01.クラス分けはいつの時代もドキドキする
ちょっと早く完成したので、思いきって投稿しました。
さあ、ようやくこの時がやって来た。
俺は今、『国立第一BI学園』の校舎の前に立っている。今日からここで、冒険者になるために、様々な事を学ぶのだ。
しかし、今現在、非常に困っている。何故なら、何処にも──
「何処にもクラス分けの張り紙がありませんねぇ、是北君」
「うわっ!?」
突然、背後から声がして、情けない声を出してしまう。どうせアイツだろうと思いつつ振り返ると、予想通り──緑色の髪に、死んだ魚の目をした男──本堂 文明が居た。
「何もそんなに驚かなくても良いじゃないですか」
「⋯⋯本気で言ってるのか?」
俺がこの何を考えているか分からない男と出会ったのは、一ヶ月前の事。
入試にペンを忘れるという人生最大のミスを犯したコイツに、右隣の席に居た俺は予備のペンを貸した。それから今日に至るまで、時折会ったりする仲になったのだが、あの時ペンを貸さなければよかった、と時々思ってしまう。
「そんな事より、向こうにある闘技場に行ってみませんか?」
「闘技場?」
あったのか、そんな所。
「はい、闘技場です。主に決闘をする所で、別名『黄金の決闘場』とも言うそうですよ」
そういえば、兄貴が決闘ランキングで一位になったって自慢してきた事があったな。
「じゃあ、行ってみるか」
クラス分けについて知ってる人が居るかも知れないし。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
闘技場は、全部で5つのバトルフィールドがあり、内部も外部も黒を主体に、大量の金箔が貼られていて、正に──
「正に『黄金の決闘場』ですねぇ」
「⋯⋯ああ、そうだな」
この『言葉被せ野郎』が。
「そんな事より、見てくださいよ、あれ!」
『言葉被せ野郎』が指差した先には、『B』の闘技場で戦う二人の生徒がいた。
どうやらどちらも一年生のようだが⋯⋯
「何で決闘してるんだろうな」
「受付に並ぶ人達に聞いてみましょうか」
確かに本堂の言う通り、4つの受付の全てに行列が出来ていた。
「そうだな、聞いてみるか」
そう言って、『S』の受付に向かおうとすると、
「よう、お前らも『S』クラスにするんだな」
どこかで聞いた事のある声がした。声のした方に居たのは──
「おや、あなたは確か⋯⋯」
「えーと、確か⋯⋯金築、金築だ!寝癖が直らない金築だ!」
コイツとも、入試の時に出会ったんだったな。
「ああ、せっかく思い出しかけていたというのに⋯⋯」
「お前らなぁ⋯⋯」
「そんなことより、金築、『S』クラスにするっていうのはどういうことだ?」
「知らねぇで並んでたのか?」
恥ずかしながら。
「しょうがねぇ。教えてやるよ」
「よっ!待ってました!」
本堂が掛け声を掛ける。前から思ってたけど、声が大きいんだよ、お前は。
「良いか?何故今、生徒達が決闘しているかというと⋯⋯その結果で、クラスが決まるからだ」
何だ、そういう事か。
「まずは、自分の入りたいクラスの受付に並んで、参加の意志を伝えるんだ」
「もしここで、参加をしなかったらどうなるんです?」
確かに、その場合はどうなるんだろうか。
「良い質問だな、本堂。答えは⋯⋯あそこに居る黒服のオッサン共に、退学を言い渡される」
金築が指した所には、確かに黒服にサングラス、スキンヘッドのゴツいオッサンが3人居た。
「恐ろしい話ですねぇ」
「戦う勇気が無かったり、時間にルーズな奴は、冒険者の資格が無ぇってことが言いてぇんだろうよ」
ということはつまり⋯⋯
「是北君、我々も早く参加しなければならないのでは?」
あ、やっぱり?
「急ぎましょう、是北君!」
そう言って足踏みを始める本堂。
俺も行こうかと思い、金築に背を向けると、
「じゃあな。戦う時は負けねぇぞ?」
挑戦的な言葉が飛んできた。
「それはこっちの──」
「それはこちらの台詞です、金築君」
またか、『言葉被せ野郎』め。俺は恨みがましい視線を本堂に送りつつ、受付に向かって走り出した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
選手達の力と力がぶつかり合い、迫力のある声や、称賛の声、ヤジ等が飛び交う。
「中々見応えがありますねぇ、決闘というのは」
「ああ、そうだな」
何故こうなっているのかというと、俺達は受付にクラス分けに参加する事を伝えた後、自分の試合まで何もする事が無いことに気付いた。
そこで、他の参加者の決闘を観戦することにしたのだ。闘うかもしれない相手の情報収集は基本中の基本だからな。
ちなみに、決闘している選手のステータスは、
一年生『S』クラス 1回戦 第6試合
熱田 盛治 VS 笛吹 楽
[職業]勇戦士 [職業]門番神
[レベル]12 [レベル]16
[体力]340/6200 [体力]2300/3800
[魔力]740/4300 [魔力]920/8700
こんな風に中央のモニターに表示される。流石にスキル構成や、使役獣の情報までは公開されないようだ。
そして試合は、笛で戦っている『門番神』が押している。神系統の職業は魔力が多いから厄介なんだよなぁ。対する『勇戦士』の彼が、どんな固有スキルを持っているかどうかが勝負の分かれ目だろうが──
「いくぞぉ!『勇敢なれ戦士よ』!」
タイミング良く、『勇戦士』が固有スキルを使った。全身に赤く輝くオーラを纏い、いかにも『勇戦士』という感じがする。
「どんなものなんでしょうかねぇ、彼の固有スキルは」
「多分、身体強化型だと思うんだが⋯⋯それだけでは──」
「それだけでは無いでしょうね。恐らく、『適正属性変更』の類でしょうか」
成る程、それがあったな。後、また言葉被せてきてるな、お前。
『適正属性変更』の前に、まずは属性について、だ。属性は、火属性、水属性、風属性、土属性など、全部で12の属性がある。そして、基本的に、適正属性は一人につき1つしか無い。中には例外もいるが、人類の9割以上は一つの適正しか持たない。
そして、『適正属性変更』とは、文字通り、適正属性を別の属性に変える事である。例えば、火属性の人間が『適正属性変更』の効果を持つスキルを使えば、一時的にだが、そのスキルが指定している属性──『ウォーターチェンジ』というスキルなら、水属性──が、適正属性になる。これが、『適正属性変更』の概要だ。
そんな事を考えていたら、突如として歓声が上がった。試合が終わったのだ。
結果としては『勇戦士』は固有スキルを上手く用いて、果敢に攻めいったのだが、『門番神』とは依然として相性が悪く、固有スキルの効果が切れた『勇戦士』が、白旗を掲げたという幕切れだった。
「面白い勝負でしたねぇ」
「ああ。自分が戦うのも面白いが、他人の戦いを見るのも面白い」
久々に命懸けじゃ無い戦いを見た。結界機能があるおかげで、バトルフィールドの中で体力が0になっても、問題無いらしいからな。
「それにしても、我々の試合はまだでしょうか?僕は早くあなたと戦いたいのですがねぇ」
「俺は別にそうでも無いけどな」
戦いたくないのか、と聞かれれば、答えは「いいえ」だが。
《一年生『S』クラス 一回戦 第7試合の出場選手をお知らせします》
お、丁度良いタイミングでアナウンスが入ったな。頼む!俺だけであってくれ!
《レフトサイド 是北 祥希》
良し!まあ、一回戦から当たる事は無いと思ってたけど⋯⋯ってこれフラグじゃ──
《ライトサイド 本堂 文明》
「⋯⋯」
「是北君、良い試合にしましょうね?」
決まった事だ、しょうがない。
「ああ。やるからには、全力でやってやる」
「フフフ。楽しみにしていますよ」
そう言って本堂は、自分の待ち合い室に歩いていった。俺も行かないとな。
「今回の新キャラ」のコーナー
このコーナーは、その話に登場した新キャラの内、これからのストーリーに絡んでくるキャラのステータスや、設定を紹介するコーナーです。(まだ第一章のメインキャラ半分しか出てないけど)
まず一人目はこの人
[名前]熱田盛治
[種族]日本人(男)
[職業]勇戦士
[レベル]12
[体力]6200/6200
[魔力]4300/4300
[固有スキル]勇敢なれ戦士よ
[通常スキル]剣術、ファイアーシールド、物理反撃
[使役獣]三頭龍蛇アジ·ダハーカ
どんな事にも一生懸命取り組む熱血漢。使役獣のアジ·ダハーカがあまりにも大きいため、国から「有事の際以外は呼び出すな」と言われている。
二人目はこの人
[名前]笛吹楽
[種族]日本人(男)
[職業]門番神
[レベル]16
[体力]3800/3800
[魔力]8700/8700
[固有スキル]終末の日を知らせよう
[通常スキル]視力強化、聴覚強化
[使役獣]金色神馬グルトップ
中学生時代、角笛の世界大会で優勝したことがある。緊張に強いタイプ。
次回こそ、投稿は6月になります。