4/14-②「取材記録:二年生 軽音部 女子生徒」
2-6教室にて。
「七不思議?うーん、あんまりそういうの知らないけど…音楽室の噂なら吹部の子から聞いたことあるよ」
彼女は軽音部の確か西尾…だったと思う。去年、軽音部に入部していた時期にやたらと話しかけてきたので覚えている—名前は覚えていないが。そして、私が退部したきっかけの一つでもある。
「それってどんな?」
「えーとね、深夜に誰もいないはずの音楽室からピアノが鳴ってる時があるらしいのね。それは肖像画から出てきた音楽家たちが演奏している『死の音楽』で、最後まで聴いたら死んじゃうー、みたいな感じだったよ、確か」
「なるほど…協力ありがとう」
宇治山君がそう礼を言ったので、私も軽く会釈してその場を後にしようとした。
「ちょっと待って、お二人さん」
また呼び止められた。またあの質問だろうか。
「あのさ…長良井さんってもう音楽には興味ない感じ?音楽というか、ロックに。宇治山君はどう?」
質問の意図が分からない。そんなことを聞いてどうするというのだ。
「……ないわね」
はっきり伝えておく。これで再び勧誘などされようものならたまったものではない。
「俺も特には………」
「そっか……まあ、いいや。一応これ渡しとくね。気が向いたら来て」
黒を基調としたシックな色使いのフライヤーを手渡される。
「個人的に今一番勢いがあると思ってるインディーズバンドと対バン組んでもらうことになってさ。良かったら来てね、じゃっ」
これである。西尾のこういうところが苦手なのだ。誰彼構わず懐に入れようとする態度。やはり距離感というものは重要である。