「寝言は寝て言え、クソ野郎。」
※なろうラジオ用に制作しています。
野郎二人がルームシェアしていた話です。
距離は近いですが関係性は明記してしませんのでお好みで受け取ってください。
街灯が赤く染まる頃、いつも通り残業をして、終電で帰路につく。
今夜はすぐに寝てしまおうと思いながら、玄関のドアを開けた。
「あ、おかえり、渚。」
リビングに入ると同時に、聞き慣れた声が聞こえた。
「流星…なんでいんの…」
「渚が寂しがっていると思って」
「別に寂しくねぇし」
「声震えてるじゃん。素直じゃないね~」
「震えてねぇよ」
ラグの上でくつろぎながらけらけらと笑う男。
こいつとは高校で知り合い、大学入学時にルームシェアを始めた。
「帰り遅すぎるんじゃない?最近はほとんど夜ご飯も食べずに寝てるじゃん」
「何で知ってんだ…忙しいんだよ、普通に」
「ふぅん。…
…『わざと忙しくしている』んじゃなくて?」
薄茶色の大きな瞳がこちらを見つめている。
全てを見透かされているような視線に居心地が悪くなって、顔を逸らした。
「今日だってそうでしょ。締切までかなり余裕があるのに遅くまで残業してさ」
「…何で知ってんだよ」
「何だっていいでしょ。…隈も酷いし、痩せ方も異常だ」
「流星には関係ねぇだろ」
「あるよ」
「ない」
「…あるよ。僕のせいでしょ、それ」
「はっ、わかってんなら口出しすんなよ」
声が震えているのは、もう誤魔化せなかった。
数年前、流星は子どもを庇い、交通事故で亡くなった。
随分と呆気なかったそれは、そう簡単には受け入れられなかった。
「お前に何がわかる?帰っても誰もいねぇ、飯は味しねぇ、ぼーっとしてりゃお前が頭に浮かぶ、この苦しさがわかるか?仕事に打ち込めば何も考えずに済むし、評価も上がる。今の俺にはこれしかねぇんだ。つか、今更なんなんだ、本当につらい時には来なかったくせに!」
つい感情のままに言葉をぶつけてしまったが、流星は真剣な表情のまま、静かに口を開いた。
「ごめんね。…本当は、忘れてほしかったんだ。だから、会いに行かなかった。でも、ずっと見てたよ」
「…忘れるとか、無理」
「ふふ、そうだね。君の愛を舐めてた」
「おい、流星、お前…」
力なく笑う流星の身体は、透けていた。
「僕、生まれ変わるよ。生まれ変わって、また会いに来るから。だから、もう体を壊すような働き方はやめてよね。自分を大切にして、生きて。生まれ変わった僕に出会うまで」
そう告げると、流星の身体は完全に見えなくなった。
カーテンの隙間から差し込む光で、夜が明けたことを知る。
熱くなった目頭から何かが零れ出す前に、吐き捨てるように呟いた。
「寝言は寝て言え、クソ野郎。」
死ネタの注意喚起をしてしまうと完全にネタバレになってしまうので外させていただきました。ご容赦ください。