誓いは夜空を流れ彼女のもとに
俺の手を握りしめて安心した様に寝息を立て始めたガキをぼんやり眺める。
この小さい手から伝わる温もりが今の俺を落ち着かせ、奮い立たせる唯一のものだった。
弱くて脆くいこの存在がなければ俺はもっと取り乱して情けない無様な姿を見せていただろう。
「悪いな」
守れなかった。
簡単に奪われた。
お前の大切なママを。俺のたったひとりの最愛を。あんなに簡単に……!!
脳裏にこびり付いて剥がれない光景が何度も何度も鮮明にリピートする。
俺を庇って倒れたアイツの姿が、霞んでいく視界の中で若い男に抱き上げられ車に乗せられたアイツの姿が離れない。
自分でも許しがたい失態に、ジクリと痛む脇腹に、煮えくりかえりそうな腸にギリギリと奥歯を噛みしめた。
「ぼす、ねーちゃん、そんなにたべれないよ・・・えへへ」
むにゃむにゃと幸せそうな寝言が耳に飛び込んできたことでぐつぐつと煮えたぎり体中を駆け巡っていた怒りと焦燥が
少しだけ和らいだ。
まだだ。
まだ守るべきものは残っている。
アイツが最後まで気にかけていた、自分の安全よりも俺に優先させた大切な宝がこの手には残っている。
なによりも、奪われたものは奪い返せばいい。
あれは俺の女で、このガキの母親だ。他の誰にもやらない。
「もう少しだけ待ってろ」
必ず迎えに行く。だから、泣かずに待っていろ。
そうしたら、買い物の続きをしてもう一度リヒトの為に土産を選んで、またリヒトの反応を思い浮かべてはニヤついて、それを笑う俺に膨れて見せてくれ。
この俺に喧嘩を売ったことを、俺のものに手を出したことを、死ぬほど後悔させてやる。




