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9.今後について

客室へと戻ったディックとシェーンは椅子に座り一息ついた。


「しかし驚いたな翼が十二枚持ちだったとは、お前は彼の翼を直接見たのだろ? わからなかったのか?」

「見ましたよ。ただ、翼のダメージが酷すぎて原型どころか根元からもぎ取られていた翼も何枚かありましたし、それに夜で暗かったせいもありますし、ハッキリとはわかりませんよ」

「そうか、では今の彼の魔力はどのくらいかわかるか?」


 シェーンは少し悩むと自信なさそうに言った。


「今も魔法はまともに使えないと思いますから、多分、魔力はないに等しいかと……」

「そうか、でも翼が治れば俺よりもかなり魔力が高くなるのだろ、なんかショックだな」


 ディックが落ち込みながら言うと、シェーンは笑いをこらえながら応えた。


「確かに十枚超えは滅多にいませんからね。私が知っている限りでも一人しかいない。蒼十二枚なら翼が戻れば今の私よりも魔力は高いかもしれないですよ」

「はぁー、そうだよな」


 ディックのショックは更に高まった。

 翼が十枚を超えるのは稀で、超えれば魔力が飛躍的に高まる。枚数が増えるのは、潜在能力が元々高いか、何かのキッカケで魔力が高くなるかのどちらかしか今は確認されていない。

 シェーンのお見合い話しも、実際は貴族が魔力の潜在能力を高めたい為に戦略結婚に近かった。それを知っていたシェーンは、端からお見合いを断っていたのが理由の一つだった。

 そして、魔力は翼の枚数だけでなく、色でも違っていた。金・銀・白・紅・蒼・緑・黄・茶の順序で魔力は高く、逆の順序で翼の色を持っている人の数は多い。そのため金の十枚持ちは、どの国でも重宝されていた。


「それで、話しをした感想はどうでしたか?」

「あぁ、そうだな、彼は賊の生き残りじゃないな、まだ話したいことは沢山あるんだよなー、気になる事が増えるばかりだ」

「そんなに気になりましたか?」

「お前は安心しすぎだぞ! 少しでも疑問は思った方がいい」

「賊の疑惑が晴れれば良いじゃないですか」

「……はぁー、お前なー」


 ディックは呆れていたものの、俺を賊じゃないと自分なりに確かめたシェーンは、疑う事さえしていなかった。


「疑いが晴れても疑問はあるだろう! 貴族でもないのに翼は十二枚、これは何かのキッカケで魔力が高くなり翼の枚数が増えたとして解決したとしよう。しかし正式な創魔機乗りでもないのに創魔機を操縦できること事態が不自然だ。それに創魔機が一機どのくらいするか知っているだろう。貴族でも一機持っていれば良い方だ。いくら古い機体を買おうとしても一般人では手に入れられん。それに一番の疑問はここまで来た経路だ。ダロウィンから来たのならあまりにも早い。洞窟を抜けて来た? 洞窟の情報など今まで聞いたことがない。本当かどうか今でも疑問だ」


 洞窟の話しを出すとシェーンは直ぐに口にした。


「でも今はこの国、オルシアン王国に彼が居ます。私は洞窟の話しは嘘だとは思っていません」

「別にいいさ、賊の線が外れた事と洞窟の情報だけでも十分な回収にはなった」


 ディックは頭を掻くと再び話しだした。


「でも、彼は嘘をついてないが、やはり話したくないか黙っている事があるな」

「それなら私も同意見です」

「やっぱりそう思うか」


 やっと意見があった話しになり、お互い目を合わせた。


「その事に絡んでの話になりますが、彼を移住区ではなく、この家の客人として保護しようと思っているのですが可能ですか?」

「突然、何を言うかと思えば」

「本当に!! 姉さん!」


 フィアナが喜んだ顔で、突然二人の会話に入ってきた。俺が落ち着いたのを見計らって降りて来ていたのだ。


「何だ、フィアナ。降りて来ていたのか。彼の様子はどうなった?」

「今は落ち着いているわ。それよりも、さっきアシルをこの家で保護するって本当なの?」

「私はそうしたいのだが、隊長の許可がないとダメだからな」


 二人はディックを熱いまなざしで見た。


「おいおい、そんな目で俺を見るなよ。その件については俺からも話しがある。実は上層部に彼について意見を仰いだら俺の家で保護しろと指示が来てな。もちろん上の指示を無闇に拒否することはできないのだが、今の俺の家は新婚家庭だ。そこに十代の青年を家に入れてみろ。嫁さんが何て言うかわからん。それにだ! せっかくの新婚家庭が台無しになるかもしれん。そこで彼の保護を君たちにお願いしようと思ったのだが、シェーンから保護すると言ってもらえて逆に助かったよ」


 ディックは厄介払いができたと安心したのか胸をなで下ろした。


「しかし、私が保護すると言えば上層部の中に反する意見も出るのではないのですか?」


 シェーンは不安そうに言い返すと小さく笑いながらディックは言った。


「そんなもん。書類でどうにもなる。クレスタ家が自ら保護をすると言ったとなれば反対する連中もいないだろう。それに彼は仮にでも創魔機乗りで、ダロウィン騎士団とも関わりをもった十二枚の翼を持つ蒼の魔道師だと上手く報告すれば丸く収まるだろうよ」


 しかしフィアナはムッとした顔でディックに言った。


「それじゃー、さっきは何で移住区に行ってもらうような話しをしたのですか?」

「それは…… だな、さっきも言ったが俺の家は新婚家庭だ。 彼が自分から移住区に行くと言えば何とかなるかなーって思っただけだが、結果、この家で保護となれば俺も安心した。全力を持って頑張るから安心しろ」


 笑いながら誤魔化すディックに二人は呆れていた。


「それに蒼の翼に悪い奴はいないからな。美女三姉妹の家に居ても彼は変な気を起こすこともないだろうよ。もし変な気を起こすとすればシェーンの方かもしれんな?」

「はぁー、何で私が変な気を起こすのですか!?」

「男に興味を持たないお前が怪我人とはいえ見知らぬ男を家に連れてきて、治療はおろか保護するとまで言ってきた。もしかしてアイツに興味でも持ったんじゃないのか? えぇー!?」

「そっそんなわけ無いでしょ!」

「そっ、そうだったの姉さん?」

「そんなわけあるか!!」


 茶化すディックに、不安を抱きながら心配そうな顔で訊くフィアナにシェーンは顔を真っ赤にしながら大声で反論するのだった。


「とにかく、俺はこのまま上層部に報告と書類を提出しに行くとする」

「今日はもう、アシルとは話さないのですか?」


 席を立ったディックにフィアナは言った。


「今日はもういい。また後日に来られたらくるさ、それと大丈夫だとは思っているが保護の件は決定するまでは彼に話さないでくれ万が一の事もあるしな。結果は決まったら直ぐに使いの者を寄こす。後は…… そうだな、他にも俺に言っておきたいことはあるか?」

「今のところはないですね。何かあったら私も隊長に連絡を入れます」

「そうしてくれ。それじゃぁ、吉報を期待してくれよ。サエラちゃんにも宜しくな」


 ディックは急ぎ屋敷を出ると、馬も走らせて直接城へと向かった。見送る二人は後ろ姿を見ながら笑いながら話していた。


「相変わらず、お気楽な隊長だな!」

「でも、姉さんやアシルの心配をしているのも確かよ。良い隊長さんじゃない」

「まあ、そうなのだがお節介が多くていかん。見合い話しまで持って来ても困るのだが……」

「それは上層部絡みで隊長として仕方なくしていることでしょ? 大目に見てあげれば?」

「しかし、フィアナにも見合い話しを持ちかけてきたのだぞ!」

「私は大丈夫よ。最初からお見合い相手なんていらないから」

「そー言えば誰なんだ、気になる相手って、私も知っている相手か?」

「もー、姉さんったら、話しをほじくり返してー、相手の人は ナ・イ・ショ もしかしたらいないかもね」

「何だよそれは? 一体どっちなんだ?」


 ディックを見送ってからは、二人は屋敷に歩きながら普通に姉妹の会話に戻り話しをしていた。笑いながら話をしているがフィアナの方が話しが一枚上手で、シェーンはモヤモヤしていたのであった。



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