4/14-④「取材記録:生徒会長」
生徒会室前にて。
「あなたたちが噂の異能部ね。教頭先生から話は聞いてるわよ。あの岸波君も加入したとか。本当に不思議な面子ね。それで…話って何かしら」
黒い長髪の一部を三つ編みにして垂らしている、我が校の生徒会長・色恋は笑顔ながらも少し怪訝そうな眼差しを私たちに向けてくる。彼女の上の名前は流石に知っている。下の名は知らないが。彼女のこの学校での人気は異常だ。校則の緩和、学力の底上げ、新たなイベントの開催。そして、容姿端麗、文武両道、温厚篤実。この学校で生活するうえで彼女の名は嫌でも耳に入る。
「七不思議?なるほど、部活動の一環という訳ね。…放送部の子から聞いた話なんだけど」
一瞬だけ考える仕草を見せたが、すぐに思いついた様子だ。
「ある日、その子が朝の放送の当番に遅刻してしまったらしいの。それで、他の放送部員に謝罪した。ところが、朝の放送は何の異常もなくいつも通り進行していたらしく、みんなに不思議な顔をされた。一応その子の声では無かったから、みんなはてっきりその子が代役を頼んでいたものと思っていた。もちろん、その子はそんな覚えはない。そこで部員全員に確認したが、誰も放送などしていないらしい。思い返してみると、部員の誰の声でも無いような気がするらしい。
じゃあ、あの声は誰のものだったのだろうか?
……という話よ」
腕を組みながら、色恋は淡々と語り終えた。
「それは未解決なんですか」
宇治山君が聞く。
「ええ。何ヶ月か前の話だけど、未だに放送室に入るのを怖がってる部員もいるそうよ」
「他に放送室にまつわる話は無いんでしょうか」
私が問うた。
「……聞いたことはないわね」
「そうですか。ありがとうございます」
軽く会釈して立ち去ろうとする。
「あなたたち」
またまた呼び止められた。何だというのだ。揃いも揃って。
「……いや、何でもないわ。部活動頑張ってね」
色恋生徒会長は、少し物憂げな表情を見せたかと思うと、すぐに手本のような微笑みをこちらに向け、激励の言葉を寄越してきた。