表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幸福論  作者: のどか
ー本編ー
4/41

誓いは夜空を流れ彼女のもとに

 俺の手を握りしめて安心した様に寝息を立て始めたガキをぼんやり眺める。

 この小さい手から伝わる温もりが今の俺を落ち着かせ、奮い立たせる唯一のものだった。

 弱くて脆くいこの存在がなければ俺はもっと取り乱して情けない無様な姿を見せていただろう。


「悪いな」


 守れなかった。

 簡単に奪われた。

 お前の大切なママを。俺のたったひとりの最愛を。あんなに簡単に……!!

 脳裏にこびり付いて剥がれない光景が何度も何度も鮮明にリピートする。

 俺を庇って倒れたアイツの姿が、霞んでいく視界の中で若い男に抱き上げられ車に乗せられたアイツの姿が離れない。

 自分でも許しがたい失態に、ジクリと痛む脇腹に、煮えくりかえりそうな(はらわた)にギリギリと奥歯を噛みしめた。


「ぼす、ねーちゃん、そんなにたべれないよ・・・えへへ」


 むにゃむにゃと幸せそうな寝言が耳に飛び込んできたことでぐつぐつと煮えたぎり体中を駆け巡っていた怒りと焦燥が

 少しだけ和らいだ。

 まだだ。

 まだ守るべきものは残っている。

 アイツが最後まで気にかけていた、自分の安全よりも俺に優先させた大切な宝がこの手には残っている。

 なによりも、奪われたものは奪い返せばいい。

 あれは俺の女で、このガキの母親だ。他の誰にもやらない。


「もう少しだけ待ってろ」


 必ず迎えに行く。だから、泣かずに待っていろ。

 そうしたら、買い物の続きをしてもう一度リヒトの為に土産を選んで、またリヒトの反応を思い浮かべてはニヤついて、それを笑う俺に膨れて見せてくれ。





 この俺に喧嘩を売ったことを、俺のものに手を出したことを、死ぬほど後悔させてやる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ