ある冬の日の一コマ
「姉ちゃんごめん」
俺は苦しそうに短い息を繰り返す姉ちゃんの手をぎゅっと握りしめながら涙が零れ落ちるのを堪えた。
朝からずっとこうして姉ちゃんのそばに張り付いている俺の頭を大きな手がポンポンと撫でる。
「これは姫の自業自得だ。気にすんな」
落ちてきた声に振り向くと氷枕を持ったジオが呆れた顔で立っていた。
俺はすかさずそれを受け取ってタオルを巻いていく。
「リヒト」
もうひとつ呆れた声が落ちて来て、ぐしゃりと頭をかき混ぜられる。
「お前は悪くない」
キッパリと言い切られた言葉には多大な呆れと疲れに満ちている。
それでも納得できない俺の様子にボスは物凄く呆れた顔で喘ぎ苦しむ姉ちゃんを見た。
「大体、誰が付添で出ていった保護者がガキよりはしゃいで風邪ひくなんて思うんだ」
「そうだぞ。それにお前はちゃんと駄々を捏ねる姫を引っ張って帰って来たじゃねぇか」
ジオの姉ちゃんを見る目はなんだかとっても残念なものを見る目だった。
何をどうしたら、保護者がガキに諭されて帰ってくるんだ。
しかも、なんで保護者がガキに駄々こねて困らせてんだ。
無言の詰問に姉ちゃんは恨めしげにジオとボスを見上げた。
「だって!だって雪!初雪!!積もった!!」
「「はぁ……」」
ボスとジオの大きな溜息が零れる。
「犬でもそこまではしゃがねぇ」
「うぅっ、まだ雪うさぎもかまくらも作ってないのに」
「姉ちゃん……」
さすがにそれはちょっと……。
というか、もう風邪ひくくらい遊んだじゃん。
雪うさぎのかわりに雪だるま作ったし、かまくらのかわりにジオに雪玉ぶつけて怒られたじゃん。
「とにかくお前は悪くねぇ。だからそんな顔すんな」
「そうだ。
どっちかっつーと姫がお前よりお子様だっつーことを忘れてた俺とボスが悪い」
「ごめん。ボス、ジオ、今度からはもっとちゃんと姉ちゃんのこと見てるよ」
「あぁ、俺も気を付ける」
「俺も定期的に様子を見ることにする。悪かったな。リヒト」
俺の頭を撫でるボスとジオに姉ちゃんがクワっと吠えた。
「ちょ、私の扱いーーー!!ゴホッ!!」
「「「はぁ……」」」
「グスン」
仕方ないから姉ちゃんが寂しくないように雪うさぎを作って後で持ってきてあげよう。
一匹じゃさみしいから、姉ちゃんうさぎとボスうさぎ、俺とジオの分も作ろう。
だから姉ちゃん、早く元気になってね。
そしたらたくさん一緒に遊ぼうね。
ある冬の日の一コマ
(ほら、姉ちゃんお薬)
(げっ!粉じゃんそれ!無理!飲めない!!)
(薬くらい駄々をこねずに呑みやがれこのじゃじゃ馬姫が!!)
(……どっちがガキかわかったもんじゃねぇな)




