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我儘お嬢様「王子なんかどうでもいいけどお兄さまはレティのものです!」

 たまには禁断の兄妹愛をやってみたかった……

 付き合ったりしないため甘々な兄妹愛が見たい人には向きません。

 ワタクシは幼い頃から失敗ばかりしてきた。

 ただ一人の人に振り向いてもらいたかった。

 それだけなのに、ワタクシは――



「――レティシア・フローレンス、お前のような悪女とは婚約破棄だ!」



 目の前の王子はワタクシを初めから酷く嫌っていた。

 だからなのか、あの女狐に簡単に騙された。


 ワタクシがしたのはただ仮にも婚約者のいる男に近づくなと言っただけ。

 少し言い方がきつかったかもしれないけれど、それだけなのにワタクシがしたとされた罪は見知らぬ罪ばかり。

 ……実際にあったのかもしれないけれど、ワタクシに罪をかぶせてきたのは彼女。


 ワタクシの取り巻き達はワタクシの地位しか見ていないから勝手にワタクシの名前を使って何かをしたのかもしれない。

 それだったならば彼女へと少しは謝ってもいいかもしれないなどと思う。



「っ……」

「アリシア、大丈夫だ、俺が守ってやる」

「殿下っ……!」



 ちらりと彼女へと視線を向ければ大げさに怖がる彼女。

 ……あぁ、やっぱりさっき思ったことはやめよう、彼女は分かっててやっている。

 そして、あの一言はワタクシにとって――



「――お前のような妹など、がっかりだ」



 一番聞きたくない人からの言葉が、ワタクシを壊したの。



「……この……この女狐っ! レティのお兄さまに何をしたの!」

「「は?」」

「え」

「「……はい?」」



 最初に王子とお兄様がほぼ同時に意味が分からないと声を漏らし、次に女狐が驚いたように声を漏らす。

 最後にワンテンポ遅れて王子の側近の二人が声を漏らした。


 わたしはというと、お兄さまへと抱き着いて、半ば涙目になりながらあの女狐を睨みつけていた。

 周りはわたしの様子に困惑している。



「……お、おい?」

「お兄さまが、だってお兄さまがレティを見てくれないんだもん!」



 そんなお兄さまなんて大嫌いっ! と叫びながらもお兄さまへと抱き着き顔を胸へとうずめる。

 ひっぐ、えっぐと涙目どころか本当に出てきた涙を抑えられずにいると、周りは困惑しながらも


「……なんか可哀そうだな」

「禁断の兄弟愛……!」

「あそこまで強く言わなくてもよかったんじゃないかしら……」


 などと言う声が聞こえてくる。

 お兄さま、お兄さまと泣きながらお兄さまを見れば流石に放置できないのかわたしの頭を撫でて慰めようとしてくる。



「お、おい、泣くな……落ち着けって」

「お兄さまがレティのことを見てくれないから悪いの! そんなお兄さまなんて嫌い! 大っ嫌いだもん!」

「そう言いながら人に抱き着くか普通!?」



 そんな混沌とした場所に、遅れてやってきたのは――



「――何の騒ぎだ?」

「……あらあら」

「ち、父上! 母上!」



 陛下と王妃の二人だった。

 そういえば今回の卒業パーティーに来るって言ってたなぁ、と今更ながらに思う。



「レティシア、人前で涙を流すなど淑女のやることでは……」

「王子なんか女狐にあげるので知りません! でもお兄さまはレティのものです!」

「な、なんか!?」

「……あら?」



 王子が何か叫んでいるけれど王妃の説教はもう聞きたくはない。

 本来は王子の婚約者だから必要なのだろうけれど、今はあの女狐がその場所に入るだろうからわたしにはどうでもいい。



「く、あははっ! 派手にやったね、レティシア嬢?」



 なんて考えていたら笑い声が聞こえたので見てみれば、そこには王子と似た見た目――リオン殿下がいた。

 あそこにいる王子は第二王子で、リオン殿下は第一王子、わたしの三つ上。

 幼い頃はよく遊んだものだけれど、王子と婚約者になってからは忙しくてあまり会えてないのもあってだいぶ久しぶりに会うことになる。



「リオン! どういうことですの!」

「どうも何も言った通りだろう?」

「わたしはてっきりお兄さまはリオンの側近になると思って了承したのに!」

「そしたら年が近かったからと弟に奪われたわけだ、いやぁ、少しミスったね」

「……は?」



 もう少しで優秀な側近が出来る所だったのに、などと言うリオン殿下。

 昔、お兄さまが結婚したり、わたしが結婚したらどこかに行っちゃう、とリオン殿下に相談した結果。

 リオン殿下と結婚して、お兄さまを側近にすれば一緒にいられるとそそのかされて、お父さまに王子と結婚したいと我儘を言った。


 ……その結果は見ての通り、年が同じだった第二王子と婚約者になり、その影響か、お兄さまは第二王子の側近になったわけなので、結果的に見ればリオン殿下の言っていた通りなのだけれど。

 わたしが思っていたのはリオン殿下と結婚して、その側近としてお兄さま、のはずだった。


 そんな風に文句を言えばリオン殿下はまぁまぁ、とこちらを宥めてくる。

 お兄さまはお兄さまでそんなこと知らないんだがと困惑しているし。

 王子はわたしが王子を好きだとずっと思ってたのか、何だかちょっと哀れ。

 そんな風に混沌としていたパーティーは一度全員家へと帰され、わたしはお兄さまから離れないと我儘を言った結果、家へとつくまでずっと張り付いていた。



「おぉ、レティ! どうしたんだい?」

「レティシア! そんなみっともない恰好を……」

「お父さまもお母さまも大嫌いですわ!」



 わたしに対して凄く甘いお父さまと、その反対にわたしを嫌っているお母さま。

 わたしはそんな両親が昔から嫌いだった。

 そんなわたしが初めて好きになったのはお兄さまだった。

 けれど甘え方なんてわからなくて、気づいたらお兄さまには嫌われていて、頑張ったのに、お兄さまはわたしを見てくれなくて……



「おに、お兄さまなんてもっと大っ嫌いだもん!」

「ならなんで離れないんだよ……」



 わたしを宥めるのに疲れたのか、凄く疲れたようにため息をつく。

 お父さまは私の嫌い発言で固まって、お母さまは激怒しているのを近くの執事と侍女が頑張っている。

 そんな騒がしい玄関の音に起きたのか、もう一人の兄が出てきた。



「ん~……? もう帰ってきたの? 早くない?」

「お前は卒業パーティーぐらい行け、レイ」

「えーめんどくさいしなぁ……というか、なにこの状況……」

「お兄さまがわたしのことを見てくれないのが悪いんですわ!」

「え、なにその面白そうな状況!」



 詳しく詳しく、と先程まで眠たそうにしていたレイが急にこっちへと迫ってきた。

 それに対してお兄さまは俺は知らんと死んだ目で答える。



「お嬢様の坊ちゃま好きは昔からですよ」

「なにそれ、あんだけ嫌ってた妹ちゃんにすげー好かれてたってわけ!?」

「お嬢様は坊ちゃまと会った時からずっと一途でしたから」



 すっ、と音もなく出てきた老執事が答える。

 知らないのは旦那様と奥様、そして坊ちゃま二人だけですよ、と答える執事に困惑したようにお兄さまがそんな素振りなかったのに、と呟くのを聞いてむぅ、となる。

 昔から何をやっても良いように思われていなかったのは知っている。

 遊んでと言って、適当に理由をつけて断られた回数は本当に遊んでもらった回数の数倍あるのは知ってる。

 ……だけど、わたしはいつだってお兄さまのことばかり考えていたのに!



「やっぱりお兄さまなんて大嫌いだもん!」

「だからだったら離れろと……」

「うわ、すげー面白そう、オレもパーティーに行くべきだったなぁ……」

「あぁ、そういえば」



 近くで見たかったと言うレイを見て、思い出したのでそっちを見る。

 うん? と首を傾げる姿は恐らく美男子なのだろうけれど、わたしにとって一番好きなのはお兄さまなのでレイに対してそういった感情は一切向かない。



「アナタが大好きな女狐は王子を選んだみたいよ?」

「へぇーアリシアちゃんは殿下を選んだんだ?」

「そこそこ本気になってたみたいだから傷心中のアナタへ代わりにアナタが大好きな子を紹介してあげるわ」

「え、なにそれ」



 本当はパーティーに行かなかった時点で分かっていたのだろうけれど、レイはアリシアが王子を選ぶことに少しだけ悲しそうにした。

 そんなレイに対して優しい妹は新しい出会いを用意した、というより向こうから強引にレイに伝えておいてくれと言われたのだけれど。



「明後日の休み、どうせ何もないでしょう? 優しい妹はアナタの為にお茶会を準備してあげたの」

「それって二人っきり?」

「わたしはお兄さまといるから二人っきり、でも侍女の技術交換も兼ねてるからルルとララを連れていくこと」

「りょーかい、よっし、楽しみにしてるね!」



 表面上はだいぶ普段通りだけれど、実際はだいぶ参ってるのを隠しているのだろう。

 まぁ、一日二日、泣いた後に彼女に会ったらだいぶマシになってるだろうと思って見なかったことにする。



「……その優しい妹はいつになったら俺のことを放してくれるんだ?」

「お兄さまとは離れないもん!」

「ふふ、今日はお坊ちゃまの部屋に枕を用意しておきますね」

「うん!」

「うんじゃないし、いや、待て待て待て!」



 近くにいた侍女が気を使って枕を持っていてくれるらしい。

 枕が変わると寝れないタイプだから助かるなぁと考えつつも、お兄さまからは絶対に離れないと強く抱き着く。

 ……わたしのことを全然理解してくれないし、愛してくれないけれど、それでもわたしはお兄さまが大好きで、だから――



「――お兄さまは絶対レティのものなんだから!」

 残念ながら絶対続かない(多分自分が書くとR指定に入るので)けど思いついたので。

 かわりに後書きで考えてた設定を出しておきます。


 ▼レティシア・フローレンス

 妹ちゃん、愛称はレティ、多分本来は悪役令嬢。

 好きになるを王子ではなく兄になってしまったので色々とおかしくなっちゃった。

 お兄さまラブで、お兄さまの為なら頑張れる、やること全部が裏目って色々勘違いされている。

 王子のことはどうでもいいのでゲームとは違っていじめらしいいじめとかはしてない。

 実はレイとの仲は良好、ただしお互い内心では多分悪口言ってる。


 ▼第二王子

 名前すら出ない奴、多分俺様系。

 レティシアが自分が好きで我儘言って婚約者になったと勘違いしている(ゲーム内ではそれが正解)。

 優しいヒロインであるアリシアに惚れるが後に色々と苦労すると思う。


 ▼アリシア

 ゲーム内のヒロイン、名前は出た、多分転生者、女狐。

 レティシアが悪役しなかったので偽装したり、レティシアの取り巻きがしたのをレティシア本人がしたように見せかけたりした。

 この後王妃による教育などが入ってめちゃくちゃ苦労すると思う。


 ▼リオン殿下

 第一王子、多分腹黒枠。

 レティシアと幼い頃に遊んでいた、その時に一目惚れしたのだが遊んでいるうちにレティシアは兄に惚れているのに気づいてなんやかんや理由をつけて自分と婚約させようとしていた。

 しかしレティシアの「王子と結婚したい」の言葉が誤解を生み、三つ上だったリオンではなく第一王子と婚約してしまった。

 しばらく傷心状態だったが第一王子と別れた後傷心状態のレティシアを奪おうとわざと悪い噂などを放置、結果としてお兄さまに構ってもらえないレティシアが爆発してお兄さまラブな面を表に出すようになり爆死。

 多分しばらく自室で泣いてる。


 ▼第二王子の側近二人

 名前すら出なかった、本当は片方は台詞と名前があったのに何故かスキップされたので設定は虚空へと消えた。


 ▼陛下と王妃

 陛下は多分全然状況を理解できてないけどスーパー天才なので最終的にいい感じに終わると思う。

 王妃は優秀なレティシアを失ってちょっとがっかり、レティシアがお兄さまの為ならと凄く頑張っていたのを第二王子の為だとずっと誤解していたのを反省して、後で謝りに行く。

 多分ちゃっかり友人関係にはなってレティシアにお仕事を紹介し始める。


 ▼レティシアの両親

 父の方はレティシア大好きの親バカ気味なのはあるが、何気に野心があり、レティシアの「王子と結婚したい」という言葉から王家に取り入ろうとしていた、なおレティシアの嫌い発言でしばらく自室で泣く。

 母の方は実は再婚相手、レイのお母さん、レティシアのことを自分が成り上がれない邪魔な存在だと認識している、レティシアがいるからお兄さまは第二王子の側近になれた所もあるので、自分の息子を側近等にしたかったので大激怒している。


 ▼お兄さま

 実は名前があるけどレイが名前を呼ぶシーンはスキップされたのでなくなった。

 レティシアのことは最初は可愛かったけど我儘放題でだんだん嫌になっていった。

 レイとの仲は普通、会ったら話はするけど、女癖の悪いレイのことを真面目なお兄さまは注意したりしている。

 両親との仲は悪い、お兄さまの実母とはすごく仲が良かった。


 ▼レイ

 再婚相手の連れ子、今の父親からは良く思われておらず、家に居場所がないためよく女性の家に上がり込んでいる。

 おかげで女癖が悪くなり色々と噂が絶えない。

 アリシアには実はそこそこ入れ込んでいた、でも自分が一番じゃないのに気づいてパーティーには参加しなかった。

 実は兄妹の中で一番の年上。


 ▼レイのことが好きな令嬢

 レイのことがめちゃくちゃ大好きな子。

 多分お茶会に行ったレイがめちゃくちゃ押されまくって困惑する姿が見れる。

 何気にレティシアの取り巻きの一人、レティシアの取り巻きになった理由はレイの妹だから以上はない。

 本編では全く出ていないけれど多分レイと結婚して勝ち組になる、結婚してからは多分レイの方が優位に立つので今度は彼女が慌てふためく羽目になる。

 ……多分。

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― 新着の感想 ―
[一言] こんな面白い作品!( =^ω^)絶対に続きがある作品でしょう‼️ このままで終わるなんて作者さま、酷いことは言わないと信じてますよ  更新、お願いします
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