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秘密の9割以上は既に秘密では無いらしいですよ

朝、いつも通りの時間に目が覚める


自室を出て投函された新聞を取りに玄関を開けてポストから新聞を取り出す


朝日を浴びてちゃんと目が覚めたところで、何の気なしに庭を見ると、思い切り羽を広げて日光を浴びているユキさんと、庭に生えている木にしがみついているミドリさんが目に入る


「…セミみたい」


「い、言わないでください…気にしてるんです…」


「あぁ…ごめんね?」


ミドリさんは植物の生命力的なものを{糧}にしているらしくて、時々庭の植物と戯れている


「そろそろ朝食の時間だと思うよ?」


「「はーい」」


不死者(イモータル)}の2人は本来食事をとらなくても問題無いが、この家では皆で食事をすることにしている


皆で集まって食べる朝食というのは、何となく気分がいいものだ


そんな事を考えながらバターナイフを手に取ったその時、家の窓を突き破って何かが投げ込まれた


「な、何事っすか!?」


「…不味い!」


投げ込まれたそれ(・・)が何なのか分かった瞬間、咄嗟に月詠さんを庇うように抱きついた


直後、爆音と共にリビングが吹き飛んだ





ーーー





一瞬か、1分か、1時間か…


意識がハッキリした直後、背中に激痛が走る


「っぐあぁあああ!!」


「黄泉山さん!一体何が!」


「手榴弾…だね………」


朦朧とする意識の中、リビングの隅の床に手を触れる


「ここに…隠し通路が…」


「黄泉山さん!喋らないで!」


「2人共大丈夫っすか!?」


ユキさんとミドリさんが煙の向こうから姿を現す


「ユキちゃん!黄泉山さんが!」


「早く…逃げるよ…」


隠し通路を開いて全員が逃げ込んだのを確認して、ミドリさんが通路を塞ぐ


そこで、俺の意識は途絶えた





ーーー




気を失った黄泉山さんをミドリちゃんとユキちゃんの2人がかりで運ぶこと数十分、通路の出口が見えてきた


「あそこ!出口あったよ!」


「や…やっとっすか…」


出口から飛び出すと、どうやら裏路地のようだ。日光で目が眩む


「おい、無事か!?」


「誰!?」


声のした方を見ると、見覚えのない男の姿


「帳の仕事仲間だ!アイツの家が爆発したから出口で待ってたんだよ!ほら貸せ!」


男の人は黄泉山さんをユキちゃん達から引き受け、背負う


「何があった?」


「朝ご飯食べてたらいきなり手榴弾が投げ込まれて…」


「キタキューかよ!?」


「あの…名前は?」


「あん?蛇籠雀蘭(じゃかごじゃくらん)だ、雀蘭でいいぞ」


雀蘭と名乗った男の人は黄泉山さんを背負ったまま答える


「雀蘭さん、どこに向かってるの?」


「医者の所だ。信頼できて、腕が確かな医者の所にな」




ーーー




暫く歩くと、雀蘭さんは1件の建物の前で立ち止まり、扉を叩く


「ドクター!雀蘭だ!」


「待ってたよ!中に入って!」


扉から現れたのは真っ青な髪色で、白衣を纏った長身の男性だった


ドクターと呼ばれた人は雀蘭さんを連れて建物の中に戻ってゆく


治療室らしき部屋に着くと、雀蘭さんが黄泉山さんを治療台に寝かせた


「これは酷い…雀蘭さん、暫くかかりますので客間でお待ちください」


「頼む、ほら行くぞ」


雀蘭さんに連れられ、別室に移動した私達はソファに腰掛け、何となく部屋を見回す


「…あんまり病院って感じじゃないんだね」


「まあ、先生は大っぴらに病院やってる訳じゃないからな、オレたちみたいな連中がこっそり治療に来るような所だ」


そうこう話している内に疲れからいつの間にか眠ってしまっていたようで、肩をゆすられて目が覚めた


目を開けると例の青髪の医者の姿があった


「起きてください、黄泉山さんの治療が終わりました」


「本当ですか!」


「一命は取り留めました。ですが当分入院です」


良かった、そう思うと身体から力が抜けた


「事情は雀蘭さんから聞きました、暫く泊まっていってください。」


「ありがとう、私は月詠 昴です。この2人はユキちゃんとミドリちゃん」


「ベイン・エスカーです、よろしくお願いします」


ベインさんと自己紹介を済ませた後、私達の寝室に案内してもらった


ベッドに倒れ込み、気がついたら朝になっていた


なんとなくダラダラしていると、部屋の扉がノックされた


「月詠さーん、起きてますかー?」


扉の向こうから、若い女性の声が聞こえてきた


「あ、起きてます!」


「朝ご飯持ってきましたのて、良かったら食べてください」


「ありがとうございます」


扉を開けて入ってきたのは、真っ赤な長髪の綺麗な女性で、思わず見惚れてしまった


「…月詠さん、どうかしましたか?」


「はっ…いやその…綺麗だなーって…ははは…」


「ふふっ、ありがとうございます。私アーテリーって言います。ベインの姉です」


アーテリーさんはお盆に乗った食事を机の上に置くと、部屋を立ち去った


「…ホントに凄い綺麗な人だったなぁ」




ーーー




昼になって、黄泉山さんが目を覚ましたって知らせを聞いて、病室に向かった


病室には雀蘭さんとユキちゃんミドリちゃん、それにアーテリーさんが待っていた


「お待たせしちゃいました?」


「大丈夫ですよー、それじゃあ診断結果をベインから預かってるので説明しますね。とりあえず背中の方がかなり重症ですね、火傷もですけど脊椎に損傷が出てます。黄泉山さん」


アーテリーさんは黄泉山さんに笑顔を向ける


「滅茶苦茶痛いけど今日治るのと、2週間くらいかけてゆっくり治すの、どっちがいいですか?」


「…ゆっくりで、ベインのアレは痛すぎて無理だよ」


「了解です!それじゃあこの後すぐに始めちゃいますね」


アーテリーさんがウキウキと施術の準備を始める


「…ベインさんの治療ってそんなに痛いの?」


「月詠さんが大怪我した時に紹介状書いてあげるよ」


「…遠慮しとく」

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