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EP76 体から始まるデフォルト・ストーリー




【ケビン・レスタード少佐】



 選挙も終わった頃、オレはブレイス海峡の哨戒任務を終えポータス港から船を降りて、ロドニアに或るアドミラルティ(=海軍本部)へと向かった。



 ブレーズ半島沖でエスニアの財宝船を拿捕しポータス港へ入れ、現在アドミラルの者たちで鑑定中である。

 息を飲む程に、素晴らしい金銀宝石の財宝が積み込まれていた帆船だったので、査定結果が愉しみだったりしている。

 報奨金が出たらジュリア義姉さんへあの魅惑的なエメラルドグリーンの瞳に似合う宝飾品を選んでプレゼントをしたいと考え。オレはジュリア義姉さんの喜ぶ笑顔を想像し胸を高鳴らせた。


 つうかチャーリー兄さんのジュリア義姉さんに対する態度が気に喰わない。


 パーラーでジュリア義姉さんたちとティータイムを過ごし、会話の流れでなんとかオレは嫉妬心を抑えチャーリー兄さんとの生活の様子をジュリア義姉さんに尋ねてみた。


 「チャーリーは優しいわ。私とも価値観も合うし、ソフィアやシャロンを可愛がってるしね。満足してるわ。」

 

 そうオレに答えてジュリア義姉さんは微笑んだ。



 まあ、チャーリー兄さんは優しいモノなあー。

 って、初めはオレも納得していたが、チャーリー兄さんは月に一度数時間だけ娘達に会いに来るだけ。


 ホント、来るって感じなんだぜ。

 あのテラスハウスはチャーリー兄さんの屋敷である筈が、戻って来たってノリじゃない。

 って言うか、戻っても一泊もして行かないって、何を考えているのかって思うだろ?

 エルザ姉さんが生きてたら、絶対にチャーリー兄さんへ静かな声で注意していると思うよ。


 『ジュリアさんが可哀想よ。』


 つってさ。


 別に2人の仲が悪いってカンジじゃない。

 チャーリー兄さんはソフィアやシャロンの事をジュリア義姉さんに尋ねて、後は子供達に習ったことを聞いて褒めまくってる。

 エルザ姉さんやデイジーに接していたみたいに、可愛い可愛いとデロンデロンな顔をしてソフィアやシャロンを甘やかしている。


 そして、2時間位パーラーで過ごすと「じゃあ、帰るわ。」って言って家を出て行く。


 マジでチャーリー兄さんは絶対に可笑しい。


 チャーリー兄さんは、久し振りに会うジュリア義姉さんの豊満な形の良さそうな胸や細く括れた腰を見て、どうしてベッドに誘わずに平然と去って行けるのか。


 オレにはサッパリ理解が出来ない。



 疑問に思っても、夜の営みについてダイレクトにジュリア義姉さんへ聞くのは、幾らガサツなオレでも大いに躊躇ってしまうワケで。

 かと言って、一見聖人君子に見えてしまう美しく整ったチャーリー兄さんへ「夫婦生活どうよ?」なんてオレも口に出せない。


 まあ、子供が2人もいるのだから、チャーリー兄さんが聖人で無いのは、明らかなのだけどなあ。


 オレは晴れぬ疑問に悶々としながらカイル兄に「チャーリー兄さんとジュリア義姉さんのナイトライフはどうなってると思う?」って聞いてみたら、「ケビン、お前はチャールズ兄さんで不埒な妄想をするな。」ってキレられるし。



 カイル兄。

 オレは、チャーリー兄さんで不埒な妄想なんか全くしていないから。

 ジュリア義姉さんの方は、意図せず自然とエロイ姿で脳裏に浮かんでしまうけども。


 そんな事で悩みつつ、年も開けた頃ジュリア義姉さんと話していた。


 「チャーリー兄さんとゆっくりした時間を取れないからジュリア義姉さんも寂しいだろう?オレからチャーリー兄さんに文句言って遣ろうか?」


 オレなりに言葉を選んでソファーに腰掛けていたジュリア義姉さんに声を掛けた。

 綺麗なエメラルドグリーンの瞳をオレに向けて、ジュリア義姉さんは小さな声で呟いた。


 「チャーリーとはそう言うモノではないから。」


 そして目を伏せてから、ジュリア義姉さんはゆっくりと暖炉で焚かれていた炎を眺め始めた。


 暖炉に目を向けた時のジュリア義姉さんの傾けた横顔と見えた白く細い項がドキリとするほど綺麗でオレの真ん中が熱く脈打ち、その音はジュリア義姉さんにも聴こえたいるのではと思えるほど激しいモノだった。


 妙に口の中が渇き、熱く燃えて行く身体を持て余し、オレは思わず立ち上がろうとした時、執事のカールソンが愛想のいい笑顔を浮かべて、オレとジュリア義姉さんの2人分のカモミールティーを運んで来た。


 あの時は、惜しかった。

 いつもは居る子供達も居なくて珍しく2人きりだった。

 それに、ジュリア義姉さんが何となくオレを誘っているようなムードもあったのに。

 おのれ、カールソンめ。


 そう言う事が数度続いて、カールソンの笑顔とカモミールティーに邪魔をされてしまい、オレは既にカモミールティーの薫りとカールソンの笑顔が苦手になる始末。

 そして先月オレがジレて、ジュリア義姉さんの部屋へクレンジングルームから夜這いに向かっていると、カイル兄に出くわし、「どこ行くの?」と、妙に冷たい声で尋ねられるしさ。


 何でこうも邪魔が入るかなあ。


 オレもそれなりに経験あるし、ジュリア義姉さんがオレに好意みたいなモノを感じてくれているのも分かるのに、お邪魔虫の2匹が邪魔をする。


 普通なら言葉に出して口説いてからだろうけど、チャーリー兄さんの嫁さんで或るジュリア義姉さんへ好きだと告白するのって敷居が高いって言うか、やっぱり人の嫁さんを口説くってオレのモラルが邪魔をするんだよ。


 ならばエッチは良いのか?

 うん、身体から始まるのがデフォだよな。

 て言うか、オレって先ずは、躰の相性から付き合いが始まる。

 

 考えてみれば、オレって女を口説いた事ってないんだよな。

 だって出逢う先は娼館だし、それ以外にナニをしろと?

 でもってジュリア義姉さんは、娼館の女以外で初めて抱きたいと切望したんだよ。


 オレからすれば女は2種類しか居ない。

 ヤれない女かヤれる女かと言う単純なモノ。


 普通はヤってから会話するじゃん?

 ヤらずに会話してる女って、母さんとエルザ姉さんとデイジーと飯屋のおばちゃんとジュリア義姉さんくらいだぜ。

 つうかヤらずに女と話をするって難しいよなあ。


 ああ、使用人は別ね。

 彼女彼等はオレの生活をサポートして呉れる人達だからヤラシイ気持ちに成らない。

 まっ、カイル兄から面倒な状況に成るから、くれぐれもサーバントたちを襲わない様にって、学生時代から忠告されてたってのも或るしな。


 それに代金を支払う相手は恋人じゃないとか、チャーリー兄さんにも言われてるし。



 どうすっかなあー。

 オレのカラダって言うか理性も限界が近い。

 だってジュリア義姉さんと出逢ってから、オレってエッチしてないんだよ。

 家に帰ったら、極上の御馳走があるのに他の飯屋に態々立ち寄らないだろう?



 ああ、こうやってグダグダ思っていても如何にも成らないし、第一にオレの性に合わない。


 オレはポストで馬車の馬を交換し終えた後、御者にウエストカタリナ地区にあるクランベル・スクエアへ行き先の変更を伝えた。



 オレの船が停泊しているポータス港から、約11時間以上も掛かるロドニアに或るアドミラルティの遠さに文句を言っていたが、現金なモノでジュリア義姉さんが居ると思うと、其の遠さも楽しめるようになった。


 さて、チャーリー兄さんに会ったら、ジュリア義姉さんの為に先ずは一発殴って、、、その後どさくさに紛れて、別れて貰おう。

 あんないい女を放置するなんて、やっぱり男として許せんからなあ。


 そして、エメラルドの首飾りを買って、ジュリア義姉さんに心からのプロポーズをしよう。


 『ジュリア、オレと死ぬまで抱き合おう。』



 先ずは此の熱いパトスを解放して、そしてオレはジュリアに愛を語ろう。







 


 

 



             ※※※※※※※※※※ 








【従者ジーン】


 


 あっ、弟のケビンさまにぶっ飛ばされて、仮免チャールズさまが吹っ飛んだ。


 俺は慌てて玄関ホールで倒れてキョトンとしている仮免チャールズさまを起しつつ、エドに頬を冷やす為、濡らしたチーフを用意させた。

 仮免チャールズさまの美麗な顔が腫れる前に冷やさないと、俺の真マス(=真の主人)クランベル伯爵さまが絶句してしまわれる。




 ローゼブル宮殿の2階に或るホワイトドローイングルームで、チャールズさまはコーデリア殿下と選挙結果について話して居るとクランベル伯爵家の者がホールボーイに案内されてきた。

 仮免チャールズさまの弟ケビンさまが突然来訪されて急用の為、クランベル伯爵家でチャールズさまを待って居ると言うのだ。



 「一大事だっ!」


 チャールズさまはそう呟いてからコーデリア殿下へ暇乞いの挨拶をし、そそくさとクランベル伯爵邸へと向かったのだった。

 家族の事には真面目なチャールズさまにとって、底抜けに明るい弟のケビンさまがクランベル伯爵邸へ先触れもなしに突然訪れる行動は、コーデリア殿下よりも一大事かも知れない。


 例え話の途中で、唐突にコーデリア殿下を放り出したとしても、仕方のない事だろう。


 俺は馬車の中で逸る仮免チャールズさまを宥めて、一路クランベル伯爵邸へと向かった。


 そして足早に歩くチャールズさまの後ろから付き従って玄関ホールへ入って行くと、ウエイティングチェアーからムンズと立ち上がった巨漢のケビンさまの姿が一瞬消えたと思ったら、右の背面から長い腕が伸びて来て、ばししぃっと音を鳴らして、仮免チャールズさまは吹っ飛んだ。


 平手で叩いたと言うのは一応ケビンさまの気遣いだったのだろうか?

 いやしかし、気遣いするなら助走と反動はつけないよね?

 でもやっぱりあの太い腕や逞しい背筋から繰り出されるグーパンでは、仮免チャールズさまの歯を2~3本折っちゃいそうだから手加減したのか?



 なんと出来た弟なのだろう。

 流石に仮免チャールズさまの歯を持ってかれたら、俺達使用人ズも黙ってられ無いからね。

 例えケビンさまに敵わなくとも、ええ。

 俺の真マス(=真の主人)クランベル伯爵さまが、大切に愛でているお方ですからね、仮免チャールズさまは。


 マスターの宝物は俺達使用人ズで守るぜ。


 50前の細身の執事キース氏、ホンワカ珈琲淹れるのが得意なアール先輩、此れから育ちざかりなエド、そして腕力には定評の無い俺という見事な非力組。

 まあ、イザと成ればチャーリー・ガーディアンズが湧いて来るんだが、如何やら此れはノーカンらしい。


 一方的な兄弟喧嘩?


 未だに呆然としているチャールズさまへ向かって、弟のケビンさまは大きな体を二つに折って青年の主張を始めた。


 「チャーリー兄さん、御免。そしてジュリア義姉さんと別れて呉れ。俺は滅茶苦茶ジュリア義姉さんとエッチしたい。そしてジュリア義姉さんを大好きだ。夢の中でも朝目覚めてもジュリア義姉さんの大きな乳房が出て来るんだ。勿論、アノ細く括れた腰も大好きだ。昼間仕事をしていても油断するとジュリア義姉さんの身体が浮かんでくる。此の侭だとオレはおかしく成ってしまう。頼む別れて呉れ、チャーリー兄さん。」



 ええー。

 此れって俺達が聞いて良かったのか?

 て言うか、ジュリア夫人とチャールズさまって離婚前提での別居だよな。

 まあ、月一で行くレスタード家でも、ケビンさまがジュリア夫人に惚れているのが、丸わかりなのだけども。

 


 「(イテ)ーよ、アホのケビン。()ってー、此れって腫れるじゃん。手加減しろよバーカ。全くもう、此れだから脳まで筋肉で出来ている野郎はさあ。もっと平和的に遣れよ。まあ、取り敢えずは了解したよ、ケビン。しかし、もっとこう或るじゃん。愛の言葉ってさ。今のって殆どエッチしたいって叫んでるだけだぞ。でもって、ジュリアへのプロポーズで先ずヤラセて下さい。ってのは駄目だからな。取り敢えずは好きですから言え?判ったかケビン。返事は?」


 「、、、はい。」

 「うん、よし。、、、うっ、でも、やっぱり頬と首が痛いよ。」


 

 仮免チャールズさまは、美しい白磁の肌を大きなケビンの手形で朱に染めて、ちょっと涙ぐみながら、「良かろう。」と強がって兄さんぶっていた。


 頬を厚手の濡れた布で冷やしつつ、仮免チャールズさまは設定通りに若い愛人ナタリー・ケット嬢に夢中で或る事を語り、前払いのパンチのお陰で2発目を貰うことなく話を終えたのだった。


 少し仮免チャールズさまの予想とは違う展開だったけどね。


 チャールズさまは、あれだけ見え見えでジュリア夫人にラブ光線を送っていると送られてるジュリア夫人も当然気付くし、気付いて嫌だったら彼女もレスタード家を子供達と使用人を引き連れて出て行くだろうから其れが居るってのはジュリア夫人もケビンさまに好感を持っている。

 だからジュリア夫人にプロポーズ後、ケビンさまがいらっしゃるだろう、と仮免チャールズさまは俺に話していた。


 その時に別居していた理由として作っていた設定を話したら、ケビンさまに一発は殴られるだろうなって、チャールズさまは怖がりつつも笑っていた。


 「素直に男として役立たずに成ったと言えば?」とマッチョなケビンさまからのパンチに怯えていたチャールズさまに、俺がアドバイスをしたら「それだけは、兄として絶対に嫌だ。」と言い張るので或る。



 仮免チャールズさまの美麗で整った顔が少しずつ変形していくのを眺めながら、俺は兄を遣って行くのも大変だなと思うのだった。



 その夜、仮免チャールズさまが滞在しているローゼブル宮殿の一室へ訪れたクランベル伯爵さまは、腫れあがって変形してしまったチャールズさまの顔を見て、長く苦しそうな呻き声を室内へ響かせた。


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