カタリナ宮殿で過ごすのかもな。

 寂しい訳じゃ無いけども。


 なんとなく俺が眠りに落ちるまで、クランベル伯爵から隣で囁く様な昔話を聞かされるコトに慣れてしまって、1人で眠る時には寝酒を飲むのが癖になって仕舞った。

 まあ、此のワイングラス一杯飲み終わる頃には睡魔が訪れて呉れるのだけども。



 『寂しいわけでは無いけどね、ホント。』


 飾り棚に掛けられたランプと燭台の蝋燭に照らされ、オレンジ色に染まったジーンの少し呆れた表情を見て、俺は「淋しくない」と繰り返してみた。


 たださ。

 耳に馴染んだクランベル伯爵の声や、俺の頭を撫でて呉れる暖かな優しい右手の感触が無いと、少し物足りないような気がしただけ。


 そして、ウエストカタリナ宮殿とローゼブル宮殿が離れて居る、と不満を漏らしていたクランベル伯爵の意見に、俺も何と無く同意していたよ。




 『早く、帰って来れば良いのに。』





 そう呟いた事に俺は気付かない侭、ベットで横に成りジーンからシーツを掛けて貰い、目を閉じた。

 

 



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