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1章③

1章②


 それから5年後、何故か元婚約者のレオン様に跪かれ見つめられている。


 「エリィに名前をもう一度呼ばれる日が来るなんて…今日は記念日だね。」

「え?というか何故……レオン様が…?」


 「僕だよ」


 入口に腕を組みながら壁にもたれかかっていたのは弟のランベール。寮付きの王立学園に入れたばかりの10歳の弟だ。寮にいれるまでは私が育てたのに何故か大人びていて達観していて私にとってはよく出来た弟である。


「な、なんで…」

「それは追って話すとして。エリィ。」

「は、はい?」

「――僕と結婚してください。」


「「「「えええええっ」」」」


 なぜか私と周りにいたハンター達が一斉に驚いたのだった。


 ――――


 とりあえず落ち着いて話を聞くためにずっと跪いていたレオン様を立たせて、それからどうやら事情を知っているようなランベールを空いている席に座らせた。(聞き耳を立ててそうなのでハンターたちは帰した。)


 コポポポ…

 ここには公爵家にお出しするような紅茶はなく、薬草を混じえたお茶しか出せない。


「ありがとうございます!エリィのいれてくれるお茶は久しぶりですね。」


 何故かお茶を入れたコップをまじまじと見ている。本当にあのレオン様?なんだか信じられなくてお茶を啜りながら横目で見る。

 

「はぁ…どうも。」

「姉さんそっけない。」


「あの、本当にレオン様、ですか?」

「ああ。そうだよ。」

「その…手紙は読んでいただけましたか?」

「読んだとも。あの手紙を読んで何度後悔したことか。

 そして、ナディアとマルクスからも聞いたよ。あの日モーリスから何を聞いたか。」

「ナディアとマルクスは無事なんですかっ!?」


 2人の名前を聞いて思わずレオン様を縋るように見つめる。ナディアには挨拶できたがマルクスには挨拶できなかった。あまりにも突然の事であんなに助けてくれたのに、と心残りだったのだ。


「ふふ。心配が故にそんな顔で見つめてくるなんて、妬けるな。

ああ、無事だとも。あの頃のコルネイユ家の使用人は我がシャルダン家の使用人として雇っているんだ。皆一緒という訳ではなく兄上の屋敷に行ったりもしているけどね。」


「な、なんとお礼を申し上げればいいか…」


 あの頃、両親が大事にしていた使用人たちが無事だとわかって涙があふれる。そんな涙をレオン様が親指で拭う。

 さっきまでの表情とは違い、昔のような真剣な表情で見つめられる。金色の瞳に私が映ってるいると思うとドキドキして赤くなってしまう。

 もう私は平民なんだから昔の感情には蓋をしたはずなのに!抱いてはいけない感情が呼び覚まされそうになり思わず目をそらす。それでも頬から手を離してくれず笑顔でレオン様は言う。


「お礼は大丈夫だよ。当たり前のことだ。それより結婚しよう。」

「あ、あの、その…わたしは愛妾になる気は無いのです。申し訳ございません。」

「「え?」」

「……え?」


 あ、あれ?


「あのさあ、姉さん。何を勘違いしているの?」

「え、あれ、ラウラと結婚しているのでは?」

「……義兄さん。ラウラって誰…」


 ズゴゴゴと黒いオーラを纏ったランベールがレオン様に迫る。


「いやいやいやっ!なんの誤解をしているんだ!?

 あんなゴミカ…あ、いや、ラウラ嬢とは結婚するわけないだろう!」

「……そう、なのですか?」

「ああっ!死んでも嫌だね!」


 なんだかホッとしてしまった自分がいる。


「…でもごめんなさい。私は後ろ盾もない平民です。それに、この薬師という仕事に誇りを持っていて…。忙しすぎてカーテシーすら忘れてしまいましたしレオン様にそんな風に想っていただく理由がございません。」


 コップをギュ、と持ちながら思いを伝える。


「――そう。エリィはもう、僕のこと、嫌い?」

「っ!そんな、そんなわけないですっ!」

「じゃあ、恋人がいる…とか?」

「なっ!いません!いるわけないですっ!」


 強ばった顔でなんだかコップを握りつぶしそうな勢いだったレオン様は私の返答を聞いてへにゃり、と笑う。


「後ろ盾の件はコルネイユ家に戻れば問題ないし、薬師は続けても大丈夫だよ?」

「えっ……でも、公爵家夫人としてそのような…」


 この国では貴族の奥様は働くなんて以ての外だ。


「だって軽く飲んだだけのこのお茶。

 一日半無眠で馬を走らせてここまで来たのにもう疲れが取れてる。ランベールから聞いたけどポーションがすごく好評なんでしょう?ぜひ試してみたいよ。」

「はい…。それは全然構いませんが…。」

「だから、エリィがまた僕のことをすきになるまでにコルネイユ家の問題も解決させるし、何より僕のことをまた好きになって欲しいな」


 ずいっと顔を近づけてウインクしてくる。顔がよすぎるっ!


「……は、はい…。」


 思わずこう答えてしまったのだった。

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