原因の4割は想定外の過失らしいですよ
最初は、ほんの好奇心だった
生まれてからずっと暮らしていた小さな部屋、毎日ご飯を持ってきてくれるおじいさま
そんな毎日を過ごしていたある日、私はその部屋を抜け出した
部屋の外に広がっていたのは何処までも広がる青空でも、広大な草原でもなく、鉄の壁とパイプが張り巡らされた施設だった。
小一時間程歩いていると、大きな鉄の扉があった。
どうにか開かないかと触っていると、向こう側から開き、思わず物陰に隠れる
「全く、シーガス局長も趣味がわるいよな?わざわざ実験体と生活するなんて」
「それも実験の内なんじゃないのか?」
「さぁな、とにかくこっちは頼まれた仕事するだけだよ、実験体イヴリースの確保だ」
「つってもまだあの実験体は空っぽなんだろ?さっさと終わらせちまおう」
歩き去った男達の言葉を聞き、私は混乱していた
何でおじいさまの名前を?局長って?
実験体って何?空っぽ?
何も、分からなかった
ーーー
さらに歩くと、突然目の前の扉が開き数人の男の人達が慌てた様子で飛び出して行った
急いでその部屋に入り、扉を閉める
部屋の中を見渡すと、板状の水晶が何枚も壁に嵌め込まれており、そのひとつが何処かの部屋の様子を映し出していた
部屋の中では2人の少女が向かい合っている
突如、片方の少女の姿が消え、もう片方の少女が軽く手を振ると、先程消えた少女が激しく苦しみながら姿を現した
やがて、苦しんでいた少女が微動だにしなくなったところで、水晶は光を失った
たった今見たものに困惑していると、身体に違和感が走る
それは今まで無かったものが突然自分の中に産まれたような異物感だった
訳も分からず苦しんでいると、別の水晶が光り始めた
ーーー
およそ1時間後、最後の水晶が光を失うと同時にその場に蹲る
全ての映像が、先程の少女が様々な能力を使う子供達と戦う内容であった
1つ観終われば自分の中に異物感が産まれ、苦しんでいる内に次の映像が始まる
「に…逃げなきゃ…」
何だっていい、とにかくこの施設から逃げなければ…
部屋を飛び出したところで、先程の映像がフラッシュバックする
…もし、まだ捕まっている子供が居たら?
再び部屋に戻り、水晶を操作する
すると、何かの図面が浮かび上がってきた
図面にはこの施設の見取り図と、主要な動力機関の場所が描かれていた
図面を見るに、この動力機関っていうのを止めれば出口までの扉のロックが開く筈…
この部屋から動力機関がある部屋までの道程を頭に叩き込み部屋を飛び出した
ーーー
動力機関室へとたどり着き、扉を開く
「え…何これ…」
部屋の中には沢山の大きくて透明な容器が置かれていて、その中には私と同じくらいの人が浮かんでいた
「見てしまったね、イヴリース」
声と同時に部屋の扉がバタンと閉じられる
「お爺様…」
「一体型どうやってここまで来たんだねイヴリース、部屋には鍵をかけていたしあの区画から出るには門が閉まっていただろう?それに何故この部屋に?」
お爺様はいつものように話しかけてくる
けれども違う、言葉の裏、心の中では私に対して激しい怒りを抱いている
「お爺様、この部屋は何なの?あの人達は?」
「ふぅむ…どうせ忘れる・・・のだし、話しても構わんか…あれはな、失敗作なのだよ、皇帝陛下からのお達しである『人造{亜人種}』のな」
人造…つまり…
「作られた人間って事?」
「まあの、最強の人造{亜人種}を創り出し、兵器として運用する。それこそがこの帝国第一研究所、通称『ファースト』の目的なんじゃ、そして記念すべき完成品こそ…君じゃよ、イヴリース」
話を聞いている内に薄々そうなのではないのかという考えが浮かんでいたが、実際にその考えが確かな物だと突きつけられると、流石にショックが大きい
「じゃ、じゃあ…私は…私は一体何なの!?」
「お主は10年前に捕らえた天使族の少女をベースに作成した『〝能力〟や《異能》を記録して再現出来る』人造生命体…さしずめ人造悪魔ってところじゃの」
「人造…悪魔」
「そうじゃ、そして動力機関内のアレはイヴリース、君の失敗作共じゃ、君の〝能力〟や《異能》を記録する特性は簡単に作り出せたのじゃが、アレには命がない。じゃからその性質のみを強化して施設内の〝能力〟や《異能》を全て吸収させて〝能力者〟や{亜人種}共を無力化しておったのじゃ」
「酷い…酷すぎる」
「さてと、老人の長話もそろそろお開きにしようかの」
シーガスの言葉を合図に部屋の扉が開かれ、数名の武装した男が入ってきた
「捕らえろ」
武装した男達が私を捕まえようと取り囲む
いま捕まる訳にはいかない、どうにか逃げないと!
その為の手段を考えていて、お爺様の言葉を思い出した
私には、見た〝能力スキル〟や{異能アビリティ}を再現出来るって
ならさっきの部屋で覚えた違和感の正体は、〝能力〟や《異能》を覚えた感覚だったとすれば?
…考えている時間はない!兎に角今はここを切り抜けないと!
頭の中で水晶版で見た〝能力〟や《異能》思い出して使えそうなものを選び出す
するとどうだろう、使った事の無いはずの〝能力〟や《異能》の使い方が手に取るようにわかる
「〝透明化〟!」
「何!?」
目の前に居た私が透明になり、武装した男達が困惑する
「いつの間に〝能力スキル〟を…」
次は、この動力機関の破壊
お爺様の横をすり抜けて扉をくぐる
そして部屋の中に手を向ける
「…さようなら、お爺様」
「イヴリース!やめろ!」
お爺様が私に気づいて声を上げる
でも、もう遅い
「はぁっ!」
手の中で空気が一瞬で圧縮され、それが部屋の中で一気に解放される
その衝撃でお爺様たちは吹き飛ばされ、動力機関に繋がれたカプセルをひとつ残らず破壊する
それにより動力源の供給が停止、施設内のあらゆるシステムが停止した
私は最後に、もう一度言葉を残す
「さようなら、お爺様」
ーーー
動力機関を破壊した後、逃げ遅れた人が居ないかとあちこちの部屋を覗いていると、一人の女の子が部屋の中で座り込んでいるのを見つけました
その女の子は私と同じ薄紫色の髪で、背格好もよく似ていて…まるで自分を見ているような…って!
「あの!アナタも早く逃げましょう!」
私の声が聞こえたのか、女の子が振り返ると目を見開いて呟いた
「…私?」
振り返った女の子は、やっぱり私にそっくりで、でもよく見れば目の色だけが違って…
やっぱりそうだ、この子がお爺様が言っていた私の元になった天使族の女の子…って!
「何で逃げないんですか!?他の人はみんな逃げちゃいましたよ!?」
「…私に、自由になる権利なんて無いから」
そう言って向こうを向いてしまった
「そんな、どうしてそんな事言うの…」
「…聞きたい?…私、ここに最初に収容されたの。希少な天使族のサンプルとして、それからはずっと色々な実験の材料にされてきた…ある日にね、広い部屋に連れていかれたと思ったら別の〝能力者〟の子と二人にされてね、『戦って勝った方だけを生かしてやる』って…知ってた?ここただの研究所ってだけじゃなくて〝能力者〟とかの子供達を殺し合わせてそれを見世物にすることもあるって、それで私も最初は嫌だって、でもあの男は『それなら二人とも殺す』って…それで私…怖くなって…死にたくない、死にたくないって…気がついたら相手の子を…殺してた、天使族としての力を…人々の魂を正しく導く為の力を使って…それからも何人も殺した…正しく導かれなかった魂は現世をさ迷うことになるのに…そんな私に、自由になる権利なんて、無いと思わない?」
「…いいえ!自由になる権利がない人なんて居ません!」
「だとしても!」
「それに!あなたは知らないかもしれないけど、あなたが生まれてきてくれたおかげで、わたしはここに居るんです!言ってしまえばあなたは私のママなんです!あなたは自分の娘を、1人では何も出来ない、何も知らない娘を見捨てるんですか!?」
「ちょ、ちょっと何を言ってるのか理解出来ないんだけど…え?私がママ?娘?」
「…兎に角!私はあなたが居なければ生まれてこられなかった、だから私はあなたをここに置いていくなんて出来ません!」
説得のつもりで勢い余ってママとか無茶苦茶な事を口走ってしまいました
その時、部屋の外からドタドタと足音が聞こえてきました
「見つけたぞ!」
武装した男達が扉を開けて部屋の中に入ってきました
「…はぁ、貴方が何者なのかは後で聞いてあげる、ここを出てからね」
「あ、危ないよ!ええっと…」
「…エンジェよ、それに…」
エンジェは男達を睨みつける
「今まで好き勝手された分の仕返しもしたいから」
エンジェが男達を睨みつけると、男達が激しく苦しみ、そして動かなくなってしまいました
「ふぅ…逃げるわよ、ええっと…」
「…あ、私はイヴリースだよ!」
ーーー
施設を逃げ出して丸1日獣道を走り続けて、そろそろ休憩をしようという所で、丁度開けた場所に出た
「はぁ…はぁ…ここで少し休憩しましようよ…」
「そうね…」
2人は地面に腰を下ろし、一息つく
暫く休んでいると、エンジェが口を開いた
「ねぇ、そろそろアナタの事教えてくれる?」
「え?は、はい!」
それからイヴリースは自分のことを話した
今まで何処で暮らしていたか、どのように真実を知ってしまったのか、自分が何者なのか、エンジェとの関係、自身の《異能》等…
全てを聞いたエンジェは暫く考え込んだ後、再び口を開く
「なるほどね、色々腑に落ちたわ。何で私があんなに長い間捕まっていたのかも、アナタが私の事をママなんて言い出した理由もね」
「そ、それは言わないで下さい〜!」
イヴリースが真っ赤な顔でエンジェをポカポカと叩く
「ふふっ、ちょっとからかっただけよ、それにもうひとつ腑に落ちた事もあるわ」
「なんです?」
「あの施設から逃げる時に私、《異能》を使ったでしょう?あれは生者の魂に直接ダメージを与える類いのものだから近くにいたアナタにも多少影響があるはずなの、でも何ともなかったでしょう?」
「はい」
確かに施設内でエンジェが《異能》を使った時、施設の男達はとてつもない苦しみ方をしていたがイヴリースは何ともなかった
「この世界のあらゆる生物は魂を持っている、それは本来神が定めた不変の事実、例外はひとつだけ、人工的に生命を生み出すという禁忌の果てに生まれた命のみ」
「ええっと…つまり?」
「人造悪魔であるアナタには魂が宿ってないって事よ、まぁ余り気にしなくても良いとは思うけれど?」
「はぁ、じゃあ気にしません!」
イヴリースの底無しのポジティブさにエンジェは小さくため息をついた
「…それで、今後どうしましょうか」
「出来れば、行きたい所があるの」
「行きたい所ですか?」
「ええ、昔私が親と暮らしていた村、そこに行きたいの」
ーーー
「私達はね、死んだ後他の天使に魂を導いてもらう必要があるの、でもお父さんとお母さんの魂を導いてくれる天使はあの村には居ないから、私が行かないと…」
エンジェの故郷への旅路は、1週間に及びました
ようやく辿り着いたエンジェの故郷は、酷く荒れ果て住民の気配は全くありませんでした。
そこに居たのは、おじいさまと、2人の黒装束の男でした。
私を捕まえに来た男達との戦いになり、私は炎の壁を作り視界を遮りました。
ほんの一瞬、どうやってこの窮地を脱するかを考えた瞬間、炎の向こうから短刀が飛んでくるのが見えました
そして、私と短刀の間に割り込むエンジェが…
「ああっ!」
エンジェの背中に短刀が深々と突き刺さりました。
「エンジェ!?」
「イヴ…リース…ごめん…なさい」
短刀が急所を貫いたようで、みるみる血の気が失われてゆく…
「何でエンジェが謝るの!とにかく治療を…」
「いいの…多分…今までのバチが当たったのよ…イヴリース…お願いがあるの…」
「…なに?」
「私の《異能》を使って…ぱぱとままの…魂を…正しく導いて…」
「…分かった、やってみる」
「それと…」
エンジェは震える手でイヴリースの右手を掴む
「私の…夢…色んなものを見て見たいっていう…アナタが叶えて…」
「…うん!」
「約束…よ?」
「わかった…約束」
「ありが…とう」
エンジェの身体から力が抜け落ちる
「…エンジェ…?…ねえエンジェ!」
目の前のエンジェの命の灯火が消えたのを感じた
途端に孤独感を感じる
エンジェに頼まれた事を1人で…私だけで…
そう考えるだけでとてつもない不安感と虚無感に襲われる
私の周りのこの炎が晴れたらあの2人が襲ってくるに違いない
もし捕まったら、きっと次は無い…
今の私は…ひとりぼっち…
「…嫌、エンジェぇ…」
出会ってからほんの1週間だけだったけれど、私にとってはかけがえのない人だった
…なら、私自身の手で、取り戻す!
「エンジェ、あなたの力、借りるね」
エンジェの《異能》…それを再現して、エンジェの魂を…一緒に連れて行く
エンジェの魂は…あった!まだ近くに居る!
その魂を…わたしの肉体に…魂無き肉体に!
身体の造りは…同じ
「…駄目、足りない!」
エンジェが使うよりも、より精密に、緻密に操作しないとエンジェの魂が傷付いてしまう
その為には私の造られた《異能》を…その全てを使わないと
そう頭に浮かべると、ふと1つの単語が頭に浮かぶ
それは…名もなき私の《異能》の、本当の名前…
その言葉を、口にする
「…{おとぎ話}」
ーーー
「…んん〜、懐かしい夢〜」
目を覚ましベッドから立ち上がると、横で寝ていたミッドナイトがつられて身体を起こす
「おはようイヴ、夢を見てたのか?」
「うん、私とエンジェが初めて会った時の夢だよ」
「それは…懐かしい夢だな…うん」
若干顔の引きつっているミッドナイトの肩を掴んで、引き起こす
「…ねえ、もしかしたら何かあるかもしれないしさ!行ってみようよ!『ファースト』に」
「…こっちの研究施設は粗方調べ終わったらしいし、一理あるな」
ーーー
「…と、いう訳でやって来ましたー!我が生まれ故郷ー!」
イヴリースが生まれた研究施設『ファースト』は、かつて栄えた帝国にあり、およそ600年前のイヴリース脱走騒動の少し後に解体、研究施設自体は封鎖され現在では周辺地域の砂漠化が進み人の気配は無い
ファーストの建物前に降り立ったイヴリースは、違和感を覚える
「…アウラス、見て」
イヴリースの視線の先には、施設の入口周辺に散らばった砂に付いた足跡があった
「先客か」
「多分」
慎重に奥へと進むと、所々に最近人が手を加えた痕跡が見受けられる
暫く歩いて辿り着いたのは、かつて動力機関室だった部屋
しかしその扉は明らかに補修され、扉としての機能を果たしている
イヴリースがそっと扉に耳を当てる
「…誰かいる」
「分かった、任せろ」
ミッドナイトが扉を開け、中に踏み込む
「…何者だ?」
明かりのついていない暗い部屋の中に居た人物は、体表の殆どを純白の羽に覆われ虚ろな表情をしていた
「…あー?」
その男は虚ろな目をミッドナイトに、そしてその後ろのイヴリースに向ける
「…あ、ああ…え……ええ………エンジェ=イヴリース!」
羽の男が目を見開き、イヴリースに飛びかかった
「イヴに触れるな」
ミッドナイトが羽の男の顔面を掴み、地面に組み伏せる
だが、羽の男はスっと溶けるように暗い部屋の闇に消えた
「ッ!イヴ!今のは!?」
「〝能力〟だよ、任せて」
イヴリースの周囲を囲うように、3冊の本が現れる
イヴリースがその中の1冊、天使と悪魔の翼が表紙に描かれた本に手をかざすと、本が開く
「{おとぎ話}」
イヴリースが羽の男の〝能力〟を目にしたことで、羽の男と同じ〝能力〟を使えるようになる
イヴリースが部屋の闇に潜ると、羽の男はギョッとした表情を浮かべる
「な…なんでぇ…!」
「答えてあげる義理は無い!」
イヴリースが羽の男に向かって飛びかかり、両腕を掴む
「上に参りまーっす!」
イヴリースがひときわ大きく翼を羽撃かせ、闇の中から飛び出す
元の部屋に飛び出したイヴリースは、その勢いのまま羽の男を天井に投げつけた
「ひぎゃっ!」
男は僅かなうめき声をあげた後、地面に落ちた
「いぇい!勝ったよ!」
「よし、それじゃあ調査の続きだな」
ーーー
気絶している内に拘束した羽の男は、およそ1時間程で目を覚ました
「…あー、もしかして今から殺される感じッスか?それなら出来れば気絶してる内に殺って欲しかったんすけど?」
「聞きたい事が幾つかある、何故イヴに襲いかかった?」
「人聞き悪い事言わないで欲しいんすけどー!ずっと探してた相手が急に目の前に現れたらテンション上がって握手の1つでもって考えないんすか?」
先程までの雰囲気と一転して、かなり軽い雰囲気をした男に面食らう
「…この施設の情報を調べた、『A=E細胞』を流出させたのはお前だな?」
「…そうっすよ、ただ、わざとじゃないんすよ」
男は自分の、羽まみれの腕を見つめる
「日本の研究施設で色々身体を弄られて{不死者}になったんすけど、めっっっっちゃ頑張って逃げ出したんすよね、そしたら丁度満月で、栄養過多の暴走状態になっちゃって、全身から羽が生えてきたと思ったらこう…ふっと意識トんじゃって、どうもその間にあちこちぶっ飛んでたみたいで、エネルギー切れでマトモに意識戻った時にはあちこちに『A=E細胞』ばら撒いた後だったんすよ。勿論知らぬ存ぜぬで終わらせるつもりは無いっスからこうして自分が造られた施設に戻って…」
「ちょっと待って、造られたって?」
イヴリースの質問に男は答える
「あ、そこまではまだ調べてなかったっすか?ここは『プロジェクト・イヴリース』の騒動の後も結構稼働してたらしくてっすね、主に優秀な人材のクローン量産の研究をしてたらしくてすね、自分もその優秀な人材のクローンって訳っすね、それで日本の方の研究施設に研究用のモルモットとして送られて…って感じっす、この拘束解いてくれたら色々資料見せれるっすよ」
「…いいだろう」
ミッドナイトに拘束を解かれた男は、テーブルに置かれたタブレットを手に取り、少し操作してミッドナイトに手渡す
その画面を見たミッドナイトは、驚愕に目を見開いた
「それ、昔ここにあった帝国の皇帝の近衛やってた〝能力者〟らしいっすよ」
タブレットには男の元になった人物の情報が映し出されており、ミッドナイトはその名前から目が離せなくなっていた
『ヴァル・ロールナイツ』
「え!?この人って」
タブレットを覗き込んだイヴリースが驚愕の声を上げた
「…」
ミッドナイトが男の顔をまじまじと見つめる
「な、なんすか?」
「ヴァルは…昔の俺の部下だ」
「昔の…って!ヴァル・ロールナイツは600年前の人間なんすよ!?それを部下って…アンタ人間じゃないんすか!?」
「人間だ」
「じゃあ何で!?」
「教える義理は無い」
「んがああああ!!!」
男が激しく頭を抱える
「まあいいっす、それより手伝って欲しい事があるんすよ」
男は再びタブレットを操作する
「俺の計算さえ合ってればっすけど…『A=E細胞』の罹患者、治せそうなんすよね、大元である『エンジェ=イヴリース』の協力さえあればっすけど」
「本当!?もちろん協力するよ!ええっと…」
「名前はあるのか?」
「無いっすよ、好きに呼んでくださいっ」
ミッドナイトが少し考えた後、口を開く
「『フルムーン』だ、ヴァルのコードネームだか、分かりやすくていい」
「フルムーン…良いっすね!宜しくっす!」




