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鎖町百景-百人の異能力者の群像劇-  作者: 読留
卯月・七不思議戦争
31/58

閑話「二匹の厄介オタク」

「おい、伊藤南無太(厄介オタク)。何でお前が世恋先輩たちと一緒にいんの?あと、さっき話してた内容も教えろ」


 後方から駆け足で伊藤に近づいた私は、彼の肩を掴んで問い詰める。


「げげっ、長谷川清乃(厄介オタク)氏ではないですか。後を尾けてたんですか?趣味の悪い」


 私が彼を呼んだように、彼も私をその蔑称(べっしょう)で呼ぶ。しかし、彼はともかく、決して私はそんな人種ではないので彼の言い草は的外れである。何の意趣返(いしゅがえ)しにもなっていない。


「うるさい、早く教えろ」


 私は、戦闘態勢に入る。幼い頃から習い続け黒帯まで得た空手の技術が今日も今日とて生かされる。じわじわと彼を道路脇に追い詰める。


「ひっ、クソォ。『空手に先手なし』じゃないんですか?」

「お前には適用されない」

「……分かりましたよ。小一からあなたに喧嘩(なぐりあい)で勝てた試しが無いですしね。まあ、口喧嘩(ディベート)では別ですが?」


「―しゅっ」


 渾身の右上段突きを彼の顔面の寸前で止める。


「次は、当てる」

「ああ、もう!分かりましたよ!」


 ※※※


「よし、行って良いぞ」

「はいはい。どうもありがとうございます!」


 嫌味ったらしく声を張り上げて、彼は再び帰路を辿って行った。


「七不思議戦争、か」


 世恋先輩たちがそんな物騒な(いさか)いに巻き込まれていたとは。それに、異能部か。やはり私の解釈レーダーが睨んだ通り、世恋先輩と宇治山先輩の間には何か深い繋がりがあるようだ。


「入りてええええ」


 異能部。入りたいにも程がある。だが、今入部したところで私には全く霊感が無い(正直、幽霊などエンタメの一環として受容しているに過ぎなかったし、伊藤の霊感など他人の興味を引こうとする戯言だと思っていたが、世恋先輩がいるというなら幽霊はいるのだろう)。そのため、七不思議戦争の役にはおよそ立てないであろう。世恋先輩のお荷物にはなりたくない。


「うむむむむ……」


 とはいっても、


「入りてええええええよおおおおおお」


 この気持ちに噓はつけない。


「……よしっ」


 私は決意を固め、徐々に夕陽に染まりつつあるアスファルトを駆け出した。

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