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訳の分からない世界は嫌いなので  作者: ぺん ぎんこ
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3

私とメープルは木の下に出来た日陰でダラダラし、時間を潰す。

メープルを触ってみたり、突いてみたり、色々な事をしてメープルで遊ぶ。

なんか、色んな顔をするので面白い。

ある程度すると、いつもの様にシスターに呼ばれる。シスターは私が此処に来た時に向かい入れてくれた人間の成体の雌だ。なんかよく分からない神を信仰しているらしい。

私からしたらどうでも良いものにも感謝しろ、だとか言ってくるのでウザい存在だ。昨日も神に感謝する前に夕飯に口を付けたので怒られた。

理不尽だ。

だから、私はいつも神に感謝しないことにしている。毎日、何かを食す時は黙って食べ出す。

『強情な子ね。』とシスターは言うけども、強情なのはそちらだ、と私は言いたい。もう死んで血肉となった物にどう感謝しろと?神なんていう私以下の存在に何故、感謝しろと言うのだ。馬鹿にも程がある。

この世のものは全て個でありながら全である。一枚の絵に過ぎない。その絵の中で何が起きようと、どれだけの場面が描かれようとそれらは一枚の絵でしかない。故に、何も考えることなどないのだ。私は一枚の絵の小さな点に過ぎない。何をしても、点如きがどう変化しようと一枚の絵にはなんら影響しないのだ。

だから、私は自分を変えるつもりはない。

人間に擬態し、人間の常識にはある程度、従うが特段に譲歩するつもりはない。


「ねぇ、メルトちゃん。聞いてる?」


考えごとをしていたら、いつのまにかシスターとテーブルを挟んで向かい合わせになって座っていた。


「聞いてないわよ。」

「……はぁ、まぁ、いいわ。来年から学校に通うことになると思うのだけども、希望とかあるかしら?」

「学校?希望?」

「え?教えてなかったかしら?ほら、エルスがたまにどっか行ってるでしょ?あれは学校っていう勉強するところに通ってるの。で、その学校にはコースがあってね、いろんな「あ、もういいわよ。私は楽なコースがいいわ。希望は楽なコースで。」最後まで話を聞きなさい。」


怒った顔でシスターが言う。

それから、いろんなコースの説明を受けたが、だいたいどうでも良かったので記憶には残らなかった。私は最初に説明された冒険者になりたい子向けのコースにした。

正直なところ、何だって良かった。

ガキの集まりに放り込まれるのは教会で飽き飽きしているので、学校など行くつもりは無い。

十五、六の人間が集まるならまだしも、七歳のガキどもなど五月蝿いだけだ。


「はぁ、メルトちゃんはさ、自分の人生をちゃんと考えてるかしら?」

「考えてないわよ。」


未来を考えるのはあまり好きじゃない。

今日、生きるのを繰り返すという生き方しかしてこなかったから、未来という概念を受け入れるのが難しい。


「考えなさいな。十歳になると私たちも援助できないのよ。本当はしてあげたいけど、法で孤児に無償の援助をしていい年齢の上限が決まってるの、ごめんね。本当にごめんなさいね。」


そう言って、シスターは頭を下げる。

なんで謝っているんだか。

私としてはどうでもいいことだ。


「いいですわよ。」

「ありがとうね。メルトちゃんは可愛いから、シスターが養ってあげたいくらいだけど、神様の前でやるのもちょっとね。」


人間の言葉や常識はかなり学んだ筈だけども、シスターの言っていることはよく分からなかった。


「ねぇ、メルトちゃん。未来のことを何にも考えてないのなら修道女になるのもオススメよ。」

「冒険者になるから大丈夫ですわ。」

「そういや、さっき冒険者コースにすると言っていたばかりだったわね。ごめんなさい。」

「よきにはからえですわ。」

「……それ使い方あってるのかしら?」

「どうでもいいですわ。」


言ってみたかっただけだし。


「んー、自由ね、メルトちゃんは。」

「自由ではないですわよ。」


人間社会に馴染もうとしているせいで、雷になったり、雨になったりが出来ずにいる。世界の一部になった気がして安らぐ天候になれないのは不自由だ。

人間はなんだか狭い。思考をするには向いているが、その思考故に身体が狭苦しい。閉じ込められているような感覚だ。


「メルトちゃんが自由じゃないなら、私達は囚われの身じゃないの。」

「神には囚われてるから否定は出来ないわね。」

「はぁ、様をつけなさいな。それと、私は仕えさしていただいているの。」

「へぇ、励むといいわ。」


それこそ個人の自由だ。


「なんで、メルトちゃんが偉そうなのよ。」


ジト目で言われる。


「偉いからよ。神よりも上よ、だから私に全てを捧げるのよ。」

「とんでもない事を言うわねぇ。私以外の教徒に言ってはダメよ。殺されちゃうわ。」

「そしたら、神に文句を言ってやるわ。てめぇは心が狭過ぎだろ、死ねやってな感じで。」

「メルトちゃんが怖いわ、私。社会に出すよりも教会にずっと置いておく方がいい気がして来たわ。」


シスターが真顔でそう言う。


「そうしてもいいわよ、私は心が広いから許すわ。」

「嘘じゃないの。本当に心が広いなら、そんなふうに相手を見下すような話し方はしないわよ。」

「そうかしら?」

「そうよ。」


そうだったのか。


「まぁ、なんだっていいわよ。」

「うん、メルトちゃんは自由に喋ってる方が可愛いわ。捻り潰したくなっちゃう。」


それって矛盾してない?


「怖いわねぇ、シスターはあれかしら?イカれてるのかしら、やっぱり。」

「別にイカれてないわよ。まともよ。」

「神を信じておいてかしら?」

「当然よ。神様を信じるのは当然のことよ。」

「なんでかしら?」


目に見えないどころか、存在すら怪しい存在を信じるなど正気の沙汰じゃないと思うのだけども。


「何だって神様のせいに出来るでしょ?」

そう言って、シスターは怪しい目をしながら笑った。善人の面は消えかかっている。

「まぁ、怖いわ。」


私はわざとらしく体を震わせる。


「嘘をまぁ、吐く子ね。お仕置きが必要かしら?」


シスターが良い笑顔で言う。


「いらないわよ。殺すわよ?」

「やめてちょうだいな。ねぇ、メルトちゃん。ちょっと気分が悪くなることを聞いて良いかしら?」


シスターが真顔で、そう聞いてくる。


「いいわよ。」

「メルトちゃんは本当に捨て子なのかしら?」

「なんでそう思うのかしら。」

「別に、勘よ。メルトちゃんは口は悪いけど容量も良いし、賢いわ。それに何よりも面が良い。捨てるよりも売る方が何百倍も得をするわ。なのに捨てるかしら?」

「そう言われると捨てないわね。」


私は褒められて嬉しくなる。


「ごめんなさいね、私もそう思っちゃうのよ。」

「確かにね。まぁ、正解よ。別に捨てられてないわ。」


シスターの性格は知っている。今更、私が捨て子じゃないからと言って、追い出しはしない筈だ。それに追い出されたって、別に良い。次は王都にでも行こう。


「やっぱりなのね。ごめんなさいね、子どもにこんなことを聞くなんて大人として恥ずかしいわ。心を傷つけたのなら、謝罪する。本当にごめんね。」


そう言って、真剣な顔で頭を下げた。

なんで謝ってんだろ。


「あっそう、別に良いわ。それより、もう夜ご飯の時間でしょ。」


私は窓から太陽の位置を見て言う。もう、落ちかけであった。直に夜になるだろう。


「そうね、夜ご飯の時間ね。メルトちゃんはみんなを呼んできてくれるかしら?」

「仕方ないわね。」


私はそう言って椅子から立ち、人間のガキどもを呼びに行く。

教会の食堂でみんなが揃って夜ご飯を食べる。

今日の夕飯も、いつもと同じで不味かった。






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