第1話 謎の少女
第1話
あれから10年。
僕は中学三年生になって、有意義な生活を…
じゃなかった。
寂しい日々を送っていた。
僕には幼い頃から一匹狼の習性があった。だから、友達を作ろうなんてしなかった。
クラスメイトにも、それが声に出さずも伝わっていたのだろう。僕に近寄ってくる人はいなかった。
僕が田舎者、ということもあったのかもしれない。
祖父母の田舎には、中学校が一時間ほどのところにあった。バスで一時間は、結構疲れる。
その中学校は、市内にあるので、都会の人も結構来ているのだ。
さて、今僕は、バスに乗って、家に帰るところだった。
「タク!!待ってよ!」
後ろから甲高い声がした。
見ると、ボブカットのそこそこかわいい女子生徒が走ってきた。
こいつの名前は、猫川愛。昔から、僕の家の近くに住む、いわば幼馴染だ。こいつだけが、一匹狼の僕と仲良くしてくる。
愛は、クラスで人気者だ。いわば、学年のマドンナだ。人当たりもいい。そんな彼女が、僕なんかと仲良くするのがクラスメイトには理解できないらしい。
「愛。ここバス停だぞ。でっかい声出すなよ。」
「いいじゃない。このバス停使う人ほとんどいないわよっ。」
とふてくされたような顔をして愛が言った。
「てか、タク!あんたさ、帰るなら一言くらい言ってよ!
…帰る方向、一緒なんだし?」
「だって、お前が嫌だろ?」
「そんなことないって!むしろ嬉しいっていうか…」
という風に、愛は僕に対してだけ、態度が変だ。てか、こいつが下の名前で呼ぶ男子って僕だけかも。考えすぎか。
「そうそう、タク!明日の学活は、中学最後の文化祭の打ち合わせするからね!
あんたを実行委員にしておいたから!」
「はあ?なんで僕が…」
「いいから!明日はそそくさ帰っちゃだめよ。」
全く、なんだよ。めんどくせえなぁ。
愛は学級委員もしているので、クラスのまとめ役でもある。
バスの止まる音がした。
(終点ですー)
「あ、着いたよ!私、今日お母さんの手伝いするから、急ぐね!
あ、明日忘れないでね!」
「はいはい。!が多いな。
またな。」
さて、帰るか。
実行委員かぁ。気が進まないなぁ。いつも、やりたくないことはやらないって逃げてきたからなぁ。
そんな人生でいいんだろうか。
そんな話は、置いといて。
帰ったら、ご飯だ!
ふと、家の前に、人影が見えた。
倒れてる?
遠くからだからよく見えない。
え?あれ、やばくねーか。きゅ、救急車!
僕は急いで近づく。
すると、白いワンピースを着た、黒髪の少女が倒れていた。
「大丈夫ですか?」
声をかけると、うーん、といった。
意識はあるようだ。
さて、どうするか。一度、家に上げた方がいいのかもしれない。
すると、少女が、呟いた。
「子猿さん、お願い、私に、水をかけて、、、」
「み、水!?」
なんで?
倒れてる人に?拷問じゃねーか!
てか、僕のことを子猿って言ったか?どっかでその言葉聞いたことあるよーな、
まっ、いいか。
とりあえず、言う通りに水をかけた。
僕の水筒の水だけど、いいのかな。
すると、さっきまで青かった少女の顔が、穏やかな顔になっていった。
さて、どーすっかな?
よく見ると、結構美人だ。
とりあえず、僕は彼女を家まで運んでいくことにした。
家に入った。
「お帰り、タク。
おや?誰だいその子?」
祖母が出迎えてくれて、そのあと、僕が抱えている少女のことを見た。
「家の前に倒れてたんだよ。ちょっと寝かせてあげてくれないかな?」
「ええ。あらー、かわいい子ねぇ。タクのお友達かい?」
「いや、知らない子だよ。」
本当に知らない。会ってるなら覚えてると思うほどの美人だ。
でも、謎も多い。
なぜ、水をかけたら元気な顔になったのか。なぜ、僕のことを子猿と呼んでいたのか。
まあ、細かいことは後で考えるとしよう。
彼女は僕の部屋で眠っている。
僕は、彼女が起きた時のために、水を持って行ってあげることにした。
部屋に入る。
すると、彼女は起きていた。
そして、
こっちを見た。
そして、話し始めた。
「助けてくれてありがとうございます。初めまして。子猿さん。
あ、はじめましてではありませんね。
お久しぶりです。」
と。