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訳の分からない世界は嫌いなので  作者: ぺん ぎんこ
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sideシスター

私がこの教会に着任してから五年が経つ。

二十二にして、教会を一つ任せられるなど、ありがたい話だと思う。

私が信仰しているキェリク教は二大宗教の一つであり、その教徒の数は数えるのも馬鹿馬鹿しいほどにいる。

教会はどの街にも一つはあり、田舎町にすら建っている。街の権力者も教会には気を使う。それだけ影響力と金がある組織だ。

そんな組織で、私は本来なら教会を任せると値しない地位にいる。

組織の階級は下から一般信徒、特位教徒←シスター、司教徒、特位司教徒、枢機卿、特位枢機卿、四卿、教皇と別れている。名前など覚えなくて良いけども、本来なら大きい街の教会を一つ任せられるようになるのは特位司教徒からなのだ。

それなのに私なんかが着任したのは元は有名な冒険者だったからだろう。

十歳の頃から冒険者になり、途轍もない速度で階級を上げていった。

才能があったんだと思う。運が良かったのだ。そして、更に運が良い事に引退後の進路は勝手に教会が用意してくれていた。

元より、信徒ではあったので断る理由は無かった。

子どもを育てるのも仕事だとは知らなかったけども、それも孤児の。

今では仕事にやりがいを感じている。子どもが私の手によって育っていくのが楽しいのだ。何も知らない無垢な子どもが私の手によってすくすく育っていくのは、なんとも言い難い達成感があった。そんな中で、一番、私が良く育てたと思えるのがメルトちゃんだ。

最初は何にも知らない子どもだった。時間すら知らない子どもだった。そんな子が、魔法を覚え、計算を覚え、剣術を覚えていった。まるでスポンジのように全てを吸収していった。ただ、どうやら精神的にはまだまだ未熟だけども、いつかは優しい子に育つだろう。

多分だけども、メルトちゃんは育児放棄され、自分で教会に来た賢い子だと思う。捨てられたのではなく、自分で勝手に巣立ったのだと思う。小鳥が親鳥の教育を受けずに飛んだようなものだが、あれだけ賢い子だ、それもあり得るんだろう。

私の教会には孤児が四十人ほどいる。人口が一万人以上いる街にしたら孤児の数が少ないけども、それでも、多い。

彼らの両親はだいたい魔物に殺されたか、戦争で死んだか、教育費が出せずに捨てるしかなかったのだろう。

悲惨だ。だけども、私に可愛い子どもを運んできてくれたのだと思うと、少しは悲惨加減が軽くなる。

私は神に仕えているが、別に善人ではない。

ふと、教会の窓から外を見るとメルトちゃんがメープルちゃんに魔法を教えていた。

あれは、火の魔法だろうか?メルトちゃんが軽く人差し指を振るうと火柱が。

馬鹿げている火力だ。

あれを見ると、自分で天才だなんて恥ずかしくて思えないわ。

メープルちゃんは可愛いらしい、そうは言っても火球程度の火を出していた。どっちも天才ね。

私は窓を開ける。


「おーい、二人とも危ないから違う魔法の練習をしなさい。」

「は?嫌よ。」


メルトちゃんが即答でそう言う。


「他の子に当たるかもしれないじゃない。」

「知らないわよ。私達に近づく方が悪いのよ。」

「そんな言い方は駄目だよ。シスター、ごめんなさい。メルトちゃん、他の練習しよう。」


良い子のメープルちゃんが私に頭を下げた。金色の綺麗な髪が揺れる。


「メープルがそう言うなら、まぁ、いいわよ。」

「ありがとうね、二人とも。」


私はそう言って、窓から離れる。

メルトちゃんと、メープルちゃん。どちらも、その外見はぱっと見、お嬢様だ。少なくとも、こんな教会の孤児だとは思えない。

メルトちゃんはお人形さんみたいに可愛い。まん丸な青と赤のオッドアイで、髪色は真っ白い。肌も陶器のように真っ白だ。

メープルちゃんは綺麗だ。性格とは裏腹に、目は吊り目でなんだかキツい性格をしてそうに見える。

昨日、メルトちゃんを教会に置いておきたいという話をしたが、実際、置いておいた方が良いのだと思う。あの二人は何より、見た目が良すぎる。攫われる可能性が十分にあるのだ。

来年から学校だが、大丈夫だろうか?

不安だ。




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