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閑話「『約みはラジオ』ゲスト:侘原澪」

 以下に示すのは、4月28日(金)に鎖倉高校で開催された新入生歓迎球技大会の昼休みにおいて、鎖倉高校放送部によって放送されたラジオ番組「約みはラジオ」の一部である。

 ちなみに、「約みはラジオ」とは、毎週金曜日の昼休みに放送される、放送部部長の三原がパーソナリティーを務める「みはラジオ」の、毎月末の特別編といったところで、月曜日から木曜日のパーソナリティーである柳楽や桑原も交え、スペシャルでビッグなゲストを招いて興味深いトークを、ときには重厚に、ときには軽妙に繰り広げる番組である。


三原「今日は金曜日!」

柳楽「しかも、月末!」

桑原「そうだ。あっしら三人組の出番だぜ!」

柳楽&桑原「約!」

三原「みはラジオ!」


 ―オープニング曲―


柳楽「はい、こんにちはぁ。今月もね、『約み』の時期がやってきましたねぇ」

桑原「そうですねぇ。毎月、この時期になると乳歯(にゅうし)が生えてきそうになりますけども―」

三原「はい。奇想天外なトークが始まりそうなので、さっそくゲストを紹介していきたいと思います」


三原「我が県が誇るスーパーアナウンサー、影山(かげやま)セントラル放送に勤める侘原澪(わびはらみお)アナです!」


 ―拍手&効果音―


侘原「どうも。ご紹介に預かりました、侘原澪です。鎖倉高校放送部の皆さん、初めまして。この放送をお聞きの生徒の皆さんも初めまして」

MC3人「初めまして!」


柳楽「おぉ、おぉ、リスナーたちのあまりの歓声に校舎が身震いしてますなぁ」

桑原「えー、特に男子生徒諸君は、オレの現在の役どころにジェラシー()()()()であろう。しかし、先に言っておくが、これはオレの常日頃から積んできた(たっと)い徳によるものなので、オレへの批判はお門違(かどちが)いでありんす。ごめんあそばせ」

三原「あなたは、いつも自分の顎髭(あごひげ)()でてるだけでしょう?」

桑原「いやいや、失敬な!」

柳楽「踏んだな、桑原の地雷を」

桑原「真心と丹精を込めて髭を愛でることと、昼下がりに微笑みながら優雅に家庭菜園を育むことは同義なんですよ?かのハイデガーだって、こう言っていますよ。『髭こそがこの世界の存在を露わにする』とね!」

柳楽「お、髭格言の新作」

三原「さて、髭の話は()り上げて、侘原アナにお話を伺っていきます」

侘原「……っ」

三原「…侘原さん、大丈夫ですか?」

侘原「―あ、ふふっ、いえ、大丈夫です。皆さんの会話が、ぐふっ、ツボにハマってしまって…」

柳楽「電波の向こうのの凛々(りり)しいお姿とは裏腹に、意外と茶目っ気も備えてる予感…」

桑原「リスナーの男子諸兄(しょけい)よ。崇高(すうこう)な精神を内に秘めるオレだからこそ、正気を保っていられているが、キミたちがこの場にいたなら、どんな痴態(ちたい)を晒していたか想像もつかない」

三原「あなただって類を見ない程に鼻の下が弛緩(しかん)していますよ、桑原君」

侘原「あははっ、皆さん、ホントに面白いですね」

三原「あっ、すみません…。では、少々強引ですが、トークの方に入らせて頂きます」

侘原「はい」


三原「まず、今日はご足労(そくろう)頂いて大変ありがとうございます」

柳楽&桑原「ありがとうございます」

侘原「いえいえ。こちらこそ、お招きに(あずか)り光栄です」

三原「そう言って頂けて嬉しい限りです。さて、今や関西全域にその名を(とどろ)かせつつある侘原アナですが―」

侘原「いえいえ、滅相(めっそう)もないです」

柳楽「いやぁ、その美貌(びぼう)に、そのアナウンス技術なら轟いて(しか)るべきですよ。日本全土、いや、海外にまで名声が届いても不自然じゃない」

桑原「うむ。全くその限り」

三原「ふふっ、それは私も同意見です」


三原「では、侘原アナ。アナウンサーを目指すことになった契機(けいき)や、この仕事のやりがいなどお聞きしてもよろしいですか」

侘原「もちろんです。ええ…そうですね…。契機らしい契機と言えば、はっきりとアナウンサーを志し始めたのは中学生ごろでしたね。恥ずかしながら、物心がついた頃から声を褒めて頂くことが多くて、人前で何かを朗読するような、他人に声を届ける行為を漠然と好きでいました」

三原「幼い頃から才能の片鱗(へんりん)はあったわけですね」

柳楽「侘原さんの声は、天の川みたいな深みと煌めきがあるよねん」

桑原「心地良い緊張感を与えてくれますな」

侘原「あはは、ありがとうございます。でも、お三方もとても素敵な声をされてますよ。それに、三原さんは全国レベルの実力者だし、柳楽さんと桑原くんの手がける番組は校内で大人気らしいじゃないですか」

MC3人「えへへへへへぇ……」

侘原「ふふふっ、息ぴったりですね。あ、それで、漠然とした感覚しか持っていなかった私ですが、中学で放送部に出会い、専門的技術を磨いていくにつれて、そうした感覚も具体的な輪郭(りんかく)を帯び始めていったんです。そうして気づけば、人々に向けて多種多様な情報を、自分の声を通して、正確かつ出来る限り平易(へいい)に届けるアナウンサーという職業に憧れを抱いていましたね。これは、仕事のやりがいとの話にも通じていますかね…?自分の声や立ち居振る舞いが評価されたり、自分が届けた情報が人や街を多少なりとも支えていたりすると、やっぱり胸が熱くなります」

三原「なるほど…。興味深い話です…」

柳楽「あの…すごく無粋な質問かもなんですけど、侘原さんほどの実力者だったら、キー局の就職も充分狙えたんじゃないですか。なぜ、地方局に?」

侘原「そうですね…。もちろん、全国津々浦々に声を届けられるうえに多種多様な番組に参加できるキー局でお仕事をすることも考えたことはあります。ですが、自分が生まれ育った地元の人たちや街並みに寄り添ったお仕事の方が、私の肌には合っていると思ってこの選択をしました」

柳楽「超かっこいい…。凛々しい…。でも、侘原さんを独占したことで、他県の者どもに槍を持って攻め入られ、侘原さんを巡って、この日の本に二度目の乱世が訪れかねないですね…」

桑原「上等じゃ!立ち上がれ!スピーカー向こうの男児ども!あっしらに大義はあり申す!」

三原「ちょっ、桑原く――校舎が……揺れ…てる…?」

柳楽「あはははははっ!男子たちの怒号だ。桑原、おまえこそ将軍だよ」

侘原「あははっ、本当に面白い学校ですね」

三原「お恥ずかしい…」


(中略。フリートークなど)


柳楽「趣味とかあるんですか?」

侘原「あります。恥ずかしながら、カラオケが趣味でして…」

桑原「ほぉ…。侘原氏ともなれば、さぞ上手いんでしょうな」

侘原「いえ…本当に全く大したことなくて…」

三原「謙遜なさらないでください。90点越えを連発なさってるんでしょう?」

侘原「いえ…そんな高い点、取ったことないです…。80点すら無いです…」

柳楽「意外や意外」

侘原「メロディーが付いちゃうと、てんで駄目で…」

桑原「男児ども!それもまた魅力だとオレは思うがどうだ!」

三原「ちょっ、桑原く――校舎が……揺れ…てる…?」

柳楽「それ何回やんだよ」

侘原「お恥ずかしい…」


(中略。放送部員を交えて部活動についての相談コーナーなど)


三原「それでは、本日はありがとうございました」

柳楽&桑原「ありがとうございました!」

侘原「こちらこそ、楽しいひと時をありがとうございました」

柳楽「そろそろ昼休みも終わりだ。野郎ども、球技大会、午後の部はじまるぞー。体育館に集まれー」

桑原「そうだぞー。侘原氏が少しだけ顔を出してくれるらしいぞー」

侘原「伺わせていただきますね」

三原「『約みはラジオ』、今月はこのあたりでお暇させていただきます。来月もお楽しみに」

柳楽&桑原「(さん)ッ!!」


 ―エンディング曲―


 昼休みの終了を告げるチャイムが鳴った。

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